沖縄セルラー電話、通信を核とした両利きの経営戦略を掲げ、EPS成長率は2021年度比+15%を目指す

2023年3月25日 10:02

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記事提供元:ログミーファイナンス

沖縄セルラー電話、通信を核とした両利きの経営戦略を掲げ、EPS成長率は2021年度比+15%を目指す

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第51回 個人投資家向けIRセミナー

上原靖氏(以下、上原):上原から沖縄セルラーについてご説明します。限られた時間となりますが、どうぞよろしくお願いします。

沖縄セルラー電話という企業は、みなさまにとってなかなか馴染みのないものかと思います。名前に「沖縄」が付いているため、沖縄県にあるというのはお分かりかと思います。私どもは沖縄県内でたった5社しかない上場企業のうちの1つです。沖縄県内の企業の利益ランキングにおいては4年連続でトップであり、沖縄県内ではそれなりの知名度があります。

みなさまが想像するとおり、沖縄県は常夏の暑い島です。最近では、夏はかりゆしウェア、冬はノーネクタイという服装がビジネスシーンでも普通になっています。通年でかりゆしウェアを着る方もいますが、本日は少し寒かったため、私は上着を着てきました。

沿革

上原:それではさっそく資料に基づいてご説明したいと思います。本日は、「沖縄セルラーとは」「中期経営計画」「株主還元」の3章立てでご説明します。

まず、会社の沿革です。1991年6月にKDDI(旧第二電電)をはじめとする沖縄県内の有力企業の出資により誕生しています。

誕生秘話としては、1990年10月にKDDI本土の企業のみなさまと沖縄県内の有力企業のみなさまが集まり「沖縄懇話会」が発足しました。当時停滞していた沖縄経済の振興のために何かできることはないかという中で、京セラの創立に携わり、第二電電の会長だった稲盛和夫氏が「沖縄県内に携帯電話会社を作ってはどうか?」という提案をしたところ、みなさまに賛同いただきました。

当時、携帯電話についてはNTTが全国でサービスを提供しており、各地方には他にもう1社あるという状況でした。みなさまもご存じかと思いますが、関東、東海地区においては日本移動通信がありました。その他の地域には北海道から九州まで7社あり、北海道セルラー、そして九州セルラーという会社がありました。

沖縄においても九州セルラーの支社としてサービスを提供することも考えられたのでしょうが、このような提案の下、沖縄セルラーが設立されたということです。設立から1年後の1992年10月に携帯電話サービスを開始し、以後18年ほど携帯電話一筋で活動してきました。

2010年1月に当時沖縄電力の子会社だった沖縄通信ネットワークを子会社化しました。現在はOTNetへ社名を変更しております。沖縄通信ネットワークは当時、FTTHサービスなど固定のサービスを繰り広げていましたが、残念ながらなかなか成長することができず、設備の減損などを行っていたところでした。

そのような状況の中、沖縄電力も含めた話し合いで、携帯電話サービスを提供している沖縄セルラーで、このFTTHを含めた沖縄通信ネットワークを子会社化することになりました。その年の3月には「auひかり ちゅら」というサービスの提供を開始し、沖縄セルラーは沖縄県内唯一の総合通信事業者となりました。

2019年11月には沖縄電力と業務提携し、一般家庭向け電力供給事業「auでんき」のサービス提供を開始しました。沖縄県以外では2016年の春からKDDIが提供していましたが、3年半遅れで沖縄でも開始したということです。このように、「沖縄のために」という声から生まれた、沖縄のための総合通信事業の会社が沖縄セルラー電話です。

会社概要

上原:スライド右上の写真は、代表取締役社長の菅隆志です。菅は1991年に日本移動通信に入社し、その後KDDIと合併し、コンシューマ営業本部長などを歴任しました。さらには、当時子会社であったUQコミュニケーションズの社長も歴任しています。そして、2021年に沖縄セルラーに来ました。

スライド右下の写真は、沖縄セルラー電話の本社ビルです。2013年の夏に竣工し、こちらに移りました。住所は那覇市松山ですが、エリアとしては那覇市久茂地地区という、沖縄県内の有力企業が集まる地区です。

