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日本企業、「脱ロシア」の動きがストップ 再参入のハードルの高さが背景か
帝国データバンクが日本企業の「ロシア進出」状況調査(7月時点)。「脱ロシア」の動きはストップ。事業見直しは初のゼロ[写真拡大]
ロシア軍によるウクライナ侵攻が続いている。紛争の終結が見通せないどころか、戦線はむしろ拡大しており、7月23日には東南部に位置するウクライナ産穀物の輸出拠点となるオデーサ港がロシア軍のミサイル攻撃を受けた。穀物物流のさらなる混乱を生み出すもので、国際社会はこれを強く非難している。2月下旬のウクライナ侵攻直後に西側を中心とする国際社会はロシアを避難するとともに厳しい経済制裁を発動し、これに伴い欧米を中心に企業のロシアからの全面撤退が相次いだ。しかし、日本企業の動きはにぶく、多くの日本企業は事業の一時停止にとどまっており欧米企業との温度差は大きい。この背景には、日本企業は安倍ロシア外交とも相まってロシア市場への全面進出を考え、長年をかけ多額の投資を行ってきたという経緯がある。ウクライナ紛争が終結した場合、日本企業が一度全面撤退した後に再参入投資の決定をすることは難しい判断のようで、現時点では日本企業の脱ロシアの動きはストップ状態のようだ。
7月26日、帝国データバンクが「日本企業の『ロシア進出』状況調査(7月時点)」の結果レポートを公表。これによれば、帝国データバンクが米エール経営大学院のデータをもとに各国の「ロシア事業撤退」状況を推計したところ、全世界の主要企業約1300社の22%に当たる300社がロシア事業撤退を表明しており、欧米企業で「脱ロシア」の動きが加速しているようだ。特にノルウェーなどの北欧3カ国での完全撤退の動きが目立っている。一方、日本企業では帝国データバンクの調査で3%、エール大の調査では5%と、先進主要7カ国中で最低レベルだ。操業停止や輸出入停止といった距離を置く動きはみられるが、撤退には慎重姿勢をみせる企業が多い。7月22日までにロシア事業の停止や制限・撤退を新たに発表・公開した企業は、全体の4割に当たる74 社判明しているが、6月から新たなロシア事業の停止や撤退を表明した企業はゼロとなっている。
もともとロシア事業の占める割合が小さいといった事情もあるが、レアメタルやLNGなどでロシアに代わる代替供給先の確保が難航しており、また、重要な新興市場としてロシアを位置づけ長年注力してきた日本企業にとって全面撤退は「市場再参入のハードルが高い」といった課題があり、撤退の決断は容易ではないといった事情が存在する。既にロシア市場に参入済みで長年業績を上げてきた北欧を中心とする欧米企業と、これから参入拡大を狙っていた日本企業では対応に大きな温度差があると言える。(編集担当:久保田雄城)
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※この記事はエコノミックニュースから提供を受けて配信しています。
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