メガバンクで競う、生成AIの活用

2023年7月2日 15:07

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 メガバンクで生成AIの活用が進んでいる。情報漏洩等のリスクがあるとされる生成AIであるが、セキュリティに厳しい銀行業界でも導入が進められている点が興味深い点である。

【こちらも】生成AIに関する日本企業の動き

 三井住友フィナンシャルグループでは、日本総研、NEC、マイクロソフトと組んで文章の作成や要約、翻訳、ソースコードの生成に用いることを想定し、それによりお客様への迅速な案内等でサービスレベルを上げることを目指している(出典:三井住友フィナンシャルグループ)。

 三菱UFJフィナンシャル・グループは生成AIの行内環境を2024年度にも整備し、文書作成や要約、法律に関する問合せ対応等、110の業務に導入し行員の業務効率化に活用する方針だ。

 また、みずほフィナンシャルグループは、システム開発において設計書の改善やソースコードの自動生成等で生成AIを活用することを、富士通と共同で実証実験することを明かしている(出典:みずほフィナンシャルグループ)。

 先進技術の活用は乗り遅れると競合に大きく遅れを取るリスクがあり、先んじれば先行者利得を得られる可能性もあるため、各社とも競って生成AIの使い道を探っている段階である。

 各社競う一方で、活用に向けた共通の指針をまとめる動きもある。メガバンクや保険会社が会員となっている金融データ活用推進協会は、情報漏洩等のリスクを防ぎつつ生成AI活用ノウハウ共有を図る業界横断の指針を作成する。

 活用に向けた動きが加速しているが、生成AI導入に向けて大きな投資も発生する。生成AIの代表格であるChatGPTは個人向けに無償でサービスを提供しているが、企業が生成AIを使うにはライセンス等の費用が発生する。業務効率化を狙うとしても、費用の大きさを考えれば当面のROIは高くないことが想定される。

 それでもメガバンクが生成AI活用に取り組むのは、その潜在力の高さを誰もが感じているからだろう。ChatGPTを使ったことがある人ならば、そのパフォーマンスに驚いたはずだ。使い方によっては、単なる業務効率化に止まらず、特定の業務では人手を全くかける必要がなくなり行員代替となる可能性もある。

 銀行に限った話ではないが、そのインパクトの大きさや浸透の速さから、いずれは個人の端末で当たり前かつ意識されることなく使われている状況となるだろう。(記事:Paji・記事一覧を見る

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