沖縄セルラー サマリ

上原:沖縄セルラーのサマリです。スライド左側が財務関連、右側が株式関連について記載しています。総資産は1,186億円、純資産は1,001億円、自己資本比率は81.3パーセントと、強固な財務基盤であることがおわかりいただけるかと思います。前期の営業収益は734億円で、当期純利益は106億円でした。

EPSに換算すると198円です。ROE(自己資本利益率)は11.4パーセントで、一般的に日本の上場企業の平均が8パーセントから10パーセントである中、2桁となる11パーセントという高い収益性を確保しています。

2023年2月末の株価は3,200円で、時価総額に換算すると1,720億円です。1株当たりの配当金については、今期は86円を予想しており、配当性向は2022年3月期実績で42.4パーセントです。配当利回りは、先ほどお伝えした株価と配当金を加味し、2.69パーセントとなっています。

沖縄セルラー グループ体制図

上原:スライドには沖縄セルラーグループの体制図を記載しています。先ほどお伝えしたとおり、親会社はKDDIで、53.1パーセントの出資比率となっています。KDDIは全国で特にモバイルなどの通信サービスを展開していますが、その中でも沖縄地区においては「沖縄セルラーに完全に任せたぞ」ということで、KDDIと同様のサービスを沖縄県内で展開しています。

スライド左下のOTNetについては、現在私どもが54.2パーセントの出資をしています。元の親会社である沖縄電力も2割程度の出資をしています。OTNetは通信事業のバックボーンとなる固定通信をつないでいます。

スライド右下の沖縄セルラー アグリ&マルシェは非通信です。私どもが100パーセント出資し、観光やアグリ事業を手がけています。

沖縄セルラー 事業概要

上原:沖縄セルラーの事業概要です。スライド左側が主軸となる通信事業で、モバイル、FTTHがあります。モバイルサービスについてはみなさまご存じかと思いますが、「au」に加えて、「UQmobile」「povo」という3ブランドを展開しています。

光インターネットサービスのFTTHについては、OTNetが提供するインフラを使っているのが「auひかり ちゅら」です。そして、離島地域や沖縄本島の北部地域など、私どもの投資ではなかなか採算が取れず、直接投資するよりもNTT西日本の光コラボを使ったほうがよいと思われるエリアで展開しているのが「ひかりゆいまーる」です。この2ブランドでFTTHを展開しています。

スライド右側は成長領域です。先ほどお伝えした電気のサービス「auでんき」に加え、これから成長領域として伸ばしていきたいソリューション営業、そして沖縄セルラー アグリ&マルシェ、さらにはヘルスケアアプリの「JOTOホームドクター」を展開しています。これらの領域を成長領域として伸ばすべく、通信を軸にさまざまな多彩なサービスを提供していこうと考えています。

モバイル契約数

上原:事業の状況について簡単にご説明します。まずはモバイルの状況です。モバイルの契約数を棒グラフにしたものがスライド左側のグラフです。

3ブランドの携帯電話契約のうち、ハンドセットという音声とデータ両方を使える端末である従来の携帯電話と、スマートフォンで、2022年12月末で65万契約です。スライドに記載はありませんが、タブレットやWi-Fiルーター、シングルルーターを合わせた総契約は75万契約です。

スライド右側に沖縄県内のシェアを記載していますが、沖縄セルラーのシェアは約5割です。つまり、沖縄県では2人に1人が沖縄セルラーをご契約いただいているということで、今期も含めて順調に契約を伸ばしています。

坂本慎太郎氏(以下、坂本):昔はドコモの事例がありましたが、現在は1つのキャリアで5割のシェアを取るというのは、沖縄県以外の日本の地域ではなかなか難しいと思います。御社がここまでシェアを伸ばしている理由を教えてください。

上原:シェアが5割と、非常に高い評価をいただいていると思います。設立までさかのぼりますと、1992年にサービスを開始し、当時はNTTとの2社体制でした。

沖縄県内で基地局を展開したのですが、エリアが非常に良かったのか、当時アナログだったものの電波がかなり遠くまで飛びました。エリアは陸上しか表現できなかったのですが、実際には海上でもかなり使えました。沖縄県は周囲が海ですので、うみんちゅ(漁師)から「沖縄セルラーの携帯電話はよくつながる」という評価をいただき、口コミでネットワークの良さを広めていただきました。

