原価高騰、リーマン・ショック以来の水準 半数超の企業、価格転嫁できず

2022年2月1日 11:05

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記事提供元:エコノミックニュース

帝国データバンクが「企業の価格転嫁の動向調査(2021年12月)」。企業の64.2%で仕入単価の上昇がリーマン・ショック以来の水準に。企業の半数超で販売単価への価格転嫁ができず。

帝国データバンクが「企業の価格転嫁の動向調査(2021年12月)」。企業の64.2%で仕入単価の上昇がリーマン・ショック以来の水準に。企業の半数超で販売単価への価格転嫁ができず。[写真拡大]

 ワクチン接種の普及で世界的に経済活動の再開が一斉に進められており、これによる需要の急増で原材料価格が急騰している。需要減を見込んだ原油減産の影響による原油高騰や半導体不足、さらに感染力の強いオミクロン株流行の影響で労働稼働率の低下が起こるなどサプライチェーンにも混乱が生じており、これが原材料高に拍車をかけている。国内でも既に、レギュラーガソリンの1Lあたり平均価格が170円を超えており、政府もガソリン価格の高騰を抑制すべく石油元売りに対する補助制度を発動することを決定している。今後も原材料価格の上昇による企業への影響が懸念される。

 これに関し、帝国データバンクが「企業の価格転嫁の動向についての調査」を実施している。帝国データバンクは昨年12月末~本年1月上旬に全国2万3826社を調査対象(有効回答数は1万769社)とし調査を実施、その結果レポートを1月26日に公表している。これによれば、仕入単価が前年同月と比べて上昇した企業の割合は64.2%となっており、これはリーマン・ショックがあった2008年9月の65.5%と同水準の多さだ。業種別では、鉄鋼や石油卸売が含まれる「鉄鋼・非鉄・鉱業製品卸売」で92.7%と極めて高く、「化学品製造」で83.3%、「機械製造」82.0%、「電気機械製造」81.4%、「建材・家具、窯業・土石製品製造」80.3%など、基礎素材型産業を中心に製造業での原価高騰が顕著となっている。また「飲食店」の83.1%や専門小売業などの川下にも影響が出てきているようだ。

 価格転嫁状況を見ると、仕入単価が上昇した企業のうち販売単価も上昇したとする企業は43.8%にとどまった。販売単価が変わらないとした企業は47.9%と半数近くで、中には低下した6.3%とする企業もあり、合計すると54.2%と半数超えの企業が価格転嫁できていない状況となっている。業種別でみると、「鉄鋼・非鉄・鉱業製品卸売」では87.2%で販売単価も上昇しており、「建材・家具、窯業・土石製品製造」では52.7%、「化学品製造」51.1%など製造・卸を中心に半数を上回った。一方、「飲食店」28.6%や「飲食料品・飼料製造」31.8%などの飲食料品関連では価格転嫁が3割程度にとどまるなど、コロナ禍の消費自粛の中、対個人消費部門では原価高騰を価格転嫁出来ずに厳しい経営環境下にあるようだ。今後、価格転嫁できない企業は資金ショートが懸念され、また価格転嫁による消費者物価高騰も懸念される。(編集担当:久保田雄城)

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