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相場展望6月5日 米国株: 債務上限問題解決が招く「金利上昇」「通貨量縮減」⇒株安 日本株: テクニカル指標では語れない「上げ相場」 中国: 期待が高かった中国経済回復に一服感
■I.米国株式市場
●1.NYダウの推移
1)6/1、NYダウ+153ドル高、33,061ドル(日経新聞より抜粋)
・米下院は5/31夜、連邦政府の債務上限を停止する法案を可決した。今後の上院での審議についても、過半数を占める民主党のシューマー院内総務が採決を急ぐ姿勢を見せている。米債務上限問題への警戒感が一段と和らぎ、買い優勢となり、3営業日ぶりに反発した。
・米政府の資金繰りが行き詰まるとされる6/5が近づくなか、シューマー氏は6/1、法案を通すまで上院の議事を続ける方針を示した、と伝わった。
・法案に不満を抱える議員が民主・共和の両党にいるものの、議会指導部が法案成立を急いでおり、米国債のデフォルト(債務不履行)といった最悪の事態は避けられるとの見方が広がっている。
・5月の米サプライマネジメント協会(ISM)製造業景況感指数は46.9と、前月47.1から悪化し、好不況の分かれ目である50割れが続いた。景況感の低迷が、過度な金融引締めへの懸念を和らげ、相場の支えとなった面もある。
・取引開始直後は、下げ幅が▲200ドルを超える場面があった。朝発表の5月ADP全米雇用リポートで、非農業部門の雇用者数は前月比+27.8万人増と、市場予想+18万人増を上回った。週間の新規失業保険申請件数も市場予想ほど多くなかった。堅調な雇用指標を受け、金融引締めが長引くとの観測が相場の重荷となった。
・クレジットカードのアメリカンエクスプレス、建機のキャタピラー、ホームセンターのホームデポが上げた。半導体のエヌビディア、交流サイトのメタも上げた。一方、前日に2~4月期決算を発表した顧客情報管理のセールスフォースが下落。バイオ製薬のアムジェン、金融のゴールドマンサックスが売られた。
【前回は】相場展望6月1日 米国: 債務上限問題の妥結で、米景気後退リスク高まる、格言「5月に売れ」は当たる 日本: 外国人買いによる上昇相場も「胸突き八丁」
2) 6/2、NYダウ+701ドル高、33,762ドル(日経新聞より抜粋)
・米連邦政府の債務上限を停止する法案が6/1までに上下両院で可決された。米経済に多大な悪影響を及ぼす懸念のあった債務不履行(デフォルト)が回避され、景気敏感株などに買いが広がり、NYダウの上げ幅は今年最大となった。
・米上院が6/1夜に米債務上限の効力を2025年1月まで停止する「財政責任法案」を可決。すでに下院は同法案を可決しており、バイデン大統領の署名を経て成立する。
・政府の資金繰り策が行き詰まる6/5が迫っていたため、米国のデフォルトが土壇場で回避されたことが買い安心感につながった。
・米連邦準備制度理事会(FRB)が6/13~14の米連邦公開市場委員会(FOMC)で利上げを見送るとの見方も投資家心理の支えとなった。6/2発表の5月米雇用統計で非農業部門の雇用者数が前月比+33.9万人と市場予想+19万人増以上に増えた。一方、失業率は3.7%と市場予想3.5%を上回り、平均時給の前年同月比の上昇も市場予想を下回った。「労働市場の過熱感も収まりつつあり、FRBは次回のFOMCで政策金利を据え置く」との見方もあり、NYダウはこの日の高値圏で終えた。
・NYダウ構成銘柄では、建機のキャタピラーや工業製品・事務用品のスリーエムなど、景気敏感株が大幅高となった。ポーツ用品のナイキやクレジットカードのアメリカンエクスプレスなど消費関連株も買われた。アマゾンや電気自動車のテスラも上昇した。一方、ネット通販のアマゾンが米国で有料会員向けに低価格もしくは無料の携帯電話サービス提供を検討しているとの報道を受け、通信のベライゾンが下げた。
●2.米国株:
・債務上限問題解決が招く「金利高」「通貨量縮減」⇒株安のシナリオ