当社は沖縄県内の有力企業のみなさまに株主となっていただき設立した会社ですので、多くのみなさまに代理店になっていただきました。当時の携帯電話は値段が高く、なかなか簡単に契約できるものではなかったところ、株主さまの関連企業、あるいは取引先などからご案内いただき、一気にシェアを伸ばすことができました。

2年目、3年目には、2社体制の中でシェアが70パーセント以上で先行したというのがまず大きいポイントでした。エリアが良く、代理店や販売店が充実しているということでシェアを伸ばしました。

現在も他社と比べてショップが多く、大体2倍あります。現在は70店舗ほどありますが、他社はその半分の30店舗台くらいと、売り場もしっかりとキープしています。初動で高いシェアを掲げ、ソフトバンクや楽天などの参入もありましたが、現在の販売体制をしっかりと維持して、高いシェアを維持しているということです。

他キャリアの本社は東京にあります。他社から見ると沖縄地区は1パーセントの市場ですが、私どもは沖縄県に本社があるため、マーケティング上のすべてのリソースを沖縄県内に100パーセント注ぐことができます。これが一番大きなところだと考えています。

FTTH契約回線数

上原:FTTHの状況です。スライド左側にFTTHの契約回線数の状況を棒グラフで示しています。こちらも右肩上がりで着実に契約回線数が増加しており、現在11万7,600件となっています。沖縄県内での回線シェアは3割となっています。

先ほどお伝えしたとおり、携帯電話サービス開始から18年遅れの2010年3月にサービスを開始しました。NTTがほぼ100パーセントを占めていた市場で、私どもが今追いかけているところです。

沖縄では、光インターネットの普及率が全国に比べると5ポイント強遅れていますが、毎年普及率の差を縮めています。さらに沖縄県内普及率、回線シェアを高めていくことで、引き続き成長が見込まれるサービスです。

坂本:NTTが強い中で、回線シェアが3割あるというのは健闘しているかと思いますが、今後の取り組みとしてセット割のようなことはあるのでしょうか?

上原:携帯電話とスマートフォンは、FTTHと非常に相性が良いサービスですので、セットで契約いただくと、「auスマートバリュー」というかたちで割引を適用しています。光回線FTTHにご契約いただく際には、ほぼ8割以上のお客さまがセット割で購入するため、非常に強い武器になっています。引き続き、スマートフォンの普及により伸ばせると考えています。

auでんき契約件数

上原:成長領域の「auでんき」について、契約数をスライド左側に記載しています。2019年第3四半期の11月にサービスを開始し、当時の事業計画では3年後の2022年3月期末までに契約件数45,000件を目標に設定していました。2022年9月時点で契約件数は88,900件となり、当初計画のほぼ倍となる件数を達成できました。

ただし、みなさまもご存じかと思いますが、燃料費の調達原価が上がり、円安もあり、お客さまに請求できる燃料費調整上限額を超えてしまい、事業者側としては逆ザヤになっていました。今期の4月からその状態が続いていたため、心苦しいのですが、11月からは上限額を超える部分をお客さまに転嫁させていただくことになりました。

お客さまの不利益にならないようにご案内しましたので、9月、10月の事前展開によって解約数が増えました。解約したお客さまは、規制料金により上限額が設定されている沖縄電力さまに移ったようで、11月末には66,900件まで減少しました。

ただし、沖縄電力においても、4月から一般家庭向け規制料金を4割値上げすると11月に申請しました。政府の意向として簡単には認められない状況ですので、4月スタートにはならないかもしれませんが、ゆくゆくは値上げされると思います。値上げが実行されれば、また同じような料金で提供できるようになりますので、来期には契約純増に転換できると考えています。

増井麻里子氏(以下、増井):一時的に電気料金が沖縄電力より上がることが原因で解約が増えたということですが、もし沖縄電力が値上げした場合には、御社に契約が戻ることはあるのでしょうか?

