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日銀に30兆円超の含み益、「利益確定」はできるのか?
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投資行動はその成否はともかく、いずれかの時点で確定させる。儲かった時に浮かれることも、損失を計上してしょぼくれることもあるが、膨大な含み損を抱えた状態を続けるという選択は自重気味に「塩漬け」と表現されるから、結果は三様といったところだ。
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日銀は株式相場が想定した基準(2%)を超えて下落しないように「下支え」を目的にしただけだから、膨大な利益を生むことになることは想定もしていなかっただろう。
株式相場が上昇を続ける過程で反落して調整に入る市場のメカニズムに対抗して「下支え」して来たから、株価は無邪気に上昇してインフレ目標の達成と賃上げ水準の上昇という願ってもない状況が生まれた。
もう株価の動きに目を光らせる必要が無くなったので、大規模緩和の解除と共にETFの買い入れも終了した。現在までに購入に充てられた資金(簿価)が37兆円なのに対して、時価額が70兆円だから33兆円の含み益が生まれている。
大規模緩和が終了したのだからETFの勘定も精算するのが筋だが、日銀が時価額70兆円にも及ぶETFを売却する計画が明るみに出ただけで、東証のプライム市場は暴落して壊滅状態に陥るだろう。
19日の記者会見で植田和男総裁が、”異次元緩和で膨らんだ(日銀の)バランスシートの縮小をすべき”としつつも、「(時期や内容を)申し上げられる段階でない」と答えたことに対応の難しさが滲み出ている。
日銀が「売却を決めたようだ」という思惑が証券市場に広がっただけで、投資家は動揺して東証プライム市場に上場されている優良企業の株式に、猛烈な売り圧力が掛かる。「クジラ」に例えられていたETFの買い入れ資金が、売却に反転するだけで恐怖が東証を支配するから、処分方法を議論することすら不可能だろう。
では、日銀は30兆円を超える含み益を「塩漬け」ならぬ「砂糖漬け」にするしかないのだろうか。
東証プライム市場全体の時価総額が943兆円(2月22日)であるのに対して、日銀の保有するETFの時価総額が約70兆円だ。日銀は日本の上場優良企業の7.4%の株式を持つ大株主になってしまった。
金融庁はかねて、「責任ある機関投資家の諸原則」として、スチュワートシップ・コードを推奨している。投資先企業の価値向上により受益者に最大のリターンをもたらすために、機関投資家に投資先企業との建設的な対話を促す意図がある。
もちろん、日銀は投資をしている訳ではないので、投資先企業と対話をすることはなかったし、今後も対話をすることはないだろう。その結果、スチュワートシップ・コードを無視して大株主の役割を果たせないという状態が続く。国家の金融という枠組みの中で、協力しあうべき日銀と金融庁のスタンスが違ってしまう。
日銀が存在理由としている「金融システムの安定に貢献」して、モラルハザードを引き起こすことになる、これほどの皮肉はない。(記事:矢牧滋夫・記事一覧を見る)
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