アジア投資 Research Memo(4):中期経営計画は、障がい者グループホームへの新規投資などでは一定の成果

2024年6月21日 14:24

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記事提供元:フィスコ

*14:24JST アジア投資 Research Memo(4):中期経営計画は、障がい者グループホームへの新規投資などでは一定の成果
■中期経営計画の振り返り

1. これまでの経緯
日本アジア投資<8518>は、2022年3月期より3ヶ年の中期経営計画を推進してきた。前中期経営計画(2019年3月期~2021年3月期)では、「日本とアジアをつなぐ投資会社として少子高齢化が進む社会に安心・安全で質と生産性の高い未来を創ります」という経営理念の下、VC業界を取り巻く環境変化への対応や課題解決に向けて、投資方針(本体投資分)の抜本的な見直し※を行い、収益拡大に向けた足掛かりを築いてきた。現 中期経営計画では、第2段階として収益やキャッシュ・フローの安定化を実現し、さらなる成長に向けた投資を拡大するシナリオとなっていた。

※収穫期に入る既存のPE投資資産の売却により、利益・資金を確保するとともに、本体投資分については、「事業テーマ」を明確に持ち、そのテーマを軸に「企業への投資」(PE投資)と「事業への投資」(プロジェクト投資)を組み合わせる戦略的投資を推進し、安定収益の拡大と財務健全性向上を目指す方針。


2. 基本方針及び事業戦略の達成状況
(1) 基本方針(全体戦略)
基本方針として、「既存のPE投資(フィナンシャル投資)資産を売却し、利益・資金を確保する」「新たな投資方針に基づき、プロジェクト投資の残高を増加させる/投資対象プロジェクトを多様化する」「プロジェクト投資での協議を通じたハンズオン型の投資スタイルを確立し、戦略投資からの株式売却益を増加させる」の3つに取り組んできた。

「既存のPE投資(フィナンシャル投資)資産を売却し、利益・資金を確保する」については、フィナンシャル投資資産は減少したものの、資産の入れ替えは完了せず、回収額が見込みを下回り、利益・資金の十分な確保に至らなかった。「新たな投資方針に基づき、プロジェクト投資の残高を増加させる/投資対象プロジェクトを多様化する」については、障がい者グループホームの投資実行では一定の成果があった一方、収益の柱の構築やプロジェクトの多様化は実現しなかった。「プロジェクト投資での協議を通じたハンズオン型の投資スタイルを確立し、戦略投資からの株式売却益を増加させる」については、2件の戦略投資先の売却(IPO、M&A)では大きな成果があったものの、業績が大きく下振れるケースや売却が進まないケースなども発生した。以上から、プラス・マイナス両面あるものの、総じて見れば、事業推進の遅れ等により十分な成果を上げることはできなかったという評価である。

(2) 事業戦略
a) プライベートエクイティ投資、b) 再生可能性エネルギー、c) ディストリビューションセンター(物流施設)、d) スマートアグリ(植物工場)、e) ヘルスケア(障がい者グループホーム)、f) ヘルスケア(高齢者施設)の投資種類(事業)別に戦略テーマを掲げ、それぞれに取り組みを推進してきた。

事業承継支援ファンドの組成(a)、メガソーラープロジェクトの売却(b)、植物工場における販路拡大と黒字化への目途(d)、障がい者グループホームへの投資拡大(e)などでは一定の成果を残すことができたが、新たな収益の柱の構築やプロジェクトの多様化には至らなかった。

3. 数値計画の達成状況
中期経営計画期間中は、既存資産の流動化を完了させるため、PE投資の収益を中心に据えるとともに、最終年度の2024年3月期にはフィー収益とプロジェクトの収益で管理コストを賄い、変動の大きなPE投資の収益により超過利益(アップサイド)を実現する想定の下、営業総利益で22億円、最終利益で8.5億円を目指してきた。

ただ、3年間に及ぶ株式売却益の下振れや事業推進の遅れ等により、業績面で計画を下回って推移した。中期経営計画3年間の累計営業総利益の内訳(計画比)見込みを見ると、1) PE投資は売却益の未達と引当金繰入額の超過により計画比18%、2) プロジェクト投資も2024年3月期の売却が少なかったことや黒字化が遅れているプロジェクトにより計画比37%に留まった。一方、3) フィー収益等はファンド運営報酬やコンサルティングはおおむね計画を達成し、計画比93%となったものの、全体として見れば大きく計画未達となり、特に1) PE投資の下振れによる影響が大きかったと言える。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)《SO》

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