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余波が続く米シリコンバレー銀行の経営破綻、恐怖の連鎖が呼んだ想定外の結果!
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10日に経営破綻した米シリコンバレー銀行(SVB)の影響が、広がり続けている。SVBは1983年に設立された比較的に歴史の浅い銀行だったが、行名が示す通り、スタートアップが大きく成長するパワーゾーンとして知られるシリコンバレーを営業基盤として、順調な営業を続けていた。
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銀行の本来業務は預金を集めて、融資に回し利鞘を稼ぐところにある。皮肉なことに、力のあるスタートアップはVCや新規上場等による自力での資金調達能力が強く、折りからの新型コロナによる金融緩和が集まる資金をカサ上げした。
融資対象先に恵まれないSVBは、資金運用の手法として住宅ローン担保証券(MBS)等の、有価証券で運用するウエイトを高めていった。折りからの低金利時代だから運用の旨みは高いとは言えないにしても、安全性を勘案した上での決断だろう。
ところが、過熱傾向を見せ始めた米国経済にインフレの危険を嗅ぎ取った米連邦準備理事会(FRB)が、22年3月から間断なく金利の引き上げを続けた。その結果、SVBが購入した債券の金利が上昇し、価格が低下する事態を招いた。
銀行には経営の健全性を担保するために、資産価値をリアルタイムに評価して適切な対応をすることが求められている。SVBは8日に、保有債券の一部売却による損失を18億ドル(約2400億円)計上するとともに、22億5000万ドル(約3000億円)の増資を発表した。加えて、23年2月末には150億ドル(約2兆円)の現金を保有していることもアピールした。
実態に即した資産状況を正直に公表して、目減りした資産を超える増資を行い、現金もたっぷりあることを発表したにも拘らず、翌9日の株式市場でSVBは猛烈な売り圧力を受けた。その勢いは前日を60%も下回る暴落状態を招き、10日には経営破綻による事業停止に追い込まれた。
背景に、著名な投資家が預金の引き出しを呼びかけたり、オンラインのトラブルが発生して預金を引き出せなくなったことが、恐怖を拡大して取り付け騒ぎに繋がったという分析もある。
セオリー通りの対応にも拘らず、想定外で最悪の結末を迎えた今回の事態は、今後の対応を考える上で重要なケーススタディになることだろう。(記事:矢牧滋夫・記事一覧を見る)
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