テノックス Research Memo(4):売上げの大半を占める鋼管杭工事と深層地盤改良工事

2024年7月16日 15:04

印刷

記事提供元:フィスコ

*15:04JST テノックス Research Memo(4):売上げの大半を占める鋼管杭工事と深層地盤改良工事
■事業概要

2. 建設事業
主力の建設事業では、鋼管杭工事と深層地盤改良工事が売上げの大半を占める。テノックス<1905>が対象とする構造物は、戸建て住宅やマンション、物流施設、工場などの中低層建築物、道路・鉄道の橋梁や盛土、上下水道施設、土留め、擁壁、鉄塔などの土木構造物である。建築物を支えるだけでなく、耐震補強や液状化抑制、環境負荷低減、土砂崩壊の抑制なども工事の目的に含まれる。工法には、杭工事でガンテツパイル工法、TN工法、TN-X工法、NSエコパイル工法、ATTコラム工法など、地盤改良工事でテノコラム工法やピュアパイル工法、TOFT工法などがある。TN-X工法とピュアパイル工法は建築物のみを対象としているが、そのほかの工法は土木構造物にも適用される。以下に同社の主要工法の詳細を示す。

(1) ガンテツパイル工法(杭)
日本製鉄<5401>、クボタ<6326>と共同で研究開発した工法で、地盤にセメントミルクを注入し撹拌混合して造成した固化体(ソイルセメント柱)の中央に、外面突起付き鋼管杭を圧入する合成杭工法である。特長は、ソイルセメント柱の大きな鉛直・周面支持力により少ない杭本数で構造物を支えることができること、鋼管の特性である高い靭性によって大きな水平支持力を得ることができること、地盤を有効に利用し固化体を造成するため建設残土の発生を低減できることなどである。その結果、建設費の抑制や工期の短縮を可能にした。道路や鉄道の橋梁、上下水道施設など土木分野で幅広く利用されている。

(2) TN-X工法(杭)
日本製鉄と共同で研究開発した工法で、油圧式の拡縮掘削ヘッドにより杭先端部に拡大根固め球根を築造することで、大きな支持力を得る高支持力鋼管杭工法である。2005年に国土交通大臣認定を取得し、大きな杭耐力を必要とする物流施設、データセンター、官庁施設、病院、空港施設などの重要建築構造物に採用されている。特長は、最大φ2,400mmの根固め球根によって最大17,900kN※1の高い先端支持力が得られるため少ない本数で大型構造物を支えることができること、鋼管杭の特性である高い靭性から大地震に強いこと、中掘り工法を採用することで現場造成杭やコンクリートパイルと比較し低排土、かつφ1,400mmの大口径鋼管杭を70m(施工長)の深度まで施工できること、掘削深度や掘削速度、セメントミルク※2注入量、拡縮翼径などをリアルタイムでモニタリングすることにより品質管理が可能なことなどである。

※1 kN(キロニュートン):荷重を表す単位。おおむね10kN=1t。
※2 セメントミルク:セメントと水を混ぜ合わせてできるミルク状のもの。


(3) ATTコラム工法(杭)
旭化成建材(株)と共同で研究開発した工法で、ソイルセメントコラム(柱状改良体)の中央に羽根付き鋼管杭を埋設するハイブリッド杭工法である。特長は、ソイルセメントコラムと羽根付き鋼管杭の相乗効果で得られる大きな周面摩擦力と高い靭性により軟弱地盤上でも大きな水平支持力を期待できること、後述するテノコラム工法を応用することで建設残土を低減できること、狭隘地での施工が可能なことなどである。中低層建築物やアウトフレーム型耐震補強の基礎として多用されるほか、歩道橋の橋台基礎など狭い現場や狭い搬入路でも利用できるうえ、明確な支持層に着底しない浮き基礎にも対応していることが高く評価されている。

(4) テノコラム工法(地盤改良)
建築物の基礎工法として地盤改良の使用が認知される先駆けとなった工法で、1984年に同社独自で特許を取得した。スラリー※状にしたセメント系固化材(固化材液)を地盤に注入し、機械的に撹拌混合することでソイルセメントコラムを築造する。特長は、土質を選ばず均一な強度のコラムを築造できること、コラム径や施工機械のラインアップが幅広いため施工仕様や現場条件に合わせられること、リアルタイムの施工管理システムによって工期短縮やコスト削減を図れること、低振動・低騒音に加え地下水汚濁や二次公害のない環境にやさしい工法であることなどである。戸建て住宅やマンション、商業施設、中低層建築物、工場など様々な建築物の基礎に採用されるだけでなく、液状化対策や円弧滑り防止など用途は多岐にわたる。阪神大震災や東日本大震災、熊本地震といった大地震の際、テノコラム工法を基礎に採用した構造物が無被害だったことから同工法への信頼性が改めて高まり、これまでの施工実績は約40,000件となる。なお、同社は浅層地盤改良工法である「TENO Q-be(テノキューブ)」を開発し、本格的な事業化に向けて取り組んでいる。同一区画でも支持層深度が異なることが多いため、浅層の「TENO Q-be」と深層のテノコラムの2つの工法を併せ持つことは、設計業者やゼネコンにとって利便性が高いだけでなく、現場においても深層の残土を浅層の地盤固めに利用できる環境にやさしい工法として期待が高まっている。

※スラリー:セメントと水を混ぜ合わせてできるミルク状のもの。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)《HN》

関連記事