相場展望5月23日号 米国株: 「FRB」は利下げに慎重 vs 「株式市場」は利下げ期待が明確 日本株: 自社株買いで日経平均が支えられる構図、6月3週まで続くか

2024年5月23日 11:17

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■I.米国株式市場

●1.NYダウの推移

 1)5/20、NYダウ▲196ドル安、39,806ドル
 2)5/21、NYダウ+66ドル高、39,872ドル
 3)5/22、NYダウ▲201ドル安、39,671ドル

【前回は】相場展望5月20日号 米国株: NYダウは好決算と利下げ観測が強まり4万ドル突破 日本株: 株式相場の需給は弱い展開が続く可能性がある

●2.米国株 : 「FRB」は利下げに慎重 vs 「株式市場」は利下げ期待、が明確に

 1)ビットコイン、ミーム株が急騰⇒米株の熱狂
  ・米国株は「熱狂の渦」のなかにあると思われ、警戒したい。
  ・熱狂の渦は、ビットコインやミーム株の急伸に表れている。この熱狂はいずれ冷める。
  ・ビットコイン価格の推移
    5/1 58,856ドル ⇒ 5/21 71,249 ⇒ 5/22 69,863

 2)「FRB」は利下げに慎重vs「株式市場」は利下げ期待で対立
  ・FRB高官からは早期の利下げに慎重な発言が目立っている。パウエルFRB議長も5/1の記者会見で、インフレ率が目標の2%に向けて再び鈍化していくと確信できるようになるには「従来予想よりも時間がかかる」と語っている。半面、株式市場は利下げ期待で、折に触れ、株価上昇の理由付けをしてきた。

  ・5/22に、米連邦準備理事会(FRB)が4/30~5/1に開催した米連邦公開市場委員会(FOMC)の議事要旨が公表された。議事要旨には、
    ・インフレ鈍化予想を確信も「予想より時間がかかる」。
    ・金利引上げの可能性についても議論があった。
    ・一方、株式市場では利下げ期待が昨年後半から沸き起こっている。
     そして、FRB高官から利下げ慎重発言が止まると、株価上昇を狙った利下げ期待論を持ち出してきた。
     その利下げ時期予想を、今年3月⇒6月⇒9月へと後退させている。
    ・そして、5/22に議事要旨の公表を受け、利下げの早期実施期待に水をかけられ株式相場は利益確定売りが広がってNYダウは▲201ドル下落した。
     NYダウ ▲0.51%安、ナスダック総合 ▲0.18%安、S&P500 ▲0.27%安

 3)エヌビディアの好決算発表と5~7月見通しの良さで、ハイテクは好循環が波及予想
  ・2~4月期決算を発表、大幅な増収増益。(ロイター)
   売上は前年同期比3.6倍の260.44億ドル(約4兆8,000億円)、最終利益は前年同期比7.3倍増の148.81億ドル(約2兆3,300億円)。5~7月期売上見通しは予想を超え、株式分割も発表。売上高見通しは280億ドル±2%、予想は266.6億ドル。
  ・1株を10株に分割する計画を発表。
  ・株価は取引所引け後の時間外取引で+2.7%上昇。年初来で+90%以上上昇。
  ・エヌビディアの好決算発表で、半導体株全般に買いが波及すると予想。一方、NYダウが節目の40,000ドルを超えたことから、目標達成感反落するリスクが醸し出されることにも注目したい。

●3.あと数カ月、インフレ鈍化を確認する必要あり=クリーブランド連銀総裁(ロイター)

 1)「データは非常にまちまちで、利下げが適切となる状態に達するまでには、これまで想定していたよりも時間がかかるだろう」と語った。

●4.米家計、インフレになお苦悩、物価圧力緩和でも=FRB年次調査(ロイター)

 1)調査によると、最大の懸念事項は引き続きインフレで、物価上昇で家計が悪化したと回答した成人の割合は65%だった。
 2)2023年に家賃を滞納したことがあるとの回答は19%と、2022年の17%から上昇。家賃は+10%上昇して月額1,100ドルと、全体的なインフレ率を大きく上回った。

●5.米年内利下げ回数は3回未満、インフレ急速に低下せず=クリーブランド連銀総裁(ロイター)

