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AIの活用、固有リスクへの対応が拡大の鍵
AIの活用が急速に進展している。その能力により人間の仕事を奪うとも言われており、単純な反復作業だけでなく、接客や知的労働もこなすレベルにある。その適用範囲は広く、自動運転や無人店舗運営に代表される次世代ビジネスや、売上・需要予測といった高度な分析にも用いられる。身近なところでは、企業に問い合わせる際のチャットや、iPhoneのSiriにも活用されている。
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一方で、AI活用には従来では想定しなかったようなリスクも潜む。主なものとして、信頼性・安全性に関わるもの、公平性を損なうもの、説明可能性が挙げられる。
信頼性・安全性とは、人間に害を及ぼすようなアウトプットをAIが出すものである。過去には、マイクロソフト社が行った実験において「ヒトラーは正しい」といった発言をしたことや、アメリカのスタートアップが立ち上げたチャットサービスでベルギー人の男性が自殺に追いやられるという事件が起きている。
どちらのケースも、AIが忠実に悪意のあるデータや誤った学習をしてしまったことに起因し、信頼性・安全性を損なったものである。
公平性についても、差別や倫理を考慮していない学習をしてしまったことで、黒人をゴリラと判断したケースが過去にある。また、AIが導き出したアウトプットに説明性がなければ、自動運転や医療といった生死に関わる分野への適用が難しいだろう。
AIの普及に伴って、これらのリスクへの対応も進められている。国家レベルでは、AIによる弊害や悪用を防ぐため規制やガイドラインが制定されている。特に欧州では厳しい規制が定められており、話題の生成AIについても禁止事項への違反者には数十億円規模の罰金が課せられる規制が施行される予定だ。
企業レベルでも、AIガナバンスを制定する動きが進んでいる。2022年のPwCコンサルティングの調査では、約47%の日本企業(AI導入済/検討中の企業の部長職以上300名へのアンケート結果より)が、AIガバナンスに取り組んでいる。AIの活用拡大と並行して、AIガナバンスの適用は続くと見られている。
AI固有のリスク管理への対策が進むことで、AIの活用は更に進むだろう。日本は、活用については欧米と大差はないが、ガバナンス面で遅れていると言われる。どちらか一方ではなく、車輪の両輪となることで、日本におけるAIの拡大が加速することになる。(記事:Paji・記事一覧を見る)
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