相場展望12月25日号 米国株: 政策金利▲1%低下期待で株価高騰、期待が剥げる可能性 日本株: 日経平均は25日移動平均線に収れんし、勢いが低迷か

2023年12月25日 13:19

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■I.米国株式市場

●1.NYダウの推移

 1)12/21、NYダウ+322ドル高、37,404ドル(日経新聞より抜粋
  ・米連邦準備理事会(FRB)が2024年に利下げに転じ、米景気を支えるとの期待が根強い。一部銘柄の好決算を受けて半導体関連株が上昇したのも投資家心理の好転につながった。

【前回は】相場展望12月21日号 米国株: 年末の警戒モードが高まり、「高値更新の連騰」が止まる 日本株: 日銀の大規模緩和策の「修正」「維持」で揺れる円・日経平均

  ・NYダウは連日で高値更新が続いた後、12/20に▲475ドル安と大きく下げた。買い遅れていた投資家が主力株を中心に押し目買いを入れた。7~9月期の米実質国内総生産(GDP)確報値にあわせて12/21に発表された同期の個人消費支出(CPI)物価指数で、エネルギーと食品を除くコア指数は前期比年率で+2.0%上昇と、前回+2.3%上昇から下方修正された。FRBが重視する同指標がインフレの鈍化を示し、2024年の利下げ期待を強めたとの見方があった。

  ・NYダウ構成銘柄ではないが、12/20発表の四半期決算が市場予想を上回った半導体メモリーのマイクロンが大きく上昇した。エヌビディアやAMDのほか、インテルにも買いが及び、投資家心理を支えた。

  ・NYダウは上げ幅を一時+40ドル余りに縮める場面があった。相場の過熱感は解消しておらず、利益確定や持ち高調整の売りが出た。

  ・個別銘柄では、顧客情報管理のセールスフォースやドラッグストアのウォルグリーンズが上昇した。電気自動車のテスラやネット検索のアルファベットも買われた。半面、ネットワーク機器のシスコシステムズとスマートフォンのアップルが売られた。

 2)12/22、NYダウ▲18ドル安、37,385ドル(日経新聞より抜粋
  ・前日夕に決算を発表したスポーツ用品のナイキが急落し、NYダウの重荷となった。半面、朝発表の11月の米個人消費支出(PCE)物価指数がインフレ鈍化を改めて示し、米連邦準備理事会(FRB)が2024年に利下げするとの観測が相場を支えた。

  ・NYダウは週間で+80ドル高となり、8週連続で上昇した。2019年2月にかけて、9週連続以来の記録となる。

  ・四半期決算と併せて通期の業績予想の下方修正を発表したナイキは▲12%弱下げ、指数を押し下げた。NYダウは週前半まで連日で高値更新が続いた後で、利益確定や持ち高調整の売りも出やすかった。

  ・NYダウはプラス圏で推移する場面があった。11月のPCE物価指数は前年同月比+2.6%上昇し、前月比では▲0.1%下落と、2020年4月以来のマイナスとなった。食品とエネルギーを除くコア指数の前年同月比の上昇率は+3.2%と前月+3.4%から縮小し、ダウジョーンズ通信がまとめた市場予想+3.3%も下回った。インフレ鈍化を背景に、FRBが早期に利下げするとの期待を高めた。

  ・インフレ懸念が和らぐ一方、米経済の底堅さを示す指標が相次いでいる。12/22発表の11月の耐久財受注額は前月比+5.4%増と、市場予想+2.0%以上に伸びた。ミシガン大学が発表した12月の消費者態度指数(確定値)は69.7と、速報値と市場予想(ともに69.4)を上回った。「経済のソフトランディング(軟着陸)観測が高まっていることが相場を支えている」との声が聞かれた。

  ・米国では12/25はクリスマスの祝日で休場となる。12/22は連休を取る市場関係者が多かった。薄商いとなる中、値動きが不安定になりやすいとの指摘があった。

  ・個別銘柄では、映画・娯楽のディズニーや航空機のボーイングが売られた。スマートフォンのアップルや顧客情報管理のセールスフォースも安い。ネット検索のアルファベットが上昇し、マイクロンやクアルコムなど一部の半導体関連株が前日に続いて買われた。一方、半導体のインテルや小売のウォルマートが高い。バイオ製薬のアムジェンや製薬のメルクなどディフェンシブ株も買われた。電気自動車のテスラやネット通販のアマゾンは下落した。

●2.米国株:2024年春の利下げ観測で株価は高値圏、利益確定売りの機会!

