サンワテクノス Research Memo(7):高水準のROEを維持し、PBR1.0倍超の早期実現を目指す(1)

2024年7月9日 13:47

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記事提供元:フィスコ

*13:47JST サンワテクノス Research Memo(7):高水準のROEを維持し、PBR1.0倍超の早期実現を目指す(1)
■長期ビジョンと中期経営計画

3. 資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応について
サンワテクノス<8137>のROEは2024年3月期で10.8%と10%を上回っているものの、株価はPBRで0.75倍と1.0倍を下回る水準が続いている。この要因として、同社の持続的成長に向けた事業戦略や成長戦略が投資家から十分な理解を得られていない、株式の流動性が低く時価総額も300億円台と大きくはないため、大手機関投資家の運用対象銘柄となりにくい、などが要因と同社では分析している。こうした状況を踏まえ、同社では中期経営計画の着実な実行により収益性の向上を実現することに加えて、株主還元の充実、IR・SR活動の拡充に取り組むことで、PBR1.0倍超の早期実現を目指す考えだ。

(1) 収益性向上に向けた戦略
a) 営業戦略
収益力のさらなる向上を図るため、2024年4月より営業組織の再編成を実施した。具体的には、国内支社を3支社(関東、名古屋、関西)体制から5支社体制(関東支社を北関東と南関東に分割、九州支社を新設)とし、海外3地域統括部(中国地域、アジア太平洋地域、欧米地域)と併せて、今まで以上に地域における顧客密着型営業を強化するほか、各支社と顧客セグメントチームが連携をとりながら技術提案型営業を強化し、収益力の維持向上を図ることが狙いとなっている。

b) 商品戦略
脱炭素化社会の実現に向けて、国内外でグリーントランスフォーメーション(GX)の取り組みが活発化するなか、同社も環境に優しい製品の拡販を全社で取り組むプロジェクトを立ち上げた。太陽光パネルや蓄電システム、省エネ関連機器等の需要は中長期的に拡大が見込まれており、関連製品や電子部品並びに設備機械など幅広い取り扱い製品を国内外で拡販することで、同社の売上高も持続的に拡大していくものと予想される。

c) 技術戦略
収益性向上施策の1つとして、イノベーション本部が独自技術を有する企業とアライアンス等の実施を通じて高付加価値の新商品の開発を行い、拡販に注力している。具体的な商品として、ロボットソリューションパッケージ「3D Connectシリーズ」が挙げられ、その第1弾として2023年にARマーカー※を利用した「AR^2 System(エーアール・ツー・システム)」の販売を開始した。

※ARマーカーとは、現実空間にデジタルコンテンツを重ねて表示できる「AR(拡張現実)」を表示させる目印となるものを指し、画像や顔、建物など様々なものをARマーカーとして活用できる。


「3D Connectシリーズ」は、3次元CADとロボット等のモーションコントローラーをリアルタイムに連携操作させるプロセスシミュレーターを使って、設計から動作に至る各種機能を持ったモジュールを組み合わせたソリューションパッケージのことで、これによってロボット動作における現実と仮想空間の座標の齟齬が補正され、ものづくりにおけるデジタルマニュファクチャリングが促進される。今回発売した「AR^2 System」の特徴は、ロボットに搭載したカメラが対象物等に貼付したARマーカーを読み取り、自動座標定位を行うことで高精度にロボットの相対的位置補正が可能になること、またARマーカーに動作条件(レシピ)を埋め込むことで、ロボットに判断選択をさせて動作を指示できることの2点である。ロボットは通常、所定の動作を行うためのティーチングデータを作成して運用する必要があるが、この工程を「AR^2 System」を付加することで効率的に実現するソリューションとなる。ロボットの運用ノウハウを持たない企業でも、比較的容易にロボットの導入・運用が可能になるといったメリットがあり、発売以降多くの問い合わせがあり、既に自動車電装品メーカーからの受注も決まったようだ。

メーカー標準にパッケージを付加することにより、ロボット導入のハードルが軽減されると好評で、同社では2025年3月期以降3年間で50億円の売上を目標としている。収益性はロボット単体で導入するよりも高くなるため、収益性向上と機械部門の売上拡大に貢献するものと期待される。

d) 海外戦略
海外戦略に関しては、中国リスクの影響を最小限に抑えるよう対処し、インドを含むアジアへの生産移管を進める顧客への支援体制を整備し、現地代理店としての営業基盤を確立して売上規模の拡大を図る。海外売上比率※については、2022年3月期の34%から2025年3月期は38%に引き上げる。地域別構成比率では中国が2022年3月期の24%から2025年3月期は25%に、その他アジアが同様に6%から9%に上昇する。中国については前期の27%をピークに低下すると見ている。アジアの中ではインドの市場拡大に対応すべく、2024年5月に2拠点目となるグルグラム事務所を開設した。現地に進出する日系現地法人を顧客ターゲットとしていく。

※海外売上比率=海外事業(海外現地法人)売上高÷連結売上高(連結消去前)


e) DX戦略
同社ではDX推進プロジェクトとして「SDX(サンワDX)」を策定し、DX推進により業務の効率化と収益性向上に向けた体制の構築を目指している。主なテーマとして、以下の5点に取り組んでいる。

・顧客バリュー向上のためのデータ活用の高度化:顧客セグメント戦略KPIの可視化、営業支援ツールの活用高度化、技術情報データベースの構築
・オペレーション業務の効率化:基幹システムからの出力帳票のデジタル化、申請・承認業務のワークフロー化の充実、RPAによる業務の自動化、情報の一元化、業務プロセスの標準化・集約化、倉庫管理システムや輸出管理システムの導入
・DX人材の育成・採用:全社員を対象にITリテラシー向上のための研修実施、リスキリングによるDX人材の育成、適正人材の採用
・重要経営指標の迅速な可視化:効率的なグローバルデータの集約、経営ダッシュボードの充実、営業支援ツールの見直し
・企業サイトリニューアル:“世界中の技術をつなぐ”をコンセプトにリニューアル(2024年11月実施予定)

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)《SO》

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