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再燃するクレディ・スイス危機
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●大株主が全株売却
スイスのトップ銀行であるクレディ・スイスの長年の大株主だった米国運用会社ハリス・アソシエイツが、この数カ月間で全株式を売却したとロイター通信などが報じている。
【昨年10月にも】クレディスイスショックはあるのか?
ハリスのヘローCIO(最高投資責任者)は売却の理由は明かしていない。
2月21日には、クレディ・スイスのレーマン会長の「資金流出が安定化した」という発言に対して、スイス金融当局が調査しているというロイター通信の報道で、上場来安値を記録した。今回の売却報道により、再び安値を更新する大幅下落となった。
一昨年には顧客情報流出し、昨年10月にはクレディ・スイス危機が囁かれたが、今回のハリスの売却で危機が再燃している。
●昨年10月のクレディ・スイス危機
2022年10月には、クレディ・スイス債のCDS(クレディット・デフォルト・スワップ)の保証料率が上昇するという事態があった。
同時期にはSNS発信で広まり、高水準で資金が引き出されるいわゆる“取り付け騒ぎ“もあった。
リーマンショック前年のサブプライムローンの時にも同様の取り付け騒ぎがあったことで、リーマンショックの再来が警戒されたのだ。
ロイターの報道によると、ハリスは2022年8月にはクレディ・スイス株の10%を保有していたが、2023年1月には5%へと保有割合を徐々に減らしていた。
2023年2月に発表された2022年12月期の連結決算は、最終損益が約73億スイスフラン(約1兆円)の赤字となり、経営不安がくすぶり続けている。
●もし破たんしたら?
クレディ・スイスは今後リストラに着手せざるを得ないだろう。
特に大きな損失を出した投資銀行部門には3分割案なども囁かれている。ここでも世界的に急速な利上げが影響しており、仕組み商品の価値が下がり、売却も一筋縄ではいかないかもしれない。
一方で、巨額の損失を出しても、自己資本はまだ余裕があるという楽観的な見方もあり、今すぐに破たんとはならない。
万が一、クレディ・スイスが破たんするようなら、リーマンのようにはならないとしても、欧州全体の金融や、米国の利上げにも影響を与える可能性は高い。
欧州の金融機関もリーマン以降、盤石とは言えず、第二のクレディ・スイス探しが始まるかもしれない。
米国の利上げもストップせざるを得なくなり、逆に株価にはプラスに働く逆転現象もあり得る。スイスという思わぬところから世界経済が動くことも考えられる。(記事:森泰隆・記事一覧を見る)
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