相場展望9月29日 NYダウ9/28の反発は一時的、金利引上げは継続 この反発局面は「利益確定売り」の好機

2022年9月29日 09:39

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■I.米国株式市場

●1.NYダウの推移

 1)9/26、NYダウ▲329ドル安、29,260ドル(日経新聞より抜粋
  ・欧米の中央銀行の大幅利上げ方針を背景に米長期金利が一時3.90%と、2020年4月以来12年ぶりの水準に上昇し、株式相場の重荷になった。金融引締めが景気後退を招くとの見方も株売りを促した。
  ・英政府の大規模減税策の発表を受けて通貨ポンドが急落し、英国のインフレ懸念が強まった。英イングランド銀行(中央銀行)のベイリー総裁は9/26、「必要に応じて政策金利を変更することをためらわない」と利上げを示唆する声明を出した。
  ・米連邦準備理事会(FRB)も急激な金融引締めを続ける見通しで、欧米市場で債券が売られ、長期金利が一段と上昇した。
  ・ドル高も株式市場の重荷だった。ドルの総合的な強さを示す米インターコンチネンタル(ICE)のドル指数は9/26、20年ぶりの高値を更新した。ドル高は海外売上高が大きい米国企業の業績が目減りする要因になる。
  ・航空機のボーイングや金融など景気敏感株の下げが目立ち、米原油先物相場の下落を受けて石油のシェブロンも安い。メタやネットフリックスなども売られた。アップルなど前週に売り込まれたハイテク株の一角が買い直された。
  ・機関投資家が運用指標とするSP500は▲39安の3,655と、年初来安値を更新した。

【前回は】相場展望9月26日 米国株は6/17の1番底に到達⇒新1番底をねらう展開へと進む 日本株は、底堅い展開が継続も、岸田政権の信頼性に相場が警告の可能性も

 2)9/27、NYダウ▲125ドル安、29,134ドル(日経新聞より抜粋
  ・世界的な金融引締め観測から米長期金利が4%に迫り、相対的に割高観を意識した株売りとなり、年初来安値を3営業日連続で更新し、2020年11月以来の安値で終えた。
  ・インフレ抑制のため、欧米の主要中央銀行が大幅利上げを続けるとの見方から欧米で長期金利の上昇が続いている。金融引締めが景気を冷やすとの懸念や、ドル高が外需企業の収益を圧迫するとの見方も、株式市場の重荷になった。
  ・ただ、NYダウは前日まで5日続落で▲1,800ドル近く下げた後でもあり、ハイテク株の一角が買い直され、NYダウは午前に一時+398ドル高まで上げた。ただ、買い一巡後は売り優勢となり昼頃に下げに転じ、一時▲302ドルに達した。
  ・投資家心理を測る指標となる恐怖指数(VIX)は小幅上昇し32.60で終えた。不安心理が極めて高まった状態とみなされる30を超え、投資家の先安観は強い。
  ・外食のマクドナルド・日用品のJ&J・飲料のコカコーラなどディフェンシブが下落。半導体のマイクロンが+3%超上昇、電気自動車のテスラも買われた。

 3)9/28、NYダウ+548ドル高、29,683ドル(日経新聞より抜粋
  ・英イングランド銀行(中央銀行)が英長期国債を購入すると発表し、欧米の長期金利が大幅に低下した。そのため、相対的に株式の割高感が薄れ、幅広い銘柄に買いが入った。
  ・NYダウは前日までの6営業日で▲1,900ドル近く下げており、短期的に売られ過ぎとみた押し目買いも入った。
  ・英長期債利回りが急低下したため、米長期金利は一時3.69%と前日終値の3.94%を大きく下回った。
  ・外国為替市場では、ドルが主要通貨に対して下落し、外需企業の収益を圧迫するとの警戒感が和らいだのも株買いを誘った。
  ・市場では「四半期末が近づき、機関投資家による持ち高調整の株買いも入った」との声も聞かれた。
  ・消費関連と景気敏感株が上昇し、ホームデポ・ボーイング・ディズニーが大幅高、原油先物相場の上昇でシェブロンも高い。ネットフリックスが+9%高と目立った。アップルは最新機種iPhone14の増産計画見送りと伝えられ、業績下振れが警戒された。

