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労働生産性向上からの賃上げへの期待
厚生労働省は、9月29日に「令和5年版 労働経済の分析」を公表した。その中で、1990年代以降、名目労働生産性と名目賃金はほぼ横ばいで推移しており、賃金は生産性ほど増加していないことが指摘されている。
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労働生産性については、日本生産本部の調査で、先進国の中で日本は最下位という結果も出ている。
日本の労働生産性の低さについては各種の研究がされており、バブル以降の経済の低迷、長時間労働の常態化、非効率な業務、客観的な成果に紐づかない評価制度等が理由と言われている。
しかし先の労働経済の分析においては、“物価の影響も考慮した実質でみると、1人当たり実質労働生産性は他国並みに上昇している“ことが述べられており、日本は一概に生産性が低いとは言えない。
では何が問題かと言うと、労働生産性を上げることで賃金の上昇につなげる動きが弱いことである。
労働生産性と賃金は密接な関係があり、生産性が向上し付加価値が増加すれば、賃金に分配されることになる。しかし、実質労働生産性が他国と同程度と言っても、単純に労働時間が減少したことが背景にあると想定され、賃金アップにつながるものではない。
先進国で最下位とされる労働生産性の改善には、労働生産性の算出式の分子であるGPDの上昇か、分母である労働投入量の減少が必要となる。
今年度からの賃上げの動きや、最低賃金の引き上げは生産率の改善に寄与するだろう。にわとり卵の議論ではあるが、賃金アップが労働者の意欲を刺激して付加価値向上につながる可能性がある。労働分配率の改善も伴えば、更に賃金アップにつながることが期待される。
また、労働生産性算出式の分母である労働投入量の減少については、働き方改革やDXの推進による業務効率化が欠かせない。
働き方改革は、労働時間を単純に減らすだけでなく、裁量権の見直しによる業務推進の迅速化や、何も決まらない長時間会議の撤廃といった、制度やルールの改善も不可欠だ。それと同時に、諸外国に比べ遅れているDXの適用を契機に業務全体の効率化を図ることも重要だ。
とりわけ重要なのは、やはり賃金であろう。持続的な賃上げにより消費の拡大を起こし、それが企業収支の改善につながれば、好ましい循環が生まれる。来春の賃上げ動向は、その行方を左右するはずだ。(記事:Paji・記事一覧を見る)
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