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ニューモントによるニュークレスト買収、その背景は?
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●ニューモントによるニュークレスト買収が大詰め
米産金の最大手ニューモントが、豪最大の産金会社ニュークレストの買収提示額を195億4000万米ドル(約2兆6000億円)に引き上げ、買収は大詰めを迎えている。
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ロイター通信によると、ニュークレストはこれを受けて、「競合する提案がない場合、この修正案が最善、最終の価格になるとニューモントは示唆した」と述べている。
ニューモントは時価総額、生産量で既に世界一だが、買収が実現すれば、競合相手のバリック・ゴールドの生産量の2倍に達する。
リスクもありながら、ニューモントが圧倒的な世界一の産金会社を目指す背景とは何だろうか?
●ニューモント社とは?
ニューモント社は1921年に設立され、米国・カナダ以外にもメキシコやペルー、ドミニカ共和国などにも金鉱山を持つ。買収を繰り返し、成長を続けてきた。
金業界の世界シェア(2021年)は、ニュークレスト1社だけで約5%となり、2位のバリック・ゴールドの約1.4倍、日本国内最大の住友金属鉱山の10倍に当たる。
金だけでなく、銀、亜鉛、銅も採掘している。S&P500の構成銘柄でもある。
2030年までに炭素排出量30%削減を目標に掲げており、建設・鉱山機械大手のキャタピラー社と炭素排出ゼロの採掘削減システムを実現するために戦略的提携を結ぶなど、再生可能エネルギーへの投資も行っている。
●買収の背景
買収案は2月にも提案されたが、ニュークレストの取締役会に拒否された。
今回修正案として、買収価格は当初案を16%上回る額を提示した。
SVB破綻の余波により、産金株への買いが集まっている。そんな事情からか、ニュークレストは強気だが、ニューモントも諦める気配はない。
世界的なインフレから生産コストが上昇しており、金価格の上昇にもかかわらず、収益は頭打ちとなっている。採掘体制の合理化も求められる。
急激な金利上昇により、新たに資金を確保して設備投資するよりは、買収して再編した方が効率はいい。
金価格は危機には上昇するが、危機が去れば急落することが多く、買収劇にも影響を与えそうだ。(記事:森泰隆・記事一覧を見る)
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