【決算記事情報】科研製薬は25年3月期減益予想も新薬開発進展で成長期待、アルツ、エクロック増収で薬価改定影響吸収へ

2024年5月30日 17:55

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記事提供元:日本インタビュ新聞社

 科研製薬<4521>(東証プライム)の24年3月連結業績は、海外売上高減少の影響などにより全体として小幅減収だが、前期計上の2つの開発品導入に係る一時的費用が一巡して研究開発費が大幅に減少したため、各利益は計画を上回り増益で着地した。25年3月期は増収ながら減益予想としている。売上面はアルツやエクロックの伸長で薬価改定影響などを吸収する見込みだ。利益面は販管費や研究開発費の増加を見込んでいる。なお5月17日に「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」についてリリースした。

■医療用医薬品・医療機器メーカー

 医薬品・医療機器、農業薬品などの薬業、および文京グリーンコート関連などの不動産賃貸事業を展開している。

 主要医薬品・医療機器は、爪白癬治療剤のクレナフィン、関節機能改善剤のアルツ、癒着防止吸収性バリアのセプラフィルム、創傷治癒促進剤のフィブラスト、原発性腋窩多汗症治療剤のエクロック、歯周組織再生剤のリグロス、腰椎椎間板ヘルニア治療剤のヘルニコア、およびジェネリック医薬品である。

 23年8月には、壊死組織除去剤ネキソブリッド(イスラエルのメディウンド社から導入、海外製品名NexoBrid、22年12月に深達性Ⅱ度またはⅢ度熱傷における壊死組織の除去の効能・効果で日本における製造販売承認取得、23年5月に薬価基準収載)の発売を開始した。本剤は希少疾病用医薬品に指定されていることに加え、低温管理(2℃~8℃)での保管・流通が求められるため、エス・エム・ディを総代理店として販売する。

 23年9月には原発性腋窩多汗症治療剤エクロックについて、23年6月に韓国における独占販売契約を締結した韓国ドンファ社(韓国証券取引所上場)が、韓国食品医薬品安全処に販売承認申請を提出した。

 24年3月には、エーザイ<4523>より医療用医薬品2製品(メリスロン、ミオナール)の日本国内での製造販売承認を承継する契約を締結した。25年3月末を目途に販売機能の移管を進め、その後に製造販売承認の承継を行っていく。

 5月17日には、静岡工場(静岡県藤枝市)内に、農薬事業の中心である発酵農薬原体の製造工場を建設すると発表した。着工は25年11月、竣工は27年7月、稼働開始は27年11月の予定としている。

■M&A・アライアンス

 M&A・アライアンス関連では、21年1月にブロックチェーン技術を活用したデータプラットフォーム事業で医療・ヘルスケア領域に展開するジーネックス(マネックスグループの関係会社)に出資して業務提携した。21年12月には国内バイオベンチャー企業のアーサム・セラピューティクス社を連結子会社化した。

 22年11月には、アクシル・キャピタル・パートナーズ2号有限責任事業組合が設立したアクシル・ライフサイエンス&ヘルスケアファンド2号投資事業有限責任組合に対して、最大10億円を出資する契約を締結した。

 23年1月には、2017年に武田薬品工業の創薬プラットフォーム事業を継承した国内初の創薬ソリューションプロバイダーであるAxcelead DDP(神奈川県藤沢市)と、画期的新薬の創出に向けた協業に関する契約を締結した。23年3月には、bitBiome(東京都新宿区)と、bitBiomeが有する微生物プラットフォーム技術を活用し、感染症治療薬創薬に関する共同研究契約を締結した。

 23年9月には、再生医療関連事業を展開するセルソース(東京都渋谷区)と、エクソソームを含む細胞外分泌物を用いた整形外科疾患の治療または予防に関する日本初の医薬品の創出に向けたフィージビリティ・スタディ契約を締結した。

■開発パイプライン

 24年3月期末時点の主要な開発パイプラインの状況は、アタマジラミ症を適応症とするKAR(アーバー・ファーマシューティカルズ社から導入、海外製品名Sklice)が第3相段階、難治性脈管奇形を適応症とするKP-001(旧ART―001、アーサム・セラピューティクス社からの継承品)が日本で第3相段階・米国で第1相段階、固形がんを適応症とするKP-483(がん免疫療法、自社創薬品)が第1相段階、アトピー性皮膚炎を適応症とする多重特異性抗体医薬候補物質NM26-2198(ニューマブ・セラピューティクス社との共同開発)が第1相段階、末梢性神経障害性疼痛を適応症とするKP910(自社創薬品)が第1相段階、原発性胆汁性胆管炎を適応症とするセラデルパー(シーマベイ・セラピューティクス社からの導入品)が第1相段階、先天性副腎過形成症を適応症とするチルダセルフォント(スプルース・バイオサイエンシズ社からの導入品)が第1相段階である。なおBBI-4000については第1相段階を終了し、原発性掌蹠多汗症治療薬としての開発を中止した。

 セラデルパーは23年1月に米国シーマベイ・セラピューティクス社(注:24年2月にギリアドサイエンス社に被買収)と、日本における開発および商業化に関するライセンス契約を締結した。シーマベイ社に対して契約一時金45億円、開発および販売マイルストンの達成により最大170億円、並びに売上に対する一定のロイヤリティを支払う。

