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ギリシャ、格上げで危機は去ったのか?
●ギリシャが投資適格級に格上げ
格付け会社のS&Pグローバルは10月20日、ギリシャの格付けを2010年の債務危機以来初めて、投資適格級に引き上げた。
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S&Pは経済改革と予算改革、EUからの資金援助で、2026年までの堅調な経済成長ができると予想している。
2010年にはギリシャに端を発し、周辺国を巻き込むユーロ危機にまで発展したが、ギリシャは危機を脱し、欧州経済は安定へと向かうのだろうか?
●ギリシャのデフォルトも噂された2010年のユーロ危機
2009年10月に起きたギリシャの政権交代によって、国家財政の粉飾決算が発覚した。
当時、経済は観光業に依存しており、労働人口の4分の1が公務員で、55歳から受給できる手厚すぎる年金制度などが財政を圧迫していた。
新政権は財政健全計画を発表したが、あまりに楽観的な内容で他国からの信用が失墜し、ギリシャ国債は格下げされることとなった。
ギリシャへ多額の融資をしていたドイツの国債価格も下落し、同じような財政不安を抱えるポルトガルやイタリアなども大きく国債が売られ、ユーロも大幅に下落した。
ギリシャらユーロ圏で財政が厳しい国々を現すPIIGS(ポルトガル、イタリア、アイルランド、ギリシャ、スペイン)という言葉も生まれた。
●危機は去ったのか?
高インフレによって、名目GDPが増幅したことによって、公的債務の圧縮につながったことは確かではある。EUの厳しい緊縮財政を受け入れたことも奏功した。
他のユーロ圏の国々が成長できない中、中国の資本投下や民営化などで経済成長はしている。だが実質GDPはピーク時に比べると低いままで、経済は縮小したままではある。
フィッチなど他の格付け会社も徐々に格上げはしているが、投資適格にまでは至っていない。
ECB(欧州中央銀行)は高インフレ対策で利上げを続けてきたが、景気悪化が鮮明となりつつある今、利上げを終了する可能性もある。
これまでPEPP(パンデミック緊急資産買い入れプログラム)では特例で買い入れ対象だったギリシャが、今後さらに他の格付け会社も格上げとなれば、PEPPが終了しても買い入れが続けられる。
利上げの終了や、債券市場の状況によってはどうなるかは分からないが、当面は順調に回復しそうではある。(記事:森泰隆・記事一覧を見る)
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