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日大の「私学助成金」不交付は正しいか? 再発防止策で迷走する文科省にガバナンスはあるのか
26日、日本私立学校振興・共済事業団は日本大学に対する21年度分の私学助成金の全額を、不交付とすることを決定した。日大は今後5年間で、最大300億円を越える減収リスクを抱えることになった。元理事らによる背任事件や田中英寿前理事長による脱税事件など、一連の事件の発生を、重大に受け止めた上での対応だという。
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学生数や教員数などを参考にして、日大に配分されて来ていた私学助成金は、20年度には約90億円が交付されたが、この金額は早稲田大学に次ぎ、全国で2番目に多い。
私立大学は、学生から納付される授業料をなどを原資として、教職員の人件費や校舎の維持費などを賄っている。更に、私学経営の健全性を高めると共に、学生や家族の修学上の経済的負担を軽減させて、人材の育成や学術研究の充実を図ることを目的に、私学助成制度がスタートしたのが1970年。優に50年を超える実績がある。
日大の在籍者数は、21年5月1日現在で7万7309人を数えるから、前年の助成金実績額約90億円は、1人当たりにすると11万6415円となる。日大の在籍者は毎月約1万円の公的な補助が受けられていた勘定だ。
私学助成金は、学校経営に絡む刑事事件で役員教職員などが逮捕や起訴された場合、減額や不交付にする決まりがある。そのため不交付にするという理屈だが、そもそも役員や教職員の不祥事が不交付事由となること自体に疑問がある。学生の不祥事で学生が不利益を被るのであれば辻褄は合うが、役員や教職員の不始末で学生が不利益を被るのは不条理というものだろう。
不始末を犯した役員や教職員は、社会のシステムと同様に自らの責任で刑を受け、損害を弁済するのが本来の在り方ではないのか。この矛盾を想起することなく、規則を見直す議論すら見られないのは、文部科学省や日本私立学校振興・共済事業団の怠慢と言わざるを得ない。
尚、日大で発生したガバナンス上の問題を是正するために、文科省の「学校法人ガバナンス改革会議」が、(1)評議員会の権限強化と(2)現役理事・監事・教職員の評議員兼務を認めない、とする報告書をまとめた。これに対して、私学の代表者などで構成される「学校法人制度改革特別委員会」が猛反発をしている。短く言うと「今のままで構わないから口を出すな」という主張だ。
情けないのは既に文科省も腰砕け状態で、元の木阿弥が懸念されている状況にある。ガバナンスを推進すべき文科省自体にガバナンスがない、という笑えない話が進行中である。日大事件の教訓が生かされるのか、うやむやにされるのか。いくつもの問題を抱えた文科省は、重大な岐路に立っていると言えるだろう。(記事:矢牧滋夫・記事一覧を見る)
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