京葉瓦斯 Research Memo(7):重要戦略のカーボンニュートラルとCX・DX戦略

2024年5月29日 15:37

印刷

記事提供元:フィスコ

*15:37JST 京葉瓦斯 Research Memo(7):重要戦略のカーボンニュートラルとCX・DX戦略
■京葉瓦斯<9539>の中期経営計画

4. 中長期的に重要な取り組み
「中期経営計画2022-2024」と「長期経営ビジョン2030」において、同社が重要と位置付ける戦略が、カーボンニュートラルチャレンジとCX・DX戦略である。以下、中長期的な取り組みの詳細を示す。

(1) カーボンニュートラル
同社はこれまで低炭素エネルギー「都市ガス」の普及に取り組んできたが、今後取り組みをさらに深化させ、2050年のカーボンニュートラルを達成する方針である。このため、低炭素ガス体エネルギーの供給拡大、カーボンフリーでんきの活用、省エネの推進、地域連携など顧客先でのChallenge1、再生可能エネルギーの開発、脱炭素への貢献、R&Dの推進など脱炭素の手法・新技術を開発するChallenge2、事業活動のカーボンニュートラル化という同社・グループ会社・取引先でのChallenge3の「3つのChallenge」に取り組み、2030年にCO2削減貢献量80万トン(2013年比48%相当)を目指す方針である。

Challenge1では、顧客に向けて、CO2削減に貢献するエネルギー・サービス・商品を積極的に提供していく方針である。ガス体エネルギーの脱炭素化の推進(2030年都市ガスのカーボンニュートラル比率5%目標)や全国的にも高い都市ガス普及率のさらなる向上などにより、低炭素ガス体エネルギーの供給拡大を目指す。また、非常時のEV電源の有効活用、地域における太陽光発電・EVの導入支援などカーボンフリーでんきの活用、PPAモデルの推進、太陽光発電の余剰電力買取、建築物・住宅における省エネ化やエネルギーに関するソリューション提案などを強化する。さらに、エリア価値を引き上げる脱炭素先行地域づくりや地域の環境保全活動をサポートするエコグリーンサポートなどによって、ゼロカーボンシティを目指す自治体との地域連携も強化する。

Challenge2では、国内外で再生可能エネルギーを積極的に開発するとともに、脱炭素・SDGsにつながるR&D(研究開発)を推進、2030年のカーボンフリー電源取扱量を2021年の約5倍となる30万kWとする方針である。このため、(株)Looopコミュニティが組成する国内の太陽光発電所を投資対象とする「こもれびファンド1号」に出資したほか、グリーンボンドによる資金調達も実施した。同社の脱炭素への貢献手法の1つとして、豊富な経験・知見に基づいたレジリエンスや省エネ提案を通して、顧客先や地域におけるCO2排出を削減してクレジットを創出し、創出したクレジットを地域で消費することでクレジットの地産地消に取り組むとともに、豊かな森林を健全な姿で次の世代に引き継いでいくために森林保全にも取り組む。R&Dとしては、同社グループの有する知見・資産を活用し、バイオガスなど脱炭素やSDGsに貢献する研究開発を学術機関やスタートアップ企業などと推進する一方、水素やCO2からメタンやプロパンを合成するメタネーションやプロパネーション、回収・貯留したCO2を利用するCCUS※などによるカーボンニュートラルガスの社会実装にも貢献していく考えである。

※CCUS(Carbon dioxide Capture, Utilization and Storage):分離・貯留したCO2を利用すること。


Challenge3では、同社グループの事業活動におけるCO2排出量を早期に実質ゼロとし、取引先のカーボンニュートラルにも積極的に取り組む。具体的には、事業活動においてカーボンニュートラルガスやカーボンフリーでんき、社用車のカーシェアリングなどにより、2030年に同社がCO2排出量ゼロを目指すだけでなく、水平展開して2030年以降に同社グループ全体でもCO2排出量ゼロを達成する方針である。また、ペーパーレス化など様々な業務・サービスを電子化・効率化することによりCO2削減を推進するとともに、Web型サービスの拡充により顧客利便性の向上を図る。取引先と連携して環境負荷を軽減するとともに、「ちばSDGsパートナー」登録企業としてSDGsにも積極的に貢献する方針である。

(2) CX・DX戦略
「徹底した顧客視点」と「デジタルの活用」に基づき、相互に関連するCXの向上とDXの推進を一体として取り組むことで、顧客に“新しい価値”を提供することを目指す。CX・DX戦略はAction Planが3つあり、Action Plan1では、ガス事業の強み(対面接点)とデジタル技術(非対面接点)での心理的・情緒的価値を創出する。Action Plan2では、人的資本の強化と業務の効率化を推進し、Action Plan3では、デジタル技術活用の基盤を整備・進化させる。

具体的施策としてAction Plan1では、スタッフを機動的に誘導する仕組みを整備して顧客ニーズへの即応体制を構築し、顧客の声をデータ分析・活用し、顧客対応力のレベルアップを図る。顧客の声の真意をくみ取り、抜本的な課題解決・対応力の向上につなげる。ポイントの使い道の充実など、同社を長く利用するロイヤルカスタマーへのポイント還元策を拡充する。SNSや会員サイトなどと連携し、シームレスかつ最小タップ数で利用できるようWebサービスの利便性を強化する。データを徹底活用し、顧客ごとのニーズに合った商品・サービスを提供するとともに、データドリブン経営を実現することで意思決定を早める。このように様々なくらしのシーンに貢献することによって、“顧客のかかりつけ”としてブランド力を強化する。

Action Plan2では、人材を重要な資本と捉え、価値の最大化に向けた「人への投資」を強化する。交流を促すスペースの新設やフリーアドレスの拡大、多様な働き方・テレワークの推進などによりコミュニケーションの活性化に取り組み、アイデアや業務変革に向けた気付きを創出する一方、ワークライフバランスを高めて従業員ロイヤリティを向上させる。経営戦略と連動した人材戦略を策定し、個々人のマインドチェンジにつなげる。前例踏襲の見直しやデジタル技術により業務をシンプル化することで既存業務を徹底的に見直すとともに、ペーパーレス化や電子化により働き方を変革することで“新しい価値”を提供する。

Action Plan3では、基幹システムの刷新によってシステムの拡張性や柔軟性を向上させ、新たなITインフラを構築してシームレスな情報連携を実現する。デジタル基盤を整備・進化することで、同社グループの総合力をスムーズに最大限発揮し、より多くのサービスを早期に届けることを目指す。

さらに、CX・DX戦略を積極的に推進するため、専門組織を設立してグループ全体の意思統一を図り、各社の課題を解決する。また、役割別に備えるべき能力を整理して適切な教育を実施し、全従業員をDX人材化することでデジタル技術を適切に活用する。これにより、2030年までに会員サイト登録件数40万件、生産性向上30%以上(2021年比ガス事業1人当たり顧客件数)、ペーパーレス化は2024年までに50%、2027年までに100%削減、DX投資額は累計で60億円を実現する方針である。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)《HN》

関連記事