上原:現在は値上げの上限撤廃を発表し、お客さまに料金が高くなる旨をご案内していますし、獲得活動は控えています。同じ料金で提供できる見込みが立ちましたら、また獲得活動を再開し、お客さまにはバンドルによりポイントを付与します。auを契約しているお客さまにはまったく損のないサービスですので、必ずお客さまは戻ってくると考えています。

事業創造による沖縄の課題解決

上原:成長領域について、いくつか例を挙げます。事業創造による沖縄の課題解決として、スライド左側にソリューションを掲げていますが、一例として鉄塔点検にドローンとAIの画像解析を利用する事例を記載しています。

沖縄セルラーは基地局でかなりの数の鉄塔を所有していますが、今までは人が鉄塔に登り、カメラで写真を撮って、それを目検することで錆などによる劣化部分を特定し、修繕工事などを実施していました。この作業にドローンを活用することで安全性が向上し、AIを使用することにより運用効率の効率化を実現できます。来年度には実用化を目指しており、今後は橋梁や建物、あるいは農業や観光など、沖縄の基幹産業へも展開できるのではないかと考えているところです。

スライド右側は、スマート農業を展開している沖縄セルラー アグリ&マルシェの事例です。沖縄本島の太平洋側400キロほどのところにある南大東村に、台風に耐えられる強度の水耕ハウスを導入しました。

みなさまご存じのとおり、沖縄県は毎年非常に多くの台風が接近します。特に、太平洋側にある大東島には、非常に多くの台風が頻繁に接近します。だいぶ前ではありますが、台風の接近が毎週続いたことがあり、大東島に食料品など生鮮物資を届けられない状況が2週間も続きました。全国でも葉野菜の生育に長雨による影響があったため、大東島に届く萎びたレタス1個が1,300円という状況がありました。

そのような課題を解決するためにスマートハウスに取り組み、南大東村に5年から6年前にコンテナハウスを作成し、葉野菜の生産を進めてもらいました。今回は水耕ハウスということで、キュウリやトマトが年中栽培できるようになりました。野菜の地産地消で南大東村に貢献できたと思っており、今後も数多くある他の離島にも展開していきたいと考えています。

地元貢献への取り組み

上原:地元貢献への取り組みをご紹介します。スライド左側が、世界自然遺産の登録地域5団体への寄付活動です。

森が茂ったやんばる地区といわれる沖縄本島北部の大宜味村、東村、国頭村では環境保全活動に取り組んでおり、貴重な動植物が生息しています。また、竹富町や、石垣島の隣にある西表島には、イリオモテヤマネコなどの貴重な動物が生息しています。その両地域で野生動物の保護活動をしているNPO法人どうぶつたちの病院沖縄を合わせた5団体へ、環境保全を目的に寄付を行いました。

また金銭面だけではなく、マングース調査×AI活用で「沖縄自然保護プロジェクト」に取り組みました。マングースは戦前にハブ退治のために海外から導入されたのですが、ハブではなく、絶滅危惧種のヤンバルクイナなどを捕食してしまうという問題があります。今までは、人間が足で訪問して、捕獲器をチェックしている状況でしたが、IoTやAIを使用することで作業効率化に貢献しました。これらを提供することで、自然保護活動に貢献できていると思っています。

経営方針

上原:経営方針として掲げているのが、増収・増益・連続増配の3つの増である「3増(サンゾウ)」です。さらに、配当性向40パーセント超を経営方針として掲げています。

業績推移

上原:業績推移として、スライド左側のグラフで示している営業収益をご覧いただくと、右肩上がりで増収を続けています。しかし、前期は734億円で、前々期の741億円から減収となっています。

ただし、こちらは会計方針の変更により、収益認識の基準が変わったことが影響しており、従来の基準ですと40億円ほどの増収となっていました。会計方針の変更を除けば、13期連続で増収が実現できていることになります。

スライド右側のグラフで示している営業利益は、2013年3月期以降、10期連続で増益を続けています。今期は153億円と微増ですが増益となる予定で、こちらを達成すると11期連続の増益となります。

一株あたりの配当金の状況

上原:配当の状況です。今期の1株当たりの配当金は86円を予定しており、こちらを達成すると、22期連続の増配となります。配当性向も43.2パーセントとなり、経営方針の「3増」と配当性向40パーセント超を実現できることになります。

増井:配当性向40パーセント超を目指しているとのことですが、御社の場合は収益基盤も安定されているため、業績も底堅いと思います。そのような中で、配当金の下限は設定しているのでしょうか?

