ウォール街を知るハッチの独り言 全米で1億人が観るスーパーボウルの経済学(マネックス証券 岡元兵八郎)

2022年3月2日 09:38

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記事提供元:フィスコ


*09:38JST ウォール街を知るハッチの独り言 全米で1億人が観るスーパーボウルの経済学(マネックス証券 岡元兵八郎)
さて、マネックス証券の「メールマガジン新潮流」が、2月28日に配信されました。
そのなかから今回は、同証券のチーフ・外国株コンサルタント、『ハッチ』こと岡元兵八郎氏のコラム「ウォール街を知るハッチの独り言」の内容をご紹介いたします。


「全米で1億人が観るスーパーボウルの経済学 30秒のCMが8億円 その経済効果は最大で約550億円」

アメリカで最も人々を団結させるスポーツイベントがスーパーボウルと言われています。スーパーボウルは、アメリカ最大のスポーツイベントと言われているアメリカンフットボールのプロリーグ「NFL」の優勝決定戦のことです。

毎年第2週目の日曜日に行われることになっているスーパーボウルは毎年異なるスタジアム会場で開催されます。今年は2月13日にロサンゼルスにあるSoFiスタジアムで開催されました。今回の試合のホストであるロスアンゼルス・スーパーボール・コミッティは、今回のスーパーボウルの試合が地元にもたらす経済効果は2.34億ドルから4.77億ドル(約270億円から550億円)(注:以下全て1ドル115円で計算)の間だと試算しています。

SoFiスタジアムには7万席あり、最大10万席まで増やすことができるそうです。チケットの値段は一枚950ドルから6,200ドル(約11万円から71万円)で、チケット収入だけで、少なく見積もっても6,650万ドル(約77億円)と言われています。

今回の試合を見るために全米から10〜15万人のスーパーボウルファンがロスアンゼルスを訪れ、平均4日間宿泊すると言われていました。その結果、ロスアンゼルス地域ではホテル、レストランなどで2,200から4,700人の雇用を生み出し、宿泊代、レストランなどの飲食費、その他の直接の経済効果は2.59億ドル(約300億円)ほどだと言われています。その結果地元に落ちる税収は1,200〜2,200万ドル(約13.8億円から25.3億円)とのこと。

そのスーパーボウルの視聴者数ですが、過去5年間の平均が1.12億人と、3人に1人のアメリカ人がこの試合を観ていることになります。これほど多くの視聴者に観られているテレビ番組は他にはありません。スーパーボウルの試合は、225を超えるテレビ局に加え、450ものラジオ局でも生中継され、180の国々で視聴されているそうです。スーパーボウルを1人で観るのは全体の5%だけで、95%が家族や友達と集まって観るそうなのですが、その数平均17人と言われています。

面白いのは、スーパーボウルの翌日の月曜日、アメリカでは羽目を外した労働人口の6%が病欠で休むというデータがあるそうです。特に自分が応援するチームが勝った場合、試合が終わった後も祝宴となり盛り上がるのでしょう。

それほどアメリカ人が熱狂するスポーツイベントですが、スーパーボウルのCMも試合と同じくらい注目されるものとなっています。広告予算がデジタル広告へシフトしていると言われている中、スーパーボウルの広告は別格です。

全米で1億人が観るお祭り騒ぎのスーパーボウルは、企業にとっては自分達のサービスや製品をPRするために最高の機会で、スーパーボウルのCMは、企業がアイディアと大金を使うことでも有名です。スーパーボウルを放映したNBC放送によると、昨年550万ドル(約6.3億円)だったCMは、今年はこれまでの最高の650万ドル(約7.5億円)へと値上がりし、中には700万ドル(約8億円)というCM枠もあったそうです。東京のキー局の通常のCMが30秒で200万円もしないようですから、その違いの大きさはお分かりいただけるでしょう。

米国の全米ネットワークの普通の番組のCMは同じ30秒で105,000ドル(約1,200万円)、NBC放送のサンデーナイトフットボールという通常のNFLの試合のCMコストでも811,679ドル(約9,334万円)とのことですから、30秒で700万ドル(約8億円)というプライシングがどれだけ企業にとって宣伝の場であるかご理解頂けると思います。今回の番組では70を超えるCMを放送したNBC放送のCM収入は5億ドル(約575億円)近くあったと言われています。

そんな高額をかけて放送するCMも、アメリカでは誰でも知っている有名人の出演はもとより、アメリカ的なユーモアを散りばめたエンターテイメント性があり、毎年試合と同じくらい話題になっています。CMのスポンサーは、昔から変わらないスポンサーもあれば、アメリカの今を反映する企業のものもあります。今年の70以上のCMのうち30は新しいスポンサーによるものだということで、CMにも若返りが起きており、このCMを見ればその年の旬な業界や企業を知ることができます。

毎年変わらないのは、ビール、ポテトチップやドリトスのようなアメリカの肥満文化を象徴するコマーシャルです。コロナ禍で人気になったウーバーイーツのCMもあり、食べ物以外の配達も始めましたよという内容のCMは面白おかしくできていました。近年の旬な業種としては仮想通貨です。 仮想通貨交換所のコインベースのCMは、会社名も出ず30秒の間QRコードが画面上で左右上下へゆっくり動くだけという、というこれまでなかった、ある意味斬新なもので、視聴者の注目を得ました。QRコードをスマホカメラで見ると、コインベースのホームページに移動するというものです。韓国のKIAやBMWのEV車のCMもよくできていました。アマゾンのCMは、AIスピーカーのアマゾンエコーが、もしも私たちの心を読めるようになった世界がどうなるのかをコメディタッチに見せてくれる非常に面白いものとなっています。

今年はマーケットの乱高下する中、ウクライナ情勢も加わり、私はスーパーボウルを観る余裕はなかったのですが、1年後のアリゾナ州で行われるスーパーボウルについては、バドワイザーを片手にポテトチップをつまみながら、ゆっくり試合を楽しめる平和な世の中になっていることを願いたいと思います。


マネックス証券 チーフ・外国株コンサルタント 岡元 兵八郎
(出所:2/28配信のマネックス証券「メールマガジン新潮流」より、抜粋)《FA》

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