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楽天モバイルの不正請求、46億円の被害が300億円に拡大し・・・もうないのか?
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楽天は22年12月期連結決算で3728億円の最終赤字を計上して、4期連続かつ過去最高額の損失だったことが大いに話題となった。赤字の原因が楽天モバイルにあることは衆目の一致するところで、一時は「基地局設置の投資負担が重過ぎたのではないか?」という同情めいた声も出ていた。
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通信品質を3大キャリアに匹敵する状態まで引き上げて、KDDIへ支払うローミングという回線賃借料を軽減させるために、とにかく進めなければならなかったのが基地局の整備だった。
楽天モバイルの基地局が人口カバー率98%に到達した時期と前後して報じられたのが、楽天モバイルの幹部が取引先と共謀して行っていたとされる巨額の不正請求事件だ。
事件は当初、楽天モバイルの部長であった幹部社員が取引先の物流会社2社と共謀して、楽天モバイルへの水増し請求を行ない、約46億円を詐取したものだと伝えられた。楽天モバイルは22年8月12日に当該幹部社員を懲戒解雇に処し、共謀していた物流企業の預金4億円も差し押さえた。
その後、楽天は22年12月期連結決算で不正請求事件の関連で119億円の費用を計上したから、調査の結果被害金額が膨らんだものだと捉えられていた。
ところが、2019年から21年までの3カ年に不正に請求された金額が総額で、300億円にも登る可能性が伝えられ始めた。当初伝えられた46億円でも十分巨額な不正だったが、実際にはその7倍前後に上る不正があったことになる。
楽天では22年12月中旬のオンライン会議で、基地局設置工事が説明なしに1年間先送りすることが伝えられていた。当時は突然の計画変更を訝しがる声が溢れていたが、今になって見えてきたのはこの巨額不正事件が伏線だったということだ。
スピードを最優先にして闇雲に進めていた基地局設置工事が、とんでもない事態を引き起こす舞台だったと知れば、他にも同様の事例があったのではないかと疑心暗鬼になるのは当然だ。そのためこれまで、楽天グループを挙げて基地局設置工事の精査が行なわれていた。
基地局の新設が先送りされた明確な理由があったのだ。問題は不正の全体像がどの程度まで拡大するかだろう。似たような事例が他にもあるかも知れないと思うのは人情だ。
基地局網の整備で、人口カバー率を98%まで引き上げて通信品質の改善をアピールすることが、利用者を着実に獲得する王道だった筈が、これだけ重大でネガティブな事件が報道されていては、イメージダウンも甚だしい。楽天モバイルの利用者を拡大する以前に、楽天グループは正真正銘の土壇場を迎えている。(記事:矢牧滋夫・記事一覧を見る)
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