日大、逮捕された田中英寿容疑者が理事長を辞任 いよいよ「ぶちまける」のか?

2021年12月3日 13:36

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 日本大学を舞台に展開していた背任事件は、東京地検特捜部に所得税法違反容疑で逮捕された田中英寿容疑者が、理事長職を辞任する意向を大学側に伝え、臨時に開催された理事会で了承される事態に発展した。

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 理事会では後任の理事長に加藤直人学長の就任を決めたのち、東京地検特捜部から提出を促されながら保留していた、日大医学部付属板橋病院に関わる背任事件の被害届を提出することを決定した上で、加藤新理事長を除く全ての理事が辞表を提出した。

 日大では、田中容疑者が理事長に就任した2008年以降、カネと暴力にまつわる話題が度々注目されて来た。

 2013年、日大の工事を受注した建設会社や電気工事会社から、田中容疑者が500万円のバックマージンを受け取ったのではないかという疑惑を「読売新聞」が報じている。日大には国庫から多額の私学助成金が交付されていたため、国会でも取り上げられる大問題に発展し、所管する文部科学省が事実関係の確認を日大に指示した。日大では弁護士による第三者調査を行って、「金銭授受はなかった」という結論を報告して終了している。

 2014年には、田中理事長(当時)と指定暴力団住吉会の会長らとのスリーショット写真や、山口組組長とのツーショット写真が流出して大騒ぎとなった。2013年に、「みずほ銀行暴力団融資事件」が発覚して、金融庁が業務改善命令を発令。責任を取って、みずほの首脳陣が退陣に追い込まれた記憶が鮮明だったから、「大学もか?」と一層の注目を集めた。

 田中理事長(当時)は日本オリンピック委員会(JOC)副会長を辞任して対外的な責任を取る姿勢を見せたが、日大の内部では「合成写真だ」と強弁して追及を逃れたと言う。

 記憶に新しいのは、2018年にアメリカンフットボール部で発生した「悪質タックル」問題だ。この問題で黒子として登場した井ノ口忠男理事(当時)は、反則行為をした選手と父親を恫喝して口封じを計ったことが明るみに出て、理事を辞任した。

 だが2年後の2020年9月には理事として復帰して、今回の背任事件で主役並みの働きを見せているから、18年の辞任時には早々に復帰させる筋書きがあった、と見られても止むを得まい。

 アメフト部問題で設けられた第三者委員会の最終報告書では、「田中理事長は、代表者としての説明責任を果たしていない」と断罪されながら、とうとう1度も会見を開かずに逃げ切った。

 今までの体験は今回の背任事件での対応に十分生かされていたから、東京地検特捜部の事情聴取に対して「(背任事件に関わることは)知らない」「(現金は)貰っていない」で通して来た。今までと違ったのは、予期しない家宅捜索を受けて多額の現金を押さえられていたことだ。2億円内外の現金を自宅に置いていて、「ちゃんこ屋の儲けと理事長としての収入だ」という説明が通るのなら、税金を払う人はいなくなる。

 田中容疑者は何かの折に、「俺が逮捕されたら裏金を全部ぶちまける」と気焔を上げていたと伝えられるが、本当に暴露する胆力を持ち合わせているかどうかは疑問だ。「強がりを口にする者ほど小心者だ」というのは、敢えて言うまでもない。

 12月2日、東京地検特捜部は3度目になる田中容疑者宅の家宅捜索を東京国税庁と共に行った。見逃した現金が他にないかを含めて幅広く捜索しているようだ。「徹底的にやる」という強烈な意思が感じられる続報である。(記事:矢牧滋夫・記事一覧を見る

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