関連記事
死語になった自動車用語「タイヤクロスチェンジ」
●昔の車(1960年代頃~)
当時の車の一般的なレイアウトは、フロントエンジン・リヤドライブ(FR)だった。4輪のタイヤサイズは全て同じで、タイヤの回転方向も決められていなかった。そしてスペアタイヤは、4輪に装着しているタイヤと同じサイズのものが積まれていた。
【こちらも】死語になった自動車用語「ディマースイッチ」
●前後のタイヤの役割
「後輪のタイヤ」は、単に転がっているのではなくて、動力で地面を蹴る作業(駆動)をする為に、路面をグリップする。そこで単に転がる前輪と較べると、路面との摩擦が大きく、それだけ余計に摩耗する。
これに対して「前輪のタイヤ」は、後輪と違って路面を捉えて駆動する様な、力仕事をしない代わりに、単純に一方向に回転するのではなく、ハンドル操作によって車の向かう方向を変える力が加わるが、特に低速時には路面抵抗が加わる。一番負担がかかるのは、「据え切り」という、停車状態でのハンドル操作によるタイヤの向きを変える作業だ。
現在ではパワステ(パワーステアリング)がドライバーの負担を軽減しているから、あまり気にならないかも知れないが、停止した状態で無理やりタイヤの向きを変えるのは、結構な負担をタイヤに与える。
●前輪と後輪の減り方を揃えたい
他にも空気圧や、車のアライメントの状況が影響するが、いろんな外的な負荷により、前後のタイヤは必ずしも均等に摩耗しない。そこで、タイヤを極力均一に摩耗して溝が減ってくれる様に、「タイヤローテーション」を行った。
当時のタイヤは回転方向が決まっていないので、「クロスチェンジ」といって、前後左右とスペアを順番に移動させる。それによって、タイヤを均等に摩耗させようとした。
●クロスの意味
因みに、「クロス」と表現されているのは、例えば「左後輪は右前輪の位置」に行くと、押し出された「右前輪は左前輪の位置」に行く。すると「左前輪は右後輪の位置」へ行くといった具合に、車体をクロスして移動するからだ。
●最近の車
タイヤには「方向性タイヤ」と「非方向性タイヤ」の2種類が存在し、最近の乗用車に装着されているタイヤで、高性能タイヤの場合は「方向性タイヤ(回転方向が一定方向にする様に設計されている)」がある。そこで、そのタイヤを左右入れ替えると、逆回転となるのでNGだ。タイヤの回転する方向が、設計と逆にならない為には、右側は右側の前後、左側は左側の前後を入れ替えるだけとなる。
車のレイアウトも、フロントエンジン・フロントドライブ(FF)が一般的だ。それでも前後を入れ替えるのは、前輪は「駆動と操舵の両方の役割を果たす」ので、単に追従して一定方向に転がっている後輪よりも摩耗が早いからだ。
●スペアタイヤの変化
当初は他の4輪に装着しているのと同じサイズのタイヤが「スペアタイヤ」として積んであった。昔のチューブ付きタイヤは、釘でも踏んだら直ぐに空気が抜けた。
しかしチューブレスタイヤになって、釘を踏んでも徐々に空気が抜けるので、パンクしてその場でタイヤ交換をする場面は少なくなった。
そこで、「緊急用」のサイズ的には幅の狭いスペアタイヤにして、トランクスペースを少しでも稼ごうとした。そして最近では、タイヤ修理キットを搭載して、スペアタイヤすら積まなくなった。
●昨今のローテーション
前述の様に、高性能タイヤは「回転方向の指定表示」と「装着時の内側・外側の表示」がなされている。(写真1、2参照)
右側は右側の、左側は左側のタイヤを、摩耗の速い前輪と、比較的減りの少ない後輪と入れ替えるだけのローテーションをやる人も少なくない。
しかし、回転方向が指定されたタイヤ装着車では「タイヤクロスチェンジ」なる方法自体ができなくなり、死語の世界に行ってしまった様だ。(記事:沢ハジメ・記事一覧を見る)
スポンサードリンク