●2.米国株:9/28の株価反発は一時的、世界の主要中央銀行の利上げはまだ初期の段階

 1)9/28のNYダウは+548ドル高と大きく反発したが、前6営業日で▲1,885ドル下落の一時的反発の範囲とみる
  ・英国の大規模減税策発表を受け、英長期金利の急伸が米国長期金利に波及した。9/28は急伸した長期金利の調整があり、値幅調整していた米国株式相場が金利低下を好感して9/28に反発したという見方をした。
  ・世界の主要中銀の金融引締めは初期の段階で、景気減速が企業業績に響くと予想され、株価調整は道半ばにあると考えられる。
  ・したがって、今回の株価反発は「一時的」と受け止めた。

 2)米国金利低下の推移
  ・        9/27    9/28  低下幅    参考9/12
    2年債利回り 4.283%   4.119  ▲0.164     3.571
   10年債利回り 3.945    3.735  ▲0.210     3.358
  ・米国債利回りは、9/28に低下したとはいえ、9/12からは高い水準にある。米FRBはインフレ退治にための金利引上げは継続されると予想されるため、9/28の金利低下は「一時的」と思われる。

 3)NYダウ・日経平均の推移
  ・       9/12  ⇒  9/27     下落幅 下落率
   NYダウ  32,381ドル   29,134    ▲3,247 ▲10.0%  
   日経平均  28,614円    26,713(9/28)▲1,901 ▲ 6.6
  ・NYダウは9/12の直近高値からの下落幅に対して、9/28の戻り率は+16.9%に過ぎず。あと+700ドル程度の反発の可能性があり得る。
  ・日経平均は、NYダウに比べて底堅い動きをしている。

●3.米株式トレーダー、FRBが積極利上げ示唆で、今後一層急激な下げに備え(ブルームバーグより抜粋

 1)パウエルFRB議長は9/21の記者会見で、インフレ抑制の闘いが真の経済的ダメージを招くとの明確なメッセージを発し、市場もそれに反応し、株価に一層の打撃が及ぶとの観測も広がっている。
 
 2)SP500は9/23、8月半ばまでの2カ月間の上昇分をほぼ消した。

 3)米2年国債利回りは2007年以来の高水準を付けた。

●4.ゴールドマンとブラックロック、景気後退で株式に弱気に(ブルームバーグより抜粋

 1)ゴールドマンサックスは、「株式は一段と弱気に転じた」と指摘。株式市場は、世界的リセッション(景気後退)リスクを十分に織込んでいないと警告した。

 2)ブラックロックは、「景気の『ソフトランディグ(軟着陸)』は想定できない」とし、「したがって、リスク資産のさらなるボラティリティの圧力を予想する」と論じた。

●5.米シカゴ連銀エバンズ総裁、政策金利4.50~4.75%に引上げるべき(ロイター)

●6.米30年固定住宅ローン金利は9/27に、7%台に急伸(フィスコ)

●7.OECD(経済協力開発機構)、来年の世界成長予想引下げ、物価抑制へ利上げ必要(ロイター)

 1)     2022年  2023年予想引下げ
  世界経済   +3.0%  +2.8%⇒+2.2%
  ユーロ圏   +3.1   +1.6 ⇒+0.3
  ドイツ    ―    + 1.7 ⇒▲0.7
  中国     +3.2   +4.9 ⇒+4.7

●8.米7月住宅価格指数は前年同月比+15.8%と、6月+18.1%から▲2.3%鈍化(ブルームバーグより抜粋

 1)この鈍化幅▲2.3%は、統計開始後で最大。住宅価格は依然として全米レベルで上昇しているが、住宅ローン金利は今年に入って2倍に上昇し、住宅市場を冷ましつつある。