・FRBの利上げ停止が、「インフレ再加速」「高金利の長期化」となる恐れ
1)債務上限の解決後は「資金枯渇のため1兆ドル起債」⇒金利高・通貨量減⇒「株安」に
・米連邦政府は6/5には金庫の資金が枯渇し、デフォルト(債務不履行)に陥ると警告していたことを思い出していただきたい。それも、資金捻出策を総動員した結果、「タオルを絞っても1滴も水が出ない」という状態が今の状況だろう。
・つまり、債務上限問題の解決直後に、超大型の起債を実施して金庫に資金を満たす必要がある、ということを示している。その額はブルームバーグ通信によると、7~9月期には「1兆ドル」規模になるという。その巨額資金調達で何が起こるのか?市場からの資金調達で、市中の資金が短期間で吸い上げられるため「通貨量大幅減」と「金利上昇」が待ち受けることになる。
・ただでさえ、市場は困難に直面している。それは、FRBによる約1年前から実施の
(1)「約5%の金利引上げ」と
(2)「1兆ドルを超える市場からの資金引き揚げ(通貨供給量の縮減)」である。しかし、それは「時間をかけて」いるため、市場に混乱をもたらしていない。
・ところが、債務上限を巡る連邦政府の資金枯渇による、資金調達は「急を要する」ところに、問題がある。それは、緊急な資金調達で、
(1)短期間での金利上昇
(2)急激な通貨供給量の減少
に起因する問題が発生する。
・年初からFRBの政策の影響を受け、米中堅銀行の破綻が相次いだ。そのため、融資の厳格化が実施され、信用収縮が起こって、問題が波及している。マーケットも景気後退を意識して自己防御のため、現金を多額に抱えている。つまり、市場から通貨量が減っているのである。それに追い打ちをかけるのが、「米政府による緊急かつ大規模起債」である。
・市場に出回る資金が急減するということは、株式と債券市場に困難をもたらすだろう。つまり、「株式が売られ・債券も売られる」ことを意味するからだ。JPモルガンは、今年の運用利回りを▲5%下落と予想。シティも、2カ月後にSP500株価指数が▲5.4%下落、債券利回り+0.37%上昇と予想。
・債務上限問題の解決後に起こる市場の混乱「金利高」「通貨供給量減」⇒「株安」のシナリオを懸念している。米財務庁は6/5にも、1,700億ドル規模の財務省証券(TB)を発行して資金調達をする。債務上限を巡る問題解決をただ喜んでいる場合ではないようだ。
2)もし、FRBが6月の利上げ停止を決定したならば、後で「悔やむ」だろう
・ブルームバーグ通信は、FRBは6/13~14開催のFOMCで「利上げ停止」をすると示唆した、と伝えた。なぜ後悔するかというと、利上げ停止が「さらなる利上げ」加速に追い込まれる可能性が出てくるからだ。
・インフレ率低下が鈍化もしくは横ばいとなってきている。コアCPIはむしろ上昇に転じた。FRBのインフレ目標2%に対して、現状2倍以上高いインフレ率が高止まりする懸念が出てきている。
・こういった状況のなかでの「利上げ停止」はインフレ抑制の放棄と映るかもしれない。
・欧州・中国の景気減速が明らかとなるなか、米国経済も低下傾向にある。こうした経済状況を反映して、原油価格と国際商品価格(CRB指数)も下落方向にある。サウジやロシアなどOPEC諸国プラスの財政状況をみると、これ以上の原油価格の低下は望ましくない。今後、原油減産など需給引締め策をとって価格維持を図ると思われる。電気自動車の普及で銅需要は高まる一方で、CRB指数は下げ渋るとみられる。
・このままの状態が続くと「世界経済の後退・インフレの高止まり」となり最も避けたい「スタグフレーション」に突入するリスクが加速されかねない。したがってFRBはインフレ退治まで、「金融引締め(利上げ・量的縮小)」の手綱を緩めてはならない。
●3.JPモルガン社長、ローン需要減、景気減速が重し(ロイターより抜粋)
1)地方銀行や小規模銀行も融資厳格化で信用収縮のなか、ローン需要が減少していると指摘。
