風雲急を告げるEV市場 国内自動車部品メーカーの活路とは?

2022年3月21日 11:28

印刷

記事提供元:エコノミックニュース

脱炭素に端を発した、ガソリン車から電気自動車(EV)へのシフトチェンジの潮流は、拡大の一途を辿りそうだ

脱炭素に端を発した、ガソリン車から電気自動車(EV)へのシフトチェンジの潮流は、拡大の一途を辿りそうだ[写真拡大]

 脱炭素に端を発した、ガソリン車から電気自動車(EV)へのシフトチェンジの潮流は、拡大の一途を辿りそうだ。大手調査会社のAstute Analytica社が発表したレポートによると、EVの世界市場は、2050年までに72兆7,980億ドルに達すると予測されている。既に欧米や中国のメーカーにEV市場を席巻されており、日本の自動車メーカーの巻き返しが期待されるが、厳しい戦いになりそうだ。

 自動車メーカーの低迷は、自動車部品メーカーの低迷にも繋がる。ただでさえガソリン車に比べ、EVの部品の数は約1万点少なくなるとされており、自動車部品メーカーにとっては逆風の真っ只中だ。事業の縮小や廃止を検討する企業も出て来る中、新たな活路を見出す企業も出始めている。長年、日本の基幹産業を支えてきた自動車部品メーカーの、新たな挑戦を見て行こう。

 電気機器大手のマブチモーター株式会社は、自動車向けの小型・中型モーターで世界的なシェアを確保している。ただ、EVシフトに伴い、排ガス処理を行うバルブに使うモーターが使われなくなり、事業環境の変更を余儀なくされた。そこで同社は、バッテリー駆動の大型モーター以外のEV向けモーターを全て手掛ける方針を打ち出した。既に欧州メーカーとの契約も進んでおり、着実にシェアを拡大する構えだ。EVの他にも、自動搬送装置(AGV)などのロボットや、医療・健康分野にも進出予定だ。

 日産自動車株式会社のグループ会社であるジヤトコ株式会社は、自動車用変速機(CVT/AT)市場で世界シェア首位を握っていたが、EVでは他社にお株を奪われていた。その同社が10日、日産の新型EV「アリア」において、減速機用部品が採用されたことを発表した。今後、ルノーなどのEVにも搭載される可能性がありそうだ。更に同社では、減速機に遊星歯車機構を採用し、従来よりも30%小型化を実現した電動アクスルを既に開発しており、今後の動向が注目されている。

 既にEV市場で一定のシェアを確保しつつあるのが、国内大手の電子部品メーカー・ロームだ。欧米の自動車メーカーにSiCパワーデバイスなど数多くの電子部品を供給している同社は、更なる車載アプリケーションの小型化を実現する周辺部品として2.5mm×1.3mm小型「PMDEパッケージ」ダイオード(SBD・FRD・TVS)のラインアップ拡充を発表した。パッケージを小型化し実装面積を42%削減しながら、従来パッケージ品と同等の電気的特性を維持しており、実装強度はむしろ1.4倍に向上するということで、EV市場からも注目を浴びている。ラインアップされた小型パッケージのダイオードは全製品で高い信頼性を確保しており、車載アプリケーションはもちろん、産業機器や民生機器など、様々な用途で採用が見込めるため、同社の躍進に繋がるだろう。

 上記のいずれの企業も、自社の得意分野を追求し、時勢の流れに臨機応変な対応をしていることで、今後の発展に繋げようとしている。折しもロシアによるウクライナの侵攻でエネルギー価格が急騰し、脱炭素の流れも、その中身に変化が見え隠れしている。先を見通すことが難しい時代だからこそ、時流を先読みし、成長戦略を実行する企業の臨機応変さを見習いたいものだ。 (編集担当:今井慎太郎)

■関連記事
自動車部品メーカー、「EV対応」企業1割未満。研究開発の負担重く
京都の電子部品関連で続く好調。コロナ禍、原材料高騰、金融引き締めでも「脱炭素」や「5G」への積極投資は継続
自動車市場の正常化に2~3年。バッテリEVへのシフト、目標より遅れる可能性

※この記事はエコノミックニュースから提供を受けて配信しています。

関連キーワード

関連記事