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富士紡HD Research Memo(7):生成AIなど最先端半導体の需要好調等で2025年3月期は大幅な増収増益予想
*13:27JST 富士紡HD Research Memo(7):生成AIなど最先端半導体の需要好調等で2025年3月期は大幅な増収増益予想
■今後の見通し
1. 2025年3月期の業績見通し
富士紡ホールディングス<3104>の2025年3月期の業績予想については、売上高が42,000百万円(前期比5,891百万円増)、営業利益が5,100百万円(同2,281百万円増)、経常利益が5,300百万円(同2,023百万円増)、親会社株主に帰属する当期純利益が3,500百万円(同1,382百万円増)としている。
半導体需要動向は、現在生成AIなどの最先端半導体分野は好調であるが、スマホ、パソコンや5G基地局向け汎用半導体分野はまだ回復途上で、2025年3月期は緩やかに回復し、2026年3月期には成長軌道に乗ると見ている。これに伴い、研磨材の受注状況も2025年3月期上期はCMP用途中心に好調に推移し、下期はシリコンウエハー用途も回復、2026年3月期にはレガシー半導体(アナログデバイス、ディスクリートデバイスやセンサーなど)分野も需要回復し、研磨材事業全体が伸びていくと予想している。
2. セグメント別業績見通し
(1) 研磨材事業
売上高16,500百万円(前期比23.0%増)、営業利益3,100百万円(同185.2%増、営業利益率18.8%)を予想している。研磨材事業の主力市場であるCMP用途市場は2023年6~7月に半導体市場が底入れ、2024年3月期下期から受注は回復しており、2025年3月期はさらに好調に推移するものと思われる。特に、同社の研磨材(ソフトパッド)はロジック半導体分野での使用比率が高く、生成AIやIoT分野で使用されるロジック半導体が高成長で推移することから、受注回復のけん引役となる模様である。また、半導体需給サイクルではCMP工程に比べてシリコンウエハー工程は5ヶ月程遅れると言われている。さらに、シリコンウエハー自体を作り過ぎたため、在庫調整に時間がかかっていることから、2025年3月期もしばらくは在庫調整局面が続き、2024年7~9月期あたりから受注回復局面に転じると見ている。
一方で、新用途市場として、「SiCウエハー」と「半導体の微細化と積層化」に大きな期待が寄せられている。SiCウエハー(パワー半導体)市場は、自動車のEV化が進展するなか、将来的には再生可能エネルギー(太陽光発電や風力発電など)も含め大規模市場(CMP用途に次ぐ“第2の柱”)になると期待されており、この分野の研究開発はアクセルを緩めず優先的に取り組んでいる。また、メモリー半導体分野においては積層化が進むと微細化技術が必要となり、同社のソフトパッドの出番となる。既にNANDフラッシュメモリ分野ではソフトパッドが使われ始めている。
(2) 化学工業品事業
売上高15,000百万円(前期比19.8%増)、営業利益1,200百万円(同35.1%増、営業利益率8.0%)を予想している。半導体を中心とした電子材料関連は需要低迷が今後しばらく続きそうだ。機能性材料では、2021年より大手化学メーカーと新しい素材開発・試作を進めてきたが、2025年3月期には一部量産化が計画されている。特に、新規顧客や新規受注獲得への取り組みに注力しようとしている。さらに、機能性材料は中長期的には受注拡大が見込まれることから、国内2工場(柳井工場、武生工場)の連携強化を一層進め、新プラント設備に向けた付帯設備関連の投資に着手する。
(3) 生活衣料事業
売上高7,000百万円(前期比0.7%増)、営業利益700百万円(同10.5%減、営業利益率10%)を予想している。成長分野(高級肌着)である「アングル」が2023年3月期中から販売好調で、中国などの海外富裕層から注文が殺到している。2025年3月期は海外向け「アングル」をECなどを活用して拡販する。生活衣料事業をさらに儲かる事業にすべく、円安に向けたコスト上昇に対応した適正な価格設定、高収益定番商品への絞り込みに加え、SNSなどを活用したダイレクトマーケティングにより、Eコマース型ビジネスモデルへの転換を進めている。
(4) その他(化成品)事業
売上高3,500百万円(前期比8.7%増)、営業利益100百万円(同69.5%増、営業利益率2.9%)を予想している。医療機器用部品向け需要のさらなる拡大が見込まれるため、生産体制を再構築するとともに、2022年にグループ入りしたIPMとのグループシナジーを活かすことで2025年3月期の売上高・営業利益とも増加の見込みである。
3. 設備投資の見通し
2025年3月期の設備投資計画は、6,252百万円(前期比93.0%増)と前期の倍増投資を予定しており、足元の急激な半導体需要減に呼応した設備投資計画の見直しと開発投資の優先順位付けにより、半導体市場の回復や次世代製品の開発に備える。研磨材事業では、生産能力増強投資の動きは一巡し、中長期的な成長投資としての研究開発投資を強化している。投資テーマとしては、技術開発棟及び台湾ラボ施設の建設などが挙げられる。化学工業品事業では、中長期的に機能性材料の受注拡大が見込まれることから、新プラント建設に向けた付帯設備関連の投資に着手した。
4. 化学工業品事業における能力増強投資
化学工業品事業では、半導体を中心に電子材料市況が悪化し、厳しい事業環境がしばらく続くものと見られる。一方で中長期的にはグローバル展開も視野に入れた戦略的新製品の受注が見込まれている。2021年より大手化学メーカーと新しい素材開発・試作を進めてきており、同社にしか作れない差別性と独自性のある“オンリーワン”製品で、化学工業品事業のなかでは数割を占める大型新製品である。2024年3月期の需要量は増えており、2025年3月期以降も堅調に拡大する見通しで、現有生産能力を超える発注量が見込まれる。今回は、その発注量に見合う形で大きな設備投資(総額約62億円)を行う。なお、顧客企業との関係のなかで、中長期の発注量(見通し)と価格がある程度見えている。その前提で大型投資に踏み切った。また、比較的短期間での投資回収も可能と同社では見ている。既に、柳井・武生両工場の連携強化を進め、新プラントの建設を開始している。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 清水啓司)《SO》
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