 2)米金融当局が利上げを続ける中、住宅ローン金利は一段と高くなり、住宅価格は減速が続く可能性が高い。

●9.ECBラガルド総裁、インフレ抑制のためには成長が弱回っても、利上げ継続(ロイター)

●10.露と独を結ぶノルトストリーム1・2が「同じ日に同時に損傷」、破壊工作?(読売新聞)

■II.中国株式市場

●1.上海総合指数の推移

 1)9/26、上海総合▲37安、3,051(亜州リサーチより抜粋
  ・人民元安の進行が不安視される流れとなり、4日続落し2022年5月以来の安値水準。
  ・中国人民銀行(中央銀行)が9/26、元安抑制のため外国為替取引の準備金比率引上げを発表したものの、元安の動きに歯止めがかかっていない。
  ・中国本土からの資金流出懸念も一段と強まった。
  ・また、欧米の積極的な利上げスタンスを受け、世界の景気後退(リセッション)も警戒されている。
  ・業種別では、エネルギー関連の下げが目立ち、非鉄・鉄鋼も安い。消費関連はしっかり。

 2)9/27、上海総合+42高、3,093(亜州リサーチより抜粋
  ・景気テコ入れ策に対する期待感が相場を支える流れになった。
  ・中国人民銀行(中央銀行)は9/27、1,730億人民元を市場に供給した。この供給規模は2/28以来の7カ月ぶりの高水準となった。
  ・また、中国国家発展改革委員会は9/26の記者会見で、「新インフラ」建設への支援を強化するとともに、社会資本への投資を積極的に呼び込む方針を明らかにした。
  ・当局の株価対策も追い風となった。当局は一部のファンドや証券会社に対し、10月の共産党大会の開催前と期間中に株式市場の安定を維持するよう指示したと報じられた。
  ・業種別では、ハイテク関連の上げが目立ち、医薬品・消費関連も上昇。エネルギーは冴えず、銀行も売られた。

 3)9/28、上海総合▲48安、3,045(亜州リサーチより抜粋
  ・連日の人民元の急落が懸念される流れとなり、約4カ月半ぶりの安値水準に落ち込む。
  ・9/28の人民元は対米ドルで7.20人民元を超え、2008年2月以来の元安水準で推移。中国からの資金流出も警戒された。
  ・中国景気の先行きも不安視。国際機関や投資銀行は相次ぎ、中国経済成長率見通しを下方修正している。
  ・業種別では自動車の下げが目立ち、ハイテク・不動産が安い。銀行・保険はしっかり。

■III.日本株式市場

●1.日経平均の推移

 1)9/26、日経平均▲722円安、26,431円(日経新聞より抜粋
  ・欧米の金融引締めによる金利上昇と、世界景気の悪化懸念から、前週末の欧米株が大幅安となった流れを引き継ぎ、7/21以来の2カ月半ぶりの安い水準となった。
  ・米NYダウは9/23に年初来安値を更新し、米国株先物も下落したことから、相場の先安観が一段と強まった。
  ・景気懸念を背景とした資源価格の下落でINPEX・三井物産が大きく下げたほか、米国などの成長株に投資するソフトバンクGは▲5%超下落した。
  ・トラス英政権が打ち出した大規模な経済対策によるインフレ加速や、財政悪化が警戒され、前週末には英金利が急騰。英ポンド相場の不安定な動きが株式市場のリスク回避ムードを強めた面もあった。
  ・財務省・日銀は9/22に、24年ぶりとなる円買い・ドル売り介入を実施した。円安の恩恵を受けやすい自動車関連株は軒並み安となった。トヨタは10月世界生産台数が想定を下振れし、半導体不足による生産の遅れも警戒され、重荷となった。
  ・市場では「金融引締めで株価が下がる『逆金融相場』から、企業業績の悪化で相場が下がる『逆業績相場』に局面が変わるリスクが感じられる。その場合、米金利の低下でドル安・円高へとトレンドが転換し、日本株が米国株に対し劣後するおそれがある」との声が聞かれた。
  ・東エレク・三菱重・東レ・TDK・クボタ・ソニーが下げ、KDDI・高島屋が上げた。