2)消費は依然として前向きだが、景気は減速している兆候がある。
3) FRBは、さらに金利を5.5%まで引上げた後、インフレ抑制効果を評価するために利上げ停止 ⇒ もしインフレが加速すれば+0.5%の利上げをして、さらに小幅利上げを繰返す可能性がある。
4) いずれ景気後退(リセッション)に陥るとの予想を示したが、「今のところ危機はなく、ただ景気が減速するだけだ」と述べた。
●4.ブルームバーグのエラリアン氏、「FRBの利上げ停止示唆は問題」(ブルームバーグ)
1)FRBが2%のインフレ目標に対して真剣ならば、「利上げを実施すべき」と指摘。
●5.米5月就業者+33.9万人増、予想+19万人を上回る(共同通信)
1)5月失業率3.7%、前月の3.4%より▲0.3%悪化。
2)連邦公開市場委員会(FOMC)は6/13~14に開催され、利上げについて判断する。
●6.FRBフィラデルフィア連銀総裁、6月の利上げ停止し「様子見」が望ましい(ロイター)
●7.米5月ISM製造業景況指数は46.9と、予想47.0・前月47.1から悪化(ロイター)
1)7カ月連続で節目の50を下回った。金利上昇で新規受注が急減。
●8.米5月ADP民間雇用者数は+27.8万人増、予想+17万人増(ブルームバーグ)
■II.中国株式市場
●1.上海総合指数の推移
1)6/1、上海総合+0高、3,204(亜州リサーチより抜粋)
・中国景気の過度な先行き不安が薄れる流れとなった。
・取引時間中に公表された5月財新中国製造業PMI(民間による統計)は50.9に上向き、2カ月ぶりに景況判断の境目となる50を回復した。前日に発表された中国製造業PMI(国家統計局による統計)が予想を下回り、2カ月連続で節目の50を割込んでいただけに、ひとまず安堵感が広がった。
・もっとも、買い進む動きは限定的で、指数は安く推移する場面もみられた。人民元の先安感が逆風となった。米金融引締めの長期化観測を受け、米ドルが他通貨に対し強く推移するとの見方が広がっている。5/31のオフショア市場では、2022年11月以来となる1米ドル=7.1人民元台まで元安が進んだ。6/1は一時、元高に傾いたものの、依然として元安が進行している。また、米中の対立への警戒感が強まっていることも重しとなった。
・業種別では、石油・保険の大型株が相場を支え、軍事関連が物色され、素材・メディア
・娯楽・食品飲料・ソフトウェアなども買われた。半面、米ドル建の取引が多い空運関連は急落、ITハイテクが冴えず、銀行などが下落。
2)6/2、上海総合+25高、3,230(亜州リサーチより抜粋)
・内外環境の改善で、投資家心理が上向く流れとなった。
・米国のデフォルト(債務不履行)回避や利上げ停止の観測に加え、人民元安の進行への警戒感も薄れた。中央銀行の中国人民銀行は6/2朝、人民元レートの対米ドル基準値を4日ぶりに元高方向へと設定した。為替市場では5月に入り元安基調を強めたものの、足もとでは元高が加速している。また、前日公表された、5月財新中国製造業PMIが50.9に上向き、2カ月ぶりに景況判断の境目となる50を回復したことが引続き材料視された。
・業種別では、不動産の上げが目立ち、消費関連も高く、金融もしっかり。半面、発電が冴えず、医薬品・メディア・娯楽・軍事関連は売られた。
●2.中国株:ゼロコロナ撤廃による中国経済の回復に一服感
1)一服感の現状
・5月PMI(購買担当者景気指数)は下振れし、景気減速を示唆した。5月製造業PMIは48.8、予想49.5・4月49.2を下回った。中国のGDPの6割超が製造業であり、この指数が中国の現況を表わしている。5月非製造業は54.5、市場予想55.2・4月56.4から下回った。
2)中国経済回復の伸び悩みの要因
(1) 中国から生産拠点の脱出が続く ⇒ 中国の輸出力低下へ
(2) 失業の拡大、特に若年層での失業率は約20%
(3) 中国GDPの25%を占める不動産業界の締め付けで、中国経済の成長エンジンが急落
