AIAI Research Memo(5):AIAI NURSERYは開設後3~4年目から収益化

2024年6月12日 12:55

印刷

記事提供元:フィスコ

*12:55JST AIAI Research Memo(5):AIAI NURSERYは開設後3~4年目から収益化
■AIAIグループ<6557>の事業概要

3. 収益特性
認可保育園の収益特性としては一般的に、新規施設開設時は初期費用や採用費用などの立ち上げ費用が先行し、開設後数年間は高年齢クラス(3歳~5歳)が定員を満たさないため、低在籍数・低在籍率で赤字となる傾向にある。しかし開設後の年数経過とともに低年齢クラス(0歳~2歳)の児童が進級を重ねることにより、高年齢クラスの在籍数が増加し、在籍率も上昇して売上高、売上総利益も増加する。そして開設後3~4年目以降になると、在籍数増加・在籍率上昇によって収益化(黒字化)すると言われている。

AIAI NURSERY全施設合計の充足率(稼働率)は、新規施設開設(認可保育園のオープンは原則として4月1日)に伴って定員数が増加するため一時的に低下するが、その後の受入児童数増加に伴って充足率も上昇基調となる。直近の2023年1月~2024年3月の月別園児数及び充足率の推移を見ると、2023年4月は新規5施設開設(うち1施設は定員数を拡大して移転)に伴って園児数が増加したものの、定員数増加に伴って充足率が低下した。しかし、その後は園児数増加に伴って充足率も上昇基調となっている。一方のコスト面では、新規オープン前後の1-3月期及び4-6月期に新規施設開設関連費用が増加して経費率が上昇するが、その後7-9月期及び10-12月期にかけては在籍数増加や充足率上昇に伴って経費率が低下する。

なお認可保育園に係る補助金収入については、委託費・運営補助金(園児や保育士に関する補助金や施設の賃借に関する補助金等)は売上高に計上し、施設開設に係る補助金(新規開設の投資額に対する一定割合の補助金)は営業外収益に計上している。また費用としては、運営に係る費用(保育園の運営に係る人件費や物件費)は営業費用に計上、施設開設準備に係る費用は営業外費用に計上している。補助金収入額の増減や計上時期のズレなどで収益変動要因となることがある。同社はこれまで、収益基盤構築に向けてAIAI NURSERYの積極開設を推進してきたため、戦略的に費用が先行して営業赤字が継続していたが、開設後3~4年を経過して収益化した園が増加したことなどにより、2023年3月期第2四半期からは全体としての営業黒字が定着し、さらに売上高の増加に伴って営業利益拡大傾向となっている。

また、AIAI PLUSの収益特性としては、AIAI NURSERYと同じ建物で運営できるケースもあり、AIAI NURSERYに比べて投資額を抑えられることに加え、AIAI NURSERYとの併設によるシナジー効果で集客力や採用力の強化、戦略的な人員配置などにつながるメリットなどもある。さらにAIAI NURSERYは4月1日オープンを原則とするが、AIAI PLUSはオープン時期を自由に設定できるという柔軟性もあることなどから、AIAI PLUSはAIAI NURSERYに比べて早期の収益化が期待できるという特徴がある。

4. リスク要因と対策・課題
保育分野における一般的なリスク要因としては、利用者の減少、国や自治体による政策変更、関連法規制や許認可、施設における事故や感染症、保育士の確保難、競合激化などが挙げられる。

保育分野においては待機児童問題の解消が進み、今後は利用者減少によって競争激化や採算性低下も想定されている。しかし、保育園の待機児童問題が解消に向かう一方で、発達障害児童数が増加傾向という事業環境の変化もあり、事業環境はおおむね良好に推移すると弊社では考えている。なお、政府の少子化対策及び幼児教育・保育の質的向上対策として、親の就労を問わず生後6ヶ月から3歳未満を対象に誰でも保育を利用できる「こども誰でも通園制度(仮称)」(試行的事業を踏まえて2025年度に制度化、2026年度から本格的な実施を目指す)の開始、保育士配置基準における対人数の変更、出産を機に退職した親が再就職する際に子どもを保育所に預けやすくする保育所「入所予約枠」制度の開始、これまで特別区で運用していた地域限定保育士の全国運用の開始、保育士不足緩和に向けた保育補助者支援金の有資格者への拡大など、2024年度から保育政策が大きく転換する。

同社は千葉県を中心とするドミナント戦略などを推進し、保育分野にとどまらず、需要が高まっている未就学児の療育の分野においても豊富なノウハウと実績を有するなど競合優位性を維持している。そして今後は、事業環境の変化に対応して、AIAI PLUSやAIAI VISITの拡大など新たなビジネスモデル構築を推進する方針としている。2024年度からの保育政策変更も、競合優位性を発揮してビジネスチャンスの拡大につながる可能性があるだろうと弊社では考えている。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 水田雅展)《SI》

関連記事