 2)9/27、日経平均+140円高、26,571円(日経新聞より抜粋
  ・前日に▲700円超の急落となるなど、このところ相場の下げがきつかった反動で自律反発を狙った買いが優勢だったが、総じて上値の重い展開だった。
  ・欧米の中央銀行が金融引締め姿勢を強めているのを背景に、景気後退懸念は強まっている。欧米では英国やイタリアなどの財政悪化への警戒も浮上し、積極的に運用リスクを取る投資家は少なかった。
  ・ファストリなど主力値嵩株の一角や、前日に下げた自動車株の上昇が目立った。食料品などディフェンシブ性の高いセクターに買いが入った。一方、不動産や海運株・資源関連は軟調だった。

 3)9/28、日経平均▲397円安、26,173円(日経新聞より抜粋
  ・NYダウが下げ止まらず、東京市場でも幅広い銘柄に売りが出た。米アップル関連銘柄への売りも重荷となり、日経平均の下げ幅は一時▲600円を超え、心理的節目の26,000円を下回る場面もあった。
  ・9/28の東京市場は景気下押し懸念から海運・鉄鋼・自動車といった景気敏感株を中心に売りが広がった。
  ・市場では「これまで相対的に堅調に推移してきた日本株は、現金を確保したい海外投資家の売りが出やすい」との指摘があった。
  ・アップルが新型スマートフォンの増産計画を断念したと一部メディアが伝え、電子部品株が一段安と沈んだ。
  ・9/28は3月決算企業の中間配当の権利付き最終売買日だったが、地合の悪化が鮮明になるなかで配当に絡んだ買いは限定的だった。
  ・三菱自・マツダ・郵船・川崎汽船・アルプスアルが下落、エーザイに買いが殺到した。
 

●2.日本株:9/29からの自律反発局面は「利益確定売り」の好機

 1)9/26の▲722円と急落したが、自律反発を期待した9/27が+140円と小幅上昇だった。つまり、前日の急落の戻りは下落幅に対して+19.4%に過ぎず、地合の弱さを証明した。やはり、9/28の日経平均は▲397円と大幅下落となった。

 2)9/29の日経平均は大幅反発すると予想する。
  ・テクニカル指標では、ストキャスティクスのRSIは33、FASTは5、SLOWは5と売られ過ぎを示唆している。
  ・9/12高値から9/28の下落幅は▲1,901円と大きいため、自律反発の地合がある。
  ・前日の米国株の上昇波及が期待できる。

 3)ただし、この反発の局面は「利益確定売り」と思われる。
  ・世界主要中央銀行の利上げ継続中のため、景気後退が予想されるなか企業業績は下方修正方向にある。
  ・また、主要中央銀行は過剰流動性を市場から吸い上げようとしている。つまり、株式市場から資金が減少する。
  ・9月末の上昇材料が消える。
  ・配当権利、配当再投資、9月末お化粧買いなど。
  ・よって、今回の上昇反発は「一時的」とみられるので、「利益確定売り」の場面と想定する。

■IV.注目銘柄(投資は、ご自身の責任でお願いします)

 ・1963 日揮     業績期待。
 ・4666 パーク24   業績期待。
 ・9020 JR東日本   行動規制緩和の期待。

著者プロフィール

中島義之

中島義之(なかしま よしゆき) 

1970年に積水化学工業(株)入社、メーカーの企画・管理(財務含む)を32年間経験後、企業再生ビジネスに携わる。 現在、アイマックスパートナーズ(株)代表。 メーカーサイドから見た金融と企業経営を視点に、株式含む金融市場のコメントを2017年から発信。 発信内容は、オープン情報(ニュース、雑誌、証券リポート等々)を分析・組み合わせした上で、実現の可能性を予測・展望しながらコメントを作成。http://note.com/soubatennbou

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