(4) 投資牽引の地方政府が赤字で、投資低迷
(5) 低い生産性の国有企業の保護、高い成長の民間活力の封殺
(6) 新型コロナ感染の再拡大による経済停滞が進行
(7) 政府による経済対策に具体的な刺激策がみられない
(8) 中国輸出先の欧州・米国が景気減速で、新規受注が減少 ⇒ 輸出の減速
■III.日本株式市場
●1.日経平均の推移
1)6/1、日経平均+260円高、31,148円(日経新聞より抜粋)
・前日の米株安を受けて、朝方は小幅安で始まったが、ほどなく上昇に転じた。主力の値嵩株を中心に押し目買いが入り、上げ幅は一時+300円に迫る場面があった。
・前日に日経平均が▲440円と大幅下落した反動で押し目買いが入った。日本株に先高感が根強いなか、過熱感の落着きを示す投資指標も増え、買い遅れていた投資家の買いが広がった。ソフトバンクGが大幅上昇するなど値嵩の主力株の買いが目立ち、指数を押し上げた。
・前日までに月末・月初特有の機関投資家のリバランス(資産配分の調整)の売りが一服したことも、投資家心理の支援材料となった。日本時間6/1午前には米下院が債務上限停止法案を可決した。いったんは目先の材料出尽くし感から手仕舞い売りも出て、日経平均が再び下落に転じる場面もあった。
・米国債のデフォルト(債務不履行)が遠のいたとの見方から、午後に入って三菱UFJが上げ幅を広げた。東エレク・ダイキン・三菱商事が買われた。朝方は下げが目立ったアドテストはプラス圏に浮上して取引を終えた。一方、大平金・シャープが安く、資生堂も売られた。
2)6/2、日経平均+376円高、31,524円(日経新聞より抜粋)
・前日の米株式市場で主要株価指数が上昇した流れを受け、東京市場では朝方から買い優勢となり、1990年7月以来およそ33年ぶりの高値を付けた。午後の取引終了間際に日経平均の上げ幅は一時+400円を超えた。
・前日の米株式市場でNYダウなど主要株価指数は上昇した。ハイテク株比率が高いナスダック総合指数はおよそ9カ月ぶりの高値で終えた。米連邦準備制度理事会(FRB)が6月の米連邦公開市場委員会(FOMC)ので利上げを見送るとの観測などが支援材料になった。
・日経平均は午後に上げ幅を拡大した。米連邦議会が上院で日本時間6/2に政府の債務上限の効力を停止する財政責任法案を可決した。米債務不履行(デフォルト)回避が改めて材料視され、日本株への買いの勢いが増した。
・もっとも、伸び悩む場面も多く、高値警戒感から上値で利益確定などの売りが出た。日本時間の今晩に、5月雇用統計の発表を控えているうえ、週末をにらんだ持高調整の売りも出やすかった。
・ソフトバンクGの上昇が目立った。ダイキン・ファストリも高い。一方、半導体関連の東エレク・アドテストが売られ、アステラスも下げた。
●2.日本株:テクニカル指標で語れないの日本株の上昇
1)テクニカル指標では語れない「買うから上がる・上がるから買う」相場となっている
・テクニカル指標では、語れない株式相場になっている。
・PERは天高く、1株利益は低下しているのに株高で、VIX(恐怖指数)は低水準。
・騰落レシオも、「買われ過ぎ」を示していない。
・買い方の動向次第の展開、つまり海外投資家次第となっている。
・日銀による低金利継続策が呼び込んだ現象かもしれない。バフェット氏は、低金利の日本市場で資金調達し、日本株を買い、成功している。同様の事象が発生してもおかしくない。
・後日、金融緩和のあだ花と言われなければよいが。
●3.企業動向
1)富士通 新光電気工業の株式売却を検討(共同通信)
2)三菱電機 成長の核にSiC(炭化ケイ素)パワー半導体、生産を5倍に(EE Times)
■IV.注目銘柄(投資は自己責任でお願いします)
・3902 メディカル・データ 業績堅調
・4461 第一製薬工業 業績回復
・6095 メドピア 業績回復
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