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SMBC日興証券に迫る危機! 現実味を帯びて来た「法人も起訴」の、絶体絶命?
SMBC日興証券が開設しているHPで「よくあるご質問」欄を見てみた。最初のコーナーが「金融商品取引法」で禁止されている取引の解説で、トップの項目が「相場操縦の禁止」である。説明欄には相場操縦行為の概要と、市場における弊害を記載し、一般投資家の保護に反すると明快に解説されている。
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金融取引に様々な誘惑があることは明らかだ。特に、株価がコントロールできれば労なくして、法外な利益を独占的に享受できる。マーケットの参加者を出し抜いて、不当に利益を上げる輩(やから)が出現することは、一般の投資家の不利益となるばかりでなく、マーケットへの信頼を喪失させて投資家を遠ざける行為である。
そのため業界では、証券会社の重要な役割の1つとして、マーケットを公正に保つ「ゲートキーパー(門番)」の機能を持つと認識されて来た。
その証券会社の社内で、営業時間中に会社の資金を使って、業務として相場操縦行為が行われていたとしたら、マーケットの信頼を失う重大な背信行為である。目下、SMBC日興証券では4人の役職員が逮捕され、副社長が事情聴取を受け、近藤雄一郎社長が謝罪会見を行って来た。
4人が関わったとされているのが、持ち株の売却を希望する大株主の意向に沿って、営業時間外に証券会社が買い取り売却先を見つけるという「ブロックオファー」取引だ。他の証券会社が買い取りから売却まで4~5日の募集期間を設定しているのに対して、SMBC日興証券での募集期間は1日とされていた。募集期間の短さが空売りを呼び込むことを意識していたかどうかは不明だが、株価を維持するために空売りに対抗する買いを入れていたとすると「相場操縦」に当たる。
逮捕された4人が現在も「正当な業務の範囲内だった」、として容疑を否認していると伝えられていることが不可解と感じるくらい、分かり易い話だ。
捜査員から連日のように、ブロックオファー銘柄の価格動向を注視しながら買いを入れていたと念を押されてもなお、相場操縦ではないとしらを切っていることになる。証券会社に長年勤務して、相場操縦の意味を理解していないことは有り得ないから、4人揃って随分往生際が悪いという印象だが、果たしてそれだけだろうか。
証券会社には、相場操縦と疑われる売買注文が入れば、注意喚起を促すシステムが整備されている。今回の件でもシステムの警告を受けた担当者が、売買部門を担当する山田エクイティ部長(当時)に確認したところ、「不正な取引ではない」と丸め込まれて充分な確認が行われなかったという。システムがあっても適切に運用されなければ、「宝の持ち腐れ」になるというお手本のような話だ。
今回逮捕につながった5銘柄はもともと流動性が低い銘柄だ。一時的に取引が膨らむと目に付くから、チェック対象となったのは当然だ。そんな「ぷんぷん匂うような銘柄」ですら、簡単にいなされてしまうチェック体制ならば、日常的に活発に売買される銘柄をチェックすることが可能なのか。ブロックオファー銘柄に対するのと同様の相場操縦行為が、「SMBC日興証券では日常的に行われていたのではないか」という疑問が湧いてくるのは止むを得まい。
副社長の関与があってもなくても、営業時間中に会社の資金で役職員が「相場操縦」行為をしていたら、両罰規定が適用されて法人としてのSMBC日興証券が起訴される事態が現実味を帯びて来る。社会的責任に敏感な機関投資家では、既にSMBC日興証券との取引停止の動きが始まり、元に戻るまでの期間も従来よりは長くなると見込まれている。SMBC日興証券にとっては、想像したくもない退屈な日々が目の前に迫っている。(記事:矢牧滋夫・記事一覧を見る)
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