上原:先ほどお伝えしたとおり、連続増配を経営方針に掲げているため、足元より下がることはないように取り組んでいます。そのため、下限は設定せず、今年が下限で翌年はさらに上がる、またその翌年が下限となり、翌々年はさらに上がるというイメージで取り組んでいます。

増井:業績が上がるにつれて、そのまま比例するように配当金も上がっていくということですね。

上原:おっしゃるとおりです。後ほど中期経営計画についてご説明しますので、そちらでも少し触れさせていただきます。

事業戦略

上原:中期経営計画についてご説明します。当社は1992年10月に携帯電話サービスを開始し、昨年10月で携帯電話サービス30周年を迎えました。今までの中期経営計画は社内では共有していましたが、外部向けの開示はしていませんでした。これからの30年に向けて、2022年から2024年の3期を見据えた中期経営計画を初めて発表します。

事業戦略として、通信を核とした既存事業の深化と成長領域の拡大、この2つによる両利きの経営を経営戦略として掲げています。既存事業の深化としては、進化を支える5Gネットワークの戦略、そして5G戦略とマルチブランド推進による収益最大化を掲げています。成長領域の拡大については、エネルギー事業の推進、ソリューション事業の推進、さらには事業創造による沖縄の社会課題の解決を掲げています。

深化を支える5Gネットワーク戦略

上原:既存事業の深化を支える5Gネットワーク戦略についてです。2020年ごろから、5Gエリアの展開を本格的に開始しています。通信・モバイル事業においては、10年ごとに通信方式が新たな方式に切り替わっており、現在は第5世代(5G)となっています。

5Gエリアについて、2021年度には沖縄本島のエリアカバー率90パーセントを達成することができました。今回の中期計画では、2024年度に向けて、沖縄県内全島での人口カバー率95パーセント以上を目標としています。

政府が掲げる「デジタル田園都市国家構想」では、日本全国で5Gエリアを95パーセント以上にすることを目指しています。私どもとしては単独で、沖縄県内全島の95パーセントのカバー率を達成する計画です。

坂本:沖縄県内全島でカバー率を高めていくとのことですが、離島では人口が少ないため、コストに収支が合わない可能性もあると思います。離島の工事については、国や地方自治体から補助金などが出るのでしょうか?

上原:日本全国の隅から隅まで5Gネットワークを展開するという国家構想に基づき、さまざまな離島地域に展開するための支援を本来ならいただきたいのですが、残念ながらそのようなものはありません。キャリア自らが展開することになります。

スライド右側に記載のとおり、2021年度の終わり頃から離島海底ケーブルの敷設を計画してきました。2023年の夏には敷設を完了し、5Gエリアの拡大によるネットワーク強化を沖縄全域で実現します。

これは沖縄セルラーだけでなく、NTT西日本ならびにソフトバンクと共同で敷設します。実現すれば沖縄全島でカバー率95パーセントを達成する計画ですが、実は2023年2月中旬にはすでに全島90パーセントを達成し、計画よりも前倒しで進捗しています。そのため、中期経営計画で掲げた2024年度ではなく、2023年度末までに沖縄全島でのカバー率95パーセントの達成を新たな目標として掲げています。

5G戦略とマルチブランド推進による収益最大化

上原:5Gのネットワークを整えることで、モバイルのマルチブランド「au」「UQ mobile」「povo」の推進による収益最大化を目指します。4Gスマホの1ヶ月のトラフィックは平均して10ギガ弱ですが、5Gスマホだと約25ギガバイトで、ほぼ2.5倍のトラフィックです。私どもは5Gをどんどん推進し、2024年度には利用比率を85パーセントまで高めます。

