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ジェイ・エス・ビー Research Memo(7):業務改革と組織改革の基盤構築により目標達成を目指す(1)
*15:07JST ジェイ・エス・ビー Research Memo(7):業務改革と組織改革の基盤構築により目標達成を目指す(1)
■中長期の成長戦略
1. 中期経営計画の概要
ジェイ・エス・ビー<3480>では、2030年長期ビジョン「Grow Together 2030」において、2030年の「ありたい姿」として、「アビリティ(総合的人間力)」の芽を育て社会課題の解決に貢献すること、人間性とテクノロジーの融合による同社だけの価値を創出すること、「UniLife」をグローバル・トップブランドにすることを掲げており、2030年に向けてさらなる事業領域の拡大を目指している。
この長期ビジョン達成に向けた第1ステージという位置付けである前中期経営計画「GT01」(2021年10月期~2023年10月期の3年間)では、業績目標を大幅に超過達成した。業績目標達成に向けた各施策においても、全ての項目が「予定どおりの進捗」以上であった。
長期ビジョン達成に向けた第2ステージとなる中期経営計画「GT02」(2024年10月期~2026年10月期の3年間)では、2030年の「ありたい姿」を達成するための基礎基盤の構築を目指す。ただ、同社を取り巻く環境は、長期ビジョン策定時の想定以上に変化している。特に災害が激甚化し気候変動に対する社会的責任が高まっていることに加え、人材を資本として考えることが世界標準となってきており、これら2つの要素を開示するサステナビリティ開示フレームワークの整備が急ピッチで進んでいる。社会から選ばれる会社になるために、これらの環境変化に適応することが重要である。同社は、過去にとらわれることなく「両利きの経営」(新しい領域に挑戦する「探索」と既存事業の成長を図る「深化」のバランスの取れた経営)を実現するための組織への変革が必要と考えている。
中期経営計画「GT02」では、以下で詳述する施策と事業戦略の推進により、物件管理戸数104,000戸、投資総額約300億円などを達成することで、最終年度の2026年10月期に売上高78,813百万円、営業利益8,727百万円、経常利益8,518百万円、親会社株主に帰属する当期純利益5,684百万円を目指す。また、資本効率ではROE15%以上など、財務安全性では自己資本比率40%以上などの実現を計画する。併せて、女性管理職割合を2023年10月期の9.2%から15%へ、男性育児休暇取得率を25%から50%へ引き上げる。
業績目標については、売上高では年平均成長率7.3%、営業利益では同6.7%と右肩上がりの成長を目指すが、「GT01」の実績が売上高では同9.9%、営業利益では同18.3%であったことに比べると控えめな目標である。これは「GT02」は次の中期経営計画「GT03」への準備期間として、競争優位性の構築のためにDXを推進する一方、社員の成長を促すために人的投資を行うことなどを想定して、販管費を厚めに計画しているためである。「GT02」では選択と集中を進めたうえで、続く「GT03」で大きく飛躍するための準備を進める考えだ。
2024年10月期第2四半期決算はおおむね計画どおりの増収増益で、2024年10月期通期予想の修正もなく、中期経営計画「GT02」の初年度は順調な立ち上がりとなる見込みだ。
2. 施策の進捗
中期経営計画を達成するための施策として、「業務改革」「人的資本」「知的資本」「気候変動」「事業ポートフォリオ」の5項目を掲げている。各施策について、5段階の進捗評価(S:予定を上回る大変順調な進捗、A:予定を上回る順調な進捗、B:予定どおりの進捗、C:予定より若干遅れ気味、D:予定より大きく遅れ気味)で評価する。スタートして半年間の進捗評価では、「人的資本」は制度に関する施策であり、想定より早く進んだことからA評価であったが、その他の4項目については予定どおりの進捗であるB評価にとどめている。
「人的資本」では、新福利厚生制度の導入、従業員エンゲージメント等のスコア化とその向上、宅建士資格取得支援制度の拡充、奨学金返済補助制度の導入、社員持株会制度の拡充、に取り組んでいる。特に社員持株会制度の拡充は、奨励金付与率を5%から20%に引き上げたことで、従業員が業績や株価を意識する風土づくりに寄与している。また、奨学金返済補助制度の導入では、奨学金返済中の新卒採用社員に返済補助し、福利厚生の充実と優秀な新卒学生の採用を図っている。
「業務改革」では、不動産賃貸管理事業における改革、企画開発部門における改革、日本語学校事業における改革、バックオフィスにおける改革、に取り組んでいる。中でも、不動産賃貸管理事業における改革として、「お客様サポートセンター」の拡充を図っている。重要事項説明業務の一部をお客様サポートセンターに集約しており、特に2~3月の繁忙期には店舗負担の軽減に役立っている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 国重 希)《AS》
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