 1)米経済は力強く、景気後退よりもソフトランディング観測が強まる
  ・米新規失業保険申請件数は20.5万件と予想を下回り、米経済の力強さを示す。

 2)利下げ観測が根強く、米株を取り巻く環境は「楽観的」で高値圏に位置する
  ・2024年3月の利下げ観測が出て、米株式相場は楽観的で高値圏で推移している。米経済も好調だ。

 3)早期利下げは、来年、うち砕かれる、と予想する
  ・このため、FRBはインフレ目標2%を達成するため、早期利下げをするとは思えない。

 4)米株式市場は「楽観的すぎる」
  ・2024年に▲0.25%の利下げを4回、計▲1%の政策金利低下観測がある。この金利低下を株式市場が織り込んで、高値圏にある。
  ・NYダウのチャートは、ロケットのように3段上げをして、4段目点火を模索中のようにみえる。果たして、4段目の着火成功となるか、要注目したい。
  ・米市場はクリスマス・年末年始休暇に入って、市場エネルギーは限定的とみる。
  ・NY金価格は歴史的な高値にあり、リスク回避的な動きで金が買われていると、思う。
  ・来年は、中国経済の減退、中国デフレの拡散期に入ると予想する。米インフレの鈍化には、中国デフレの進展は好材料となる。しかし、米国経済にとって輸出の鈍化となる。
  ・米インフレ率の鈍化もそろそろ落ち着きを見せ、これ以上の物価低下は望めなくなると推測する。家賃上昇が、マイナスに転換するとは思えないからだ。原油価格の低下も一服した。
  ・米FRBの政策金利低下期待は、「裏切られる」可能性がありそうだ。
  ・年末から年始にかけての株式相場の高値圏で、利益確定売りが賢明とみる。

 5)12/25は祝日のクリスマスで、市場は休場

●3.米11月コアPCE(個人消費支出)は前年比+3.2%、予想+3.3%・10月+3.4%を上回る(フィスコ)

●4.米7~9月期GDP確定値は前期比年率+4.9%と、予想+5.2%から下方修正(フィスコ)

●5.米・先週分新規失業保険申請件数は20.5万件と、予想21.5万件から改善(フィスコ)

●6.イエメンのフーシ派の船舶攻撃で150隻以上に影響、物流混乱し物価上昇に懸念(NHK)

 1)輸送ルートの変更などで、コンテナ運賃が2倍以上に跳ね上がっている航路もあり物流の混乱や物価上昇を懸念する声も出ている。

■II.中国株式市場

●1.上海総合指数の推移

 1)12/21、上海総合+16高、2,918(亜州リサーチより抜粋
  ・自律反発狙いの買いが優勢となる流れとなった。

  ・上海総合指数はこのところ下落基調を強め、足元では約1年2カ月ぶりの安値水準に落ち込んでいた。12/21も朝方は安く推移していたが、前引けにかかてプラスに転じた。

  ・当局の相場テコ入れスタンスも意識された。「国家隊」と呼ばれる政府系ファンド・中国国新控股有限公司は今月、ハイテク系中央企業で構成されるインデックスファンドを連日で買い増しした経緯がある。

  ・また、中国経済の先行き不透明感が根強い中、当局の景気支援策に対する期待感も改めて高まった。

  ・当局は預金準備率の引下げなど金融面での支援を継続するとの観測も続いている。

  ・業種別では、ハイテクの上げが目立ち、不動産もしっかり。不動産は、当局の支援策に期待感があり、中国住宅都市農村建設部の担当者はこのほど、分譲型「保障性住宅」(低中所得者向け住宅)の建設推進方針を明らかにしてる。また、中国人民銀行(中央銀行)は少なくとも1兆人民元(約20兆1,000億円)の低金利資金を都市部の再開発、保障性住宅の建設などに投入する模様・・などと伝わった。ゼネコンや建機のインフレ建設も物色され、消費関連・素材・医薬なども買われた。半面、証券は冴えず、エネルギー・公益・メディア・娯楽も売られた。

 2)12/22、上海総合▲3安、2,914(亜州リサーチより抜粋
  ・投資家の慎重なスタンスが強まる流れとなった。

  ・中国のネットの締め付けや、米中対立の激化などが嫌気されている。ネット締め付けに関しては、オンラインゲームの管理を強化する方針が伝わっている。国家新聞出版署は12/22、「オンラインゲーム管理弁法」の草案を発表。ゲームの支出や利用時間の拡大を規制し、ユーザーの過剰消費を誘発することを禁止するという。

  ・米中関係を巡っては、米メディアが12/21、電気自動車(EV)を含む一部の中国製品に対し、米バイデン政権が関税の引上げを検討している模様、と報じた。ほか、米商務省は12/21、安全保障上のリスクを減らすため、旧世代半導体を巡り中国からの調達を調査すると発表している。他方、中国商務省は12/21、EV用モーター製造などに欠かせないレアアースの関連技術について、輸出規制を強化すると発表した。

  ・業種別では、ゲーム関連が急落した。業界関係者は上述した弁法について、現時点で草案の段階だが、実際に実施された場合にはオンラインゲーム会社へのインパクトが大きく、収益力に影響を及ぼすとみている。ハイテクも冴えず、不動産・消費関連・公益・証券などが売られた。半面、エネルギー関連はしっかり。素材・インフラ関連・海運・銀行は買われた。

●2.「中国衰退論」摘発を示唆、国家安全部門が経済でも強権(日経新聞)

●3.中国でゲーム規制強化へ、関係企業の株価暴落(Record China)

