相場展望6月24日号 米国株: エヌビディア株価反落は、AI相場の過熱感によるものか? 日本株: ボックス相場から抜け出しが近いと予想

2024年6月24日 10:55

印刷

■I.米国株式市場

●1.NYダウの推移

 1)6/20、NYダウ+299ドル高、39,134ドル
 2)6/21、NYダウ+15ドル高、39,150ドル

【前回は】相場展望6月20日号 米国株: NYダウが、ナスダックやS&P500種などの株価指数に一人負け 日本株: 海外投資家が売り転換、証券(自己)も追随

●2.米国株 : 過熱した人工知能(AI)相場も一服か?

 1)米国株を牽引したのは半導体株指数(SOX)で、NYダウは失速し主役交代
  ・主要株価指数の推移
              4/19   6/18   6/21  4/19⇒6/18
    NYダウ      37,986  38,834  39,150 + 848高、+ 2.2%高
    SOX        4,306   5,765   5,538 +1,459高、+33.9%高
    ナスダック総合   15,282  17,862  17,689 +2,580高、+16.9%高

  ・人工知能(AI)への強い期待感が高まり、エヌビディアを先頭にしてSOX指数が大幅上昇。ナスダック総合にも波及した。

  ・一方、NYダウは一人旅の様相が深まる。

 2)エヌビディアの株価が6/20~21で反落した影響で、ナスダック総合も下落
  ・エヌビディア株価の推移   6/18    6/21   下落幅   下落率
    エヌビディア株価    135.58ドル 126.57  ▲9.01ドル安、▲6.6%安
    エヌビディアは時価総額首位から転落した。

  ・主要株価指数の6/18⇒6/21の推移
    SOX       ▲3.9%安
    ナスダック総合  ▲1.0%安
    NYダウ      +0.8%高

  ・エヌビディアは人工知能(AI)への過熱感から反落した影響で、SOX指数は連れ安した。

  ・ハイテク株比率が高いナスダック総合指数は、SOX株価指数の下落に影響され反落した。

  ・NYダウは、割安の消費関連株の見直し買いに支えられた。

 3)半導体株指数(SOX)も6/18に最高値更新して反落
  ・SOX指数の推移
    SOX     4/19       4,306
           6/18  5,765
           6/21    5,538

  ・4/19⇒6/18まで+1,459上昇と+33.9%の急騰した。

  ・6/20⇒6/21の2日間で、▲227反落し下落率は▲3.9%。

  ・通常の急伸後の反落は、通常、一服とみられる。しかし、注意したいのはエヌビディアの下げを起因として反落していることだ。

  ・今後、エヌビディアが持ち直して再上昇するか、峠から下るのか、注視したい。

●3.エヌビディア、株価続落で時価総額▲2,000億ドル消失、首位の座から陥落(ブルームバーグ)

●4.米新規失業保険申請件数23.8万件、前週の大幅増から減少に転じた(ロイター)

●5.米戸建て住宅着工、5月は▲5.2%減の年率換算98.2万戸、昨年10月以来の低水準(ロイター)

 1)住宅ローン金利の高止まりが響いた。需要が多い30年固定住宅ローンの平均金利は、4月と5月に7%を超えて推移して以降、戸建て住宅着工の低下基調が続いている。

■II.中国株式市場

●1.上海総合指数の推移

 1)6/20、上海総合▲12安、3,005
 2)6/21、上海総合▲7安、2,998

●2.香港へ向かう中国富裕層のマネー、制度緩和で加速(ロイター

 1)中国の富裕層が、香港の保険商品や定期預金への投資を急増させている。本土の経済と不動産セクターの低迷や、人民元の下落から財産を守るのが狙いだ。

 2)この傾向は昨年から顕著だったが、中国が2月に「クロスボーダー・ウエルス・マネジメント・コネクト(越境理財通)」制度の投資枠を拡大したことで、ここ数カ月は加速している。