 1)1~3月期に物価情勢を巡る進展が停滞したことを踏まえると、インフレリスクは高まった。

●6.インフレ率低下、持続可能かの判断は時期尚早=ジェファーソンFRB副議長(ロイター)

●7.インフレ指標に失望、当面引締め政策が必要=バーFRB副議長(ロイター)

●8.物価目標達成に向けた確信「時間がかかる」=アトランタ連銀総裁(ロイター)

●9.米4月中古住宅販売は前月比▲1.9%減の414万戸、住宅価格上昇が足かせに(ロイターより抜粋

 1)市場予想は年率換算で421万戸だった。
 2)住宅ローン金利と住宅価格の上昇が需要を圧迫し、予想に反して減り、2カ月連続での減少となった。
 3)なお、販売された住宅の約3分の2は1カ月未満で買い手が決まっており、住宅供給が依然として逼迫していることが示された。

■II.中国株式市場

●1.上海総合指数の推移

 1)5/20、上海総合+17高、3,171
 2)5/21、上海総合▲13安、3,157
 3)5/22、上海総合+0.57高、3,158

●2.中国、資本流出が4月に▲285億ドル、米中金利差が影響し2016年以来の規模(ブルームバーグ)

■III.日本株式市場

●1.日経平均の推移

 1)5/20、日経平均+282円高、39,069円 
 2)5/21、日経平均▲122円安、38,946円 
 3)5/22、日経平均▲329円安、38,617円 

●2.日本株 : 自社株買いで日経平均は支えられる構図

 1)5/22は半導体株に売り
  ・米半導体株の軟調を受け、東エレクやスクリンが反落。

 2)日銀による金利上昇に警戒感
  ・日本国債10年債利回りの推移
   5/22に1.000%に上昇し、2013年5月以来となる約11年ぶりの高水準。
  ・金利上昇は、銀行株と保険株には業績向上期待が増す。しかし、借入金が多い不動産株などには逆風が吹くと思われる。

 3)日経平均はシーソー状態が続き、方向感なし
  ・日経平均はボックス圏での値動きとなている。
  ・上に抜けるにも、下に落ちるにも、決め手に欠ける展開に置かれている。

 4)自社株買いは記録的で日経平均を支えており、6月第3週まで継続を予想
  ・事業会社の株買いが5月2週(~5/10)に+1,3 69億円と大幅買い越しが目立つ。事業会社の買いは、自社株買いも入っている。最近の3月決算会社の決算発表時に多くみられた記録的な自社株買い決議が実行が実行されているもよう。この自社株買いの流れは6月株主総会の前週まで続くと思われる。
  ・年初からの事業会社による株買いの累計残高は5/10現在で1兆1,081億円。

 5)本日5/23の日経平均は反発と予想
  ・日経平均は5/21~22で▲452 円安となり、その自律反発気運があるところに、エヌビディアの時間外取引での株価上昇が波及するため、5/23は上昇すると予想。
  ・日経平均はボックス圏にあり、今回のシーソーは上がる局面とみる。エヌビディア効果から半導体関連株が主体となって買われると予想する。

●3.東京海上、政策保有株をゼロへ、今年度から売却を加速させる方針(NHK)

●4.経団連・大手企業89社の賃金上昇は+5.58%増(FNN)

●5.大手電力10社、6月使用分から値上がり、東京電力は前月比+392円値上げ(日テレ)

 1)政府が物価高対策として続けていた補助金が5月で終了することが影響。

■IV.注目銘柄(投資は自己責任でお願いします)

 ・2726 パル      業績堅調
 ・4911 資生堂     業績回復基調
 ・7564 ワークマン   業績堅調

著者プロフィール

中島義之

中島義之(なかしま よしゆき) 

1970年に積水化学工業(株)入社、メーカーの企画・管理(財務含む)を32年間経験後、企業再生ビジネスに携わる。 現在、アイマックスパートナーズ(株)代表。 メーカーサイドから見た金融と企業経営を視点に、株式含む金融市場のコメントを2017年から発信。 発信内容は、オープン情報(ニュース、雑誌、証券リポート等々)を分析・組み合わせした上で、実現の可能性を予測・展望しながらコメントを作成。http://note.com/soubatennbou

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