2020年度以降、政府からのさまざまな要請によって料金の値下げに取り組んできたため、マルチブランド通信のARPU収入自体はどんどん低下しています。ARPU収入とは、お客さまに使っていただいた通信による収入です。

毎月の料金がどんどん値下げになっていますが、ようやく鈍化してきました。2023年度には底を打ち、2024年度には増収への反転にも取り組みます。しっかりと5Gエリアを構築し、5Gへの移行を進めていきます。

成長領域の拡大

上原:成長領域の売上をしっかりと伸ばし、150億円規模を目指します。100億円規模だった2021年度より、5割増しとなる計画です。

利益については既存事業の利益率が高いため、非常に効率よく利益を計上することができますが、まずは売上を伸ばすことで成長領域の拡大を促したいと思います。エネルギー、ソリューション、アグリ、ヘルスケアなど、各成長領域の伸張を目指して取り組んでいます。

財務目標

上原:中期経営計画における財務目標として、2024年度のEPSは228円を目指します。2021年度の198円より15パーセント増加、年度ごとに5パーセント増加していくイメージで取り組んでいます。

坂本:EPSの上昇は、既存事業の増益で賄っていく見通しでしょうか? それとも、自社株買いを行うことでEPSの上昇を狙っているのか、もしくはミックスなのか、イメージを教えてください。

上原:やはり利益成長をメインに考えており、年2パーセントから3パーセントほど伸ばしていくイメージです。既存事業で利益を伸ばしつつ、成長領域はその次の中期を見込んで、次の利益の源泉にしていきます。成長領域は売上を伸ばし、足りない部分は自己株買いなどの資本施策で整えていきます。

キャピタルアロケーション

上原:資本の配分であるキャピタルアロケーションについてご説明します。2024年度までの3年間で、営業キャッシュフローは約500億円規模を見積もっています。また、5Gや既存事業などの設備には3年間で約200億円規模の投資を行い、キャッシュフローを新たに創出し、還元していきます。

成長に向けた戦略投資としては、さまざまな取り組みを行っていますが、自らの力が足りない部分については、M&Aなども含めた資本施策によって戦略投資を行います。株主のみなさまには増配に加え、機動的な自己株式の取得実施により、株主還元を実現していきたいと考えています。

一株あたりの配当金の状況

上原:株主還元についてご説明します。1株当たりの配当金は今期も増配を予定しており、22期連続の増配を達成しています。配当性向も40パーセント超の43.2パーセントを予定しています。

自己株式取得

上原:株主還元の強化と資本効率の向上を加速するため、2022年4月の決算発表の際に、取得総額の上限を30億円として自己株式を開始しました。順調に推移したため、2023年1月の第3四半期の決算発表において、上限額を40億円に上方修正しました。

取得株数についても、変更前の140万株から160万株へ上限設定を変更しています。株価が想定よりも高めに推移しているため、40億円がリミットで推移すると考えていますが、自己株式の取得には機動的に取り組んでいます。

株主優待

上原:株主のみなさまのご支援に感謝するとともに、当社事業の理解を深めていただくことを目的として年1回、3月末を基準に株主優待を実施しています。保有株式数と保有期間に応じて、株主優待のカタログギフトを贈呈しており、特に個人の株主さまに喜ばれています。

100株1単元として、株を持ったばかりでも100株で3000円相当のカタログギフトを受け取れるというのは非常に魅力的かと思います。ホームページにも掲載していますので、ぜひご確認ください。

まとめ

上原:最後に、本日のまとめです。1点目、健全な財務状況であることは81.3パーセントの自己資本比率からもおわかりいただけたかと思います。契約数も好調で、シェア率はモバイルで5割、FTTHで3割でした。

2点目、通信を核とした両利きの経営について、通信ARPU収入は2023年度を底にして、2024年度には反転することを経営方針として掲げています。EPSは2021年度比で15パーセントの成長を目指し、2024年度の達成に向けて動いています。

3点目は、増配と機動的な自己株式取得による株主還元です。増収・増益・連続増配の「3増」と配当性向40パーセント超を目指し、機動的な自己株式の取得により株主還元を実行したいと考えています。

