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オリンパス、科学事業売却で株価上昇 その行方は?
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●オリンパスが科学事業の売却を発表
オリンパスは8月29日、工業用顕微鏡などの科学事業を米ベインキャピタルに売却することを発表した。売却額は約4,300億円と報じられている。
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市場では好意的に受け止められており、株価は急反発している。8月23日に売却が報じられて以降、株価は3000円を超え、年初来高値をつけた。
100年以上続く、祖業でもある顕微鏡技術を売却するという大胆な経営戦略に見えるが、市場から好感されている理由とオリンパスの戦略を見ていこう。
●オリンパスの変遷
オリンパスは、1919年に高千穂製作所として創業。海外から技術を学び、顕微鏡の製造からスタートした。その後、顕微鏡の光学レンズ技術を生かして、デジタルカメラや内視鏡技術へと業態を変えていった。
2011年には損失飛ばしの手法で損失を隠すなどした不正会計事件により経営は窮地に陥り、事業の選択と集中を進めている。
近年では、スマートフォン普及で不振だったデジタルカメラなどを手掛ける映像事業を2021年に売却。科学事業も分社化するして改革を進めていた。
●オリンパスの狙いは?
今後は収益性の高い医療機器事業に経営資源を集中する方針と見られ、強みである内視鏡を幅広い分野で実用できるよう研究開発を進めたり、AI診断や予防医療などにも力を入れるのではという見方がある。
顕微鏡などの科学事業は、利益率は悪くなかったが、医療部門に比べれば見劣りし、オリンパスの経営体力に見合っているかを疑問視する声もあった。
今回の売却で得た資金により、医療分野の新たな事業への投資が可能になるという期待感もあり、株価は上昇している。
オリンパスの構造改革を進める中では、米国から招いた社外取締役の、いわゆる“物言う株主”の存在が大きいと言われている。
オリンパスは東芝などと同様に、“物言う株主”の存在の大きさを指摘する声もあり、今後もその存在を無視できず、会社として吉と出るか凶と出るかは分からない。
日本のお家芸と言われた産業は国際競争力を無くしており、経営の変革を迫られる企業は今後も増えるだろう。外圧による経営改革を迫られることも、避けられないようだ。(記事:森泰隆・記事一覧を見る)
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