 3)中国には富裕層が約4,500万人おり、海外投資や教育、自己防衛策をますます求めるようになっている。このため、中国本土以外での資産運用需要は増えている。

 4)この越境理財通制度を通じて、香港とマカオの住民も中国本土に投資できる。

●3.日産、中国蘇州の常州工場を閉鎖、生産能力は中国全体の1割の13万台(日刊自動車新聞)

 1)常州工場は東風汽車集団との折半出資会社である東風日産が、中国の需要拡大に合わせ、2020年11月に稼働を開始した工場。同工場の閉鎖により、日産の中国生産拠点は8工場から7工場となる。

 2)日産の中国生産能力は160万台だが、今期の計画は80万台と厳しい状況。

●4.中国からの脱出の富裕層、2024年は過去最多の1万5,200人、英調査会社予測(日経新聞)

 1)2023年は1万3,800人だった。

 2)資産を持ち出す富裕層が増えれば、軟調な中国国内経済の打撃になる可能性がある。

■III.日本株式市場

●1.日経平均の推移

 1)6/20、日経平均+62円高、38,633円
 2)6/21、日経平均▲36円安、38,596円

●2.日本株:ボックス相場からの抜け出しが近いと予想

 1)日経平均はボックス圏相場から抜け出せない状況が続く
  ・日経平均は38,000円~39,000円のボックス圏での攻防が続いている。

  ・やがて、均衡が破れ、このボックス圏から抜け出すと思われる。

 2)欧州株安が重し
  ・フランスの下院総選挙に端を発した政局混迷が、欧州株価安につながった。

  ・フランスの選挙で極右勢力が勝つと、EUは内向きになりやすい。移民受入れ政策も反対、ウクライナ支援も後退する可能性が高い。イタリアの政治は右翼勢力が担っているが、EUとの連合の枠組みから外れない現実路線を歩んでいる。もし、フランスで極右勢が優勢となれば、イタリアも同調する可能性がある。そうなれば、ロシアにとって親ロシア勢力の増大は好ましくなる。米国ではトランプ大統領の出現もありえる。西側諸国vsロシア・中国の世界構図に変化をもたらす可能性の芽が膨らむ。これは、株式市場にとって大きな試金石となりえるため、注意深く対処したい。

 3)世界経済減速懸念
  ・西側諸国と中国の経済減速が起因となって、世界経済減速への懸念が増した。

 4)下値で押し目買いが目立つ
  ・38,500円を挟んだ攻防が続く。

  ・米ハイテク株高の思惑が反映されやすい地合いとなっている。

  ・売買代金は最低水準のため、薄商いのなか安値狙いの買いで株価を支える構図になっている。

 5)日経平均は、米国のNYダウよりも半導体関連株の動向の影響が強い
  ・このため、エヌビディアやSOX指数の動向に留意したい。

●3.デンソー、トヨタ紡織や豊田通商と日野自動車など8社の保有株の全て売却済(ロイター)

 1)他の5銘柄は、豊田合成、愛知製鋼、大同特殊鋼、ファインシンター、東海理化。

 2)さらに、豊田自動織機など3銘柄の持分の一部も売却。

 3)売却金額は合計で1,258億円。

■IV.注目銘柄(投資は自己責任でお願いします)

 ・2726 パル              業績堅調
 ・3769 GMOペイメント・ゲートウェイ  業績堅調
 ・4384 ラクスル            業績好調

著者プロフィール

中島義之

中島義之(なかしま よしゆき) 

1970年に積水化学工業(株)入社、メーカーの企画・管理(財務含む)を32年間経験後、企業再生ビジネスに携わる。 現在、アイマックスパートナーズ(株)代表。 メーカーサイドから見た金融と企業経営を視点に、株式含む金融市場のコメントを2017年から発信。 発信内容は、オープン情報(ニュース、雑誌、証券リポート等々)を分析・組み合わせした上で、実現の可能性を予測・展望しながらコメントを作成。http://note.com/soubatennbou

記事の先頭に戻る

関連キーワード

関連記事