以上が沖縄セルラーのご説明でした。ご清聴ありがとうございました。

質疑応答:成長領域の取り組みと今後の展開について

坂本:「成長領域の取り組みで大事にしていることを教えてください。御社は自己資本比率が高いですが、M&Aの可能性もありますか? また、本土や海外へ展開する予定はありますか?」というご質問です。

上原:通信はインフラ事業ですし、親会社もあるため、沖縄地区に限って、営業活動を進めていくのは変わりません。成長領域について例を挙げると、アグリ事業としてイチゴ工場を展開しており、アジアの富裕層向けにシンガポールなどの視察をしています。今後はグローバルな展開も含めて、検討して進めていければと思っています。

坂本:本業は沖縄がメインで、新規事業では海外も視野に入れているということですね。

上原:おっしゃるとおりです。

質疑応答:ROEについて

坂本:「ROEが11.4パーセントと高い収益性を維持できていますが、その要因を教えてください」というご質問です。設備投資としては大きな投資を今後も継続していかなければいけないと思いますが、ROEが高い理由と、今後の設備投資の計画も含めて教えてください。

上原:ROEが高い要因は、右肩上がりで増益となっているためです。ストックビジネスですので、お客さまに契約していただくとしっかりとARPU収入を計上することができます。

政府の要請による料金値下げもありますが、FTTHなどの固定通信や「auでんき」などの副商材をバンドルでご契約いただくことにより、顧客の維持活動に取り組んでいます。主軸の利益率が高く、その利益を守るためにさまざまなサービスとバンドルを組み、お客さまを積み上げていくというビジネスが軌道に乗っているため、高い利益率を維持できています。

これらを維持していくために安定的な設備投資を行っています。既存事業については毎年安定して60億円程度を目安に投資し、成長領域向けには新たなものが見つかれば、そちらにアドオンしています。そのため、利益は安定しながらも、さらに成長を目指す体制が築けていると考えています。

質疑応答:株主優待について

坂本:「御社は増配を続けており、非常に株主還元に積極的な会社だと認識していますが、昨今は株主優待廃止の流れもあり不安を感じています。これからも継続する方針でしょうか?」とのご質問です。

機関投資家からは「不公平だからやめてほしい」という声もあると聞きます。また、増配を突き詰めていくと株主優待より増配を取る会社が多いです。御社は、株主優待も含めて株主還元の充実を図っていますが、現状のお考えと今後のイメージがあれば教えてください。

上原:株主さまへの還元をしっかり高めていく動きについては、先ほどのご説明でご理解いただけたと思います。今期末の株主さまについては、2023年6月の株主総会前頃になると思いますが、株主優待を進呈することは確定しています。

ご質問のように、さまざまなご意見があることは理解しており、来期以降については、あらためて検討したいと思います。いずれにしても、株主のみなさまにとって魅力的な会社であり続けるために、連続増配と配当性向40パーセント超、そして機動的な自己株式の取得に取り組むとこの中期経営計画では宣言しているため、ご理解いただければと思います。

当日寄せられたその他の質問と回答

当日寄せられた質問について、後日回答いただきましたのでご紹介します。(こちらは企業ご提供の内容となります)

<質問1>

質問:首里城の再建に貴社も関わっておられるのでしょうか。

回答:当社では首里城再建への寄付や、歌を通して復興を応援するプロジェクト「SHURI NO UTA」などを実施しております。

<質問2>

質問:社員の採用はやはり県内が中心なのでしょうか?

回答:出身地は県内・県外問わず幅広く採用しております。割合は沖縄県出身者が多いですが、近年、県外出身者も増えている状況です。

<質問3>

質問:設備投資への補助金がないと伺いましたが、借り入れで賄っているんですか。

回答:設備投資は自己資金で賄っております。

<質問4>

質問:配当利回りが2パーセント以下であり、投資する側としてあまり魅力を感じないのですが、2パーセントという事はできないのでしょうか。

回答:当社の配当利回りは2.91パーセント(※)となっております。増益・配当性向40パーセント超の経営方針を元に、株主の皆様へ還元してまいります。

※予想配当利回り(3月17日終値)

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