 チルダセルフォントは23年1月に米国スプルース・バイオサイエンシズ社と、日本における開発および商業化に関するライセンス契約を締結した。スプルース社に対して契約一時金15百万ドル、開発および販売マイルストンの達成により最大64百万ドル(1ドル=135円換算)並びに売上に対する一定のロイヤリティを支払う。

■24年3月期増益着地、25年3月期減益予想

 24年3月期の連結業績は売上高が23年3月期比比1.3%減の720億44百万円、営業利益が18.9%増の95億13百万円、経常利益が14.0%増の99億51百万円、そして親会社株主帰属当期純利益が47.5%増の80億25百万円だった。配当は23年3月期と同額の150円(第2四半期末75円、期末75円)とした。配当性向は70.5%となる。

 売上面ではアルツやエクロックが増加したものの、海外売上高減少の影響などにより全体として小幅減収だった。利益面では、研究開発費を除く販管費が増加したが、前期計上の2つの開発品導入に係る一時的費用(65億円)が一巡して研究開発費が減少(20.6%減の125億43百万円)したため、各利益は計画を上回り増益で着地した。親会社株主帰属当期純利益については、前期計上の減損損失18億63百万円が一巡したことも寄与した。

 主要な国内の医薬品・医療機器の売上高(単体)は、クレナフィンが4.8%減の171億16百万円、アルツが5.7%増の180億40百万円、セプラフィルムが10.2%減の69億95百万円、フィブラストが4.8%減の26億26百万円、エクロックが44.1%増の18億12百万円、リグロスが0.7%増の8億98百万円、ヘルニコアが2.5%減の3億82百万円、ジェネリック医薬品が2.6%減の79億92百万円だった。

 セグメント別に見ると、薬業(医薬品・医療機器、農業薬品)は売上高が1.3%減の696億13百万円、利益(営業利益)が21.4%増の81億40百万円だった。なお海外売上高は10.5%減の64億74百万円だった。不動産事業(文京グリーンコート関連賃貸料など)は売上高が0.4%増の24億30百万円で、利益が6.4%増の13億73百万円だった。

 全社ベースの業績を四半期別に見ると、第1四半期は売上高が181億50百万円で営業利益が32億93百万円、第2四半期は売上高が180億21百万円で営業利益が22億19百万円、第3四半期は売上高が185億14百万円で営業利益が33億61百万円、第4四半期は売上高が173億59百万円で営業利益が6億40百万円だった。

 25年3月期の連結業績予想は売上高が24年3月期比4.2%増の751億円、営業利益が22.2%減の74億円、経常利益が21.6%減の78億円、親会社株主帰属当期純利益が30.2%減の56億円としている。配当予想については24年3月期と同額の150円(第2四半期末75円、期末75円)としている。予想配当性向は101.4%となる。

 増収ながら減益予想としている。売上面はアルツやエクロックの伸長で薬価改定影響などを吸収する見込みだ。利益面は販管費や研究開発費の増加を見込んでいる。販管費は13.3%増の329億円、このうち研究開発費(導入費用は含まない)は開発パイプラインの進展により25.2%増の157億円の計画としている。

 主要な国内医薬品・医療機器の売上高(単体)の計画は、クレナフィンが0.5%増の172億円、アルツが5.3%増の190億円、セプラフィルムが2.8%減の68億円、フィブラストが1.0%減の26億円、エクロックが21.4%増の22億円、リグロスが0.2%増の9億円、ヘルニコアが4.7%増の4億円、ジェネリック医薬品が1.4%増の81億円としている。クレナフィンは大規模疫学調査を活用して潜在患者の治療介入による市場拡大を推進する。アルツは競合品の終売により増収、セプラフィルムは競合品の影響により減収、エクロックは疾患認知の広がりによる市場拡大を見込む。ジェネリック医薬品は選定療養の影響で需要の高まりを見込んでいる。

■長期経営計画2031

 22年5月に2023年3月期から10か年の長期経営計画2031を発表し、画期的新薬の迅速な創出・提供により健康寿命の延伸に貢献し続ける企業、皮膚科・整形外科領域を中心にグローバルに展開する創薬企業を目指している。

 長期的課題を見据えた戦略として研究開発では上市確度の向上、パイプラインの拡充、新規ニーズおよび海外展開への対応、新規分野へのチャレンジ、海外展開では海外展開品の充実、海外自社開発体制の整備、生産・海外自社販売体制の整備、農業事業では北米や新市場での伸長、EU市場への参入・拡大、日本国内での使用促進を推進する。また経営基盤強化に向けて、プロフェッショナルとして新たな挑戦・変革を追求し続ける人材の育成、データとデジタル技術を活用して変革し続ける企業風土の醸成、患者さんファーストのための製品価値最大化を推進する。24年3月には「健康経営優良法人2024」に認定された。

 業績目標としては32年3月期の売上高1000億円、営業利益285億円、ROE10%以上、海外売上高比率30%以上を掲げている。研究開発では10年間で8品目上市するためのパイプライン確保、毎年1品目以上の開発導入品あるいは販売提携品の確保を目指す。海外展開では医薬品の海外売上高比率25%以上を目指す。農薬事業は微生物由来の天然物質農薬ポリオキシンを中心に、売上高100億円を目指す方針としている。

 なお5月17日に「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」についてリリースした。長期経営計画2031に掲げたビジョンと、その実現に向けた戦略を着実に実行することでPBR1倍超えの実現を図るとしている。(情報提供:日本インタビュ新聞社・Media-IR 株式投資情報編集部)

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