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地球と同じ大きさなのに、金星の環境が全く異なる原因は? 米サウスウェスト研究所ら
若い表面を示す金星写真 (c) NASA/JPL[写真拡大]
地球と金星の直径はそれぞれ12,742km、12,104kmでその差は5%程度しかない。だが、1日の長さは金星では約243日と途方もなくかけ長く、火星(24時間37分)のほうが圧倒的に地球に近い。これらの太陽系岩石型惑星3兄弟は、よく似た点と異なる点を持ち合わせた個性派揃いなのだ。
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地球環境と火星環境が異なる原因は、大きさの違い(火星の直径は地球の半分程度)で多くを説明できるが、直径が地球に酷似した金星の環境がなぜ地球と似ても似つかない状況になってしまったのかについては、説明が難しい。
この金星に対する素朴な疑問に対する明快な答えが、米国サウスウェスト研究所の科学者を中心とする研究チームによって明らかにされた。研究詳細の論文は、米科学論文サイト「Nature Astronomy」で公開されており、研究チームの一員としてイェール大学の是永淳教授も名を連ねている。
金星は地球と比べると、表面年齢が2億歳ないし10億歳とかなり若い。この原因も科学者にとっては謎であった。
金星には地球と違い、強い磁場が存在しない。それにもかかわらず、金星表面では地球の火山数の60倍にも及ぶ火山が活発に活動している。地球では強い磁場と、月という地球に比べて不釣り合いなほどに大きい衛星の存在が、活発な火山活動の原動力となっているが、金星における火山活動の原動力については謎であったのだ。
今回の研究では、金星の表面年齢が若く、地球よりも火山活動が活発な原因として、金星がより太陽に近い軌道を公転していることを挙げている。これにより、金星誕生初期に金星へ衝突を繰り返してきた微惑星の衝突速度は、地球に衝突する微惑星の速度よりもかなり大きくなった。金星衝突時、その表面における温度上昇は凄まじく、金星表面の82%を溶解させ、内部がこれによってかなり加熱されたと、結論付けている。
地球は内部温度が高く、表層は冷めきっているのに対して、金星は表層が非常に高温なまま保たれているために、表面年齢が若いままで居続けられたのであろう。表層の高温状態は、金星の過剰な温暖化ももたらし、生命誕生を困難にしているのかもしれない。(記事:cedar3・記事一覧を見る)
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