 1)大手2社だけで▲8.2兆円が「蒸発」。

■III.日本株式市場

●1.日経平均の推移

 1)12/21、日経平均▲535円安、33,140円(日経新聞より抜粋
  ・前日まで日経平均が大きく上げていた中、12/20の米株式相場が大幅安となり、幅広い銘柄に利益確定売りが優勢となった。12/21の東京外国為替市場で円相場が円高・ドル安方向に振れ、輸出関連銘柄を中心として押し目買いも入りにくかった。下げ幅は▲600円に迫る場面もあった。

 ・12/20の米株式市場でNYダウは10営業日ぶりに反落し、下げ幅は約9カ月ぶりの大きさとなった。東京市場ではファストリや東エレクなど指数寄与度が大きい銘柄を中心に売りが膨らんだ。日銀の金融緩和姿勢を追い風に日経平均は前日までの2日間で+900円強上げて年初来高値を上回る場面もあった。最近の急ピッチな上昇を受け高値警戒感が強まっていたのも売りにつながった。

  ・12/20の東京外国為替市場で円相場が円高・ドル安方向に振れ、日経平均が安値圏にあっても押し目買いを入れる動きは限定的だった。クリスマスシーズンで休暇入りする市場参加者が多く、売り一巡後は海外投資家を中心に積極的な売買が手控えられやすかった、との声も聞かれた。

  ・個別銘柄では、アドテスト・テルモに売りが出た。トヨタの売りも目立った。一方、レーザーテクは上場来高値を更新した。スズキ・資生堂も上げた。

 2)12/22、日経平均+28円高、33,169円(日経新聞より抜粋
  ・12/21の米株高の流れを引き継いだ買いが優勢となった。ただ、朝高後は週末とあって利益確定売りや戻り待ちの売りに押され、次第に上げ幅を縮小した。業種別では銀行や海運の上昇が目立った。

  ・12/21の米株式市場で主要3指数が上昇したことに加え、フィラデルフィア半導体株指数(SOX)が急伸したことで投資家心理が上向いた。寄り付き直後は東エレクなど値がさの半導体関連銘柄が日経平均の上げを主導し、上げ幅は一時+200円を超えた。

  ・朝方に円相場が対ドルで強含む場面があったほか、新規の材料にも乏しく、主力株の上値は総じて重かった。「足元の堅調な米株式相場が支えとなっている一方、円高に対する警戒感は強く、積極的に上値を追う意欲を持つ投資家が少ない」との声があった。

  ・個別銘柄では、資生堂・スズキ・信越化・三菱UFJ・川崎汽・TOPPANが買われた。一方、ネクソンが大幅安となり、トヨタ・住友不も売られた。

●2.日本株:日経平均は25日移動平均線に収れんし始め、勢いが低迷

 1)日米ともに12/22は値動きが小動き
  ・NYダウ▲18ドル安
   日経平均+28円高

 2)円相場は中期的には「円高」を指向するとみる
  ・円相場の推移 12/18  12/20 12/22
     (対ドル)142.27円 143.74 142.33

  ・日銀は、12月の金融政策決定会合では「現状維持」としたが、植田・日銀総裁は「国会でチャレンジブル」と発言している。このことから、いずれ政策金利は引上げられると予想する。

  ・したがって、日米金利差が縮小し、円相場は「円高」に動くだろう。

 3)円高は企業業績に負
  ・貿易立国を支える自動車などの輸出関連企業は、為替差益が望めず、業績のマイナス要因となる。

 4)日経平均は25日移動平均に収れん
  ・25日移動平均線の推移 12/18   12/19   12/20  12/21  12/22
   25日移動平均線    33,132円 33,1583 3,1973 3,1823 3,172
   日経平均(終値)   32,758円 33,2193 3,6753 3,1403 3,169
        差異    ▲374  ▲61    + 478 +42  +3
  ・25日移動平均線が「抵抗線」と意識され始め、市場エネルギーの落ち着き示唆

 5)春から日本株上昇を牽引してきた「欧州マネー」の再増加は期待薄
  ・欧州マネーは、欧州各国のインフレ懸念で、比較優位の日本株に流入。原油高を背景に欧州に集まるオイルマネーも、日本市場に流入。
  ・しかし、欧州経済の持ち直しや、原油価格の低下もあり、8月後半から資金が逆流し始めた。

●3.田辺三菱、中国の連結子会社を約73億円で売却、競争環境激化で(時事通信)

■IV.注目銘柄(投資は自己責任でお願いします)

 ・2413 エムスリー 業績堅調。

著者プロフィール

中島義之

中島義之(なかしま よしゆき) 

1970年に積水化学工業(株)入社、メーカーの企画・管理(財務含む)を32年間経験後、企業再生ビジネスに携わる。 現在、アイマックスパートナーズ(株)代表。 メーカーサイドから見た金融と企業経営を視点に、株式含む金融市場のコメントを2017年から発信。 発信内容は、オープン情報(ニュース、雑誌、証券リポート等々)を分析・組み合わせした上で、実現の可能性を予測・展望しながらコメントを作成。http://note.com/soubatennbou

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