電通法改正に注目を 異業種からの新規参入も 変わる通信サービスの現状とは

2023年1月27日 10:09

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出典:各小規模キャリアの料金プランを参考に日本総研作成

出典:各小規模キャリアの料金プランを参考に日本総研作成[写真拡大]

 2022年7月に電気通信事業法(通称:電通法)が改正された。これにより、携帯電話やネット・光回線など通信サービスの契約にも変化が起きている。

■電通法改正でサービスの解約がしやすく

 今回の改正による大きな変更点の1つが、解約時に請求できる金額の制限だ。違約金や解約金は、月額料金の1カ月分相当額までとなり、契約期間での縛りも是正対象となった。

 またもう1つの変更点として、サービス解約時に遅延無く手続きできることが義務化された。例えば、電話での解約が必要なのに電話がつながりにくかったり、手続きが非常に煩雑で解約がしづらいと言った行為が禁止になったのだ。

 これらの改正は、いずれもサービスの解約をしやすくするものだ。そしてその対象は、携帯電話だけでなく、モバイルルーターやホームルーターも含まれ、ユーザー数100万人未満の小規模キャリアにも適用される。今後、解約へのハードルが低くなったことで、通信業界全体でユーザーの流動化が進むと見られている。

■消費者の認知度は低い

 株式会社日本総合研究所(以下、日本総研)によると、2022年9月に実施した消費者アンケート調査(注釈1)では、この改正に関する消費者の認知度は1割台と低く認知度向上が課題である。

 一方、既存のキャリアは改正を受けて、契約期間(契約しばり)の廃止や、解約手数料の改定、料金プランのシンプル化といった動きが見られるという。

 そして今注目されている動きの1つが、異業種・ベンチャーを含めた新規プレイヤーの参入だ。

図表:100万人未満の小規模キャリアにおける改正前(旧プラン 2年契約の場合)、改正後の解約違約金イメージは以下の通り、更新月により変動する

(出典:各小規模キャリアの料金プランを参考に日本総研作成)

 新規参入においては、インターネット関連サービスを提供する株式会社GSSが、まさにその名のとおり、au(5G、4G LTE、WiMAX)回線を利用した「シンプルWiFi」のサービスを2022年5月提供開始した。プランは1つで、データ容量無制限で月額料金は定額の4,290円のみだ。

 定額料金には端末のレンタル代も含んでおり、契約期間の縛りや解約時の解約違約金は無い。月額データ容量が無制限だからギガ数を追加する必要がなく、また他社によくある契約時にキャッシュバックしお得感を演出したり、契約途中で月額料金が変動する事もないまさに「シンプル」なサービス体系となっており、消費者にとって非常にわかりやすいものとなっている。

 また、消費者がシンプルな料金メニューを求めていることは、上述の日本総研実施の消費者アンケート調査においても、以下のように確認されており、消費者のサービス検討において重要項目となっている。

 また、ビジネスチャット「Chatwork」を提供しているChatworkは2022年4月、企業向けMVNO事業に新規参入するとして、「Chatwork Mobile」を発表した。

 法人・個人事業主を対象としたビジネススマートフォンで、発表時は、3GBのデータ通信量に10分のかけ放題と端末が付いて、価格は月額3,608円(価格はいずれも税込)だった。法人向けに必要なサービスを提供しながら、金額は業界最低水準に抑えたという。また契約期間の絞りは無く、解約金も0円としていた。

 現在は使用スタイルに合わせてプランを選びやすくするため、開始時からサービス内容を変更。月額料金は、データ通信量が1GB~20GBまで容量によって変動(660円~2420円)。通話は無制限のオプションが月1,870円で選べる。

 電通法は2023年も改正が予定されている。法律の改正は、既存サービスの内容見直しだけでなく、新規参入の動きにつながることもある。今後も電通法の改正と市場の動きには注目しておくべきであろう。

(注釈1)株式会社日本総合研究所による調査は以下の内容で実施
 2022年9月6日~9月7日に全国の20代~70代男女983名に対し、消費者のモバイル通信サービス対する要望事項および総務省の「電通法」改正などによる、消費者保護ルール変更内容の認知度に関するアンケート調査。

[PR]制作:財経新聞編集部

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