「take the biscuit」ってなに? イギリス英語のスラング特集 (27)

2024年2月12日 09:04

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 「take the biscuit」というフレーズを見て、どんな意味か想像できるだろうか?直訳すると「ビスケットを取る」となるが、実はビスケットとは全然関係ない文脈で使われるイギリス特有のスラングなのだ。

【前回は】「splash out」と「swot」の意味とは? イギリス英語のスラング特集 (26)

 使われているのは誰でも知っているやさしい単語なのに、知らなければ想像もできない意味を持つこの「take the biscuit」というスラングについて、その意味と由来、用例を詳しく解説しよう。

■Take the biscuit

 「take the biscuit」とは、驚くほどイライラさせる行動や、信じられないほどひどい行為を強調するためのスラングである。

 「take the biscuit」はもともと「勝つ」、「1番になる」、「1等賞を取る」などの意味を持つイディオムだった。その由来は、19世紀のアメリカにさかのぼる。

 当時、アメリカで行われていた「Cakewalk」という黒人のダンスコンテンストでは、優勝賞品がケーキだったそうだ。そこから、「優勝する」、「1等賞を取る」という意味で「take the cake」というフレーズが生まれた。

 それがイギリスに渡って、「cake」がよりイギリスらしい「biscuit」へと変化し、「take the biscuit」となったという(ちなみに、イギリス英語の「biscuit」はいわゆるクッキーを指す。「cookie」という単語を使うのは触感の柔らかいアメリカ風のもちもちしたクッキーに限る)。

 さらに、「勝つ」や「1番になる」という本来の意味が、時間とともに皮肉的な表現へと変化していった。他に類を見ないほど最低、最悪な行為、失敗ならば、それは悪い意味で1番と言える。こうした皮肉を込めたニュアンスがあって、非難や驚きを表すフレーズとして「take the biscuit」が定着したと考えられている。

 ともかく、現在のイギリスでは、誰かが驚き呆れるような行動をしたときや、あまりにも困惑させるようなことをしたときに、この表現が使われる。どのように使うのか、いくつか例を確認しておこう。

 When I heard he showed up to the wedding in casual clothes, that really took the biscuit!
 (彼が結婚式にカジュアルな服装で現れたと聞いたとき、本当に驚いたよ!)

 She's always late, but arriving three hours late to her own party takes the biscuit.
 (彼女はいつも遅刻するけど、自分のパーティーに3時間遅れてくるなんてさすがにひどい)(記事:ムロタニハヤト・記事一覧を見る

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