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SMBC日興証券が相場操縦の容疑で強制調査受ける、「異常事態」(上)
証券取引等監視委員会が、SMBC日興証券の強制調査に乗り出したことが注目を集めている。容疑はSMBC日興証券の従業員等が、特定銘柄の株価を「変動させないように」不正な取引を繰り返すという相場操縦の疑いだ。
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大口投資家が売買する株式取引は、投資家のスケールが大きくなるほど数量が膨らむことは当然だ。その投資家が保有していた株式を市場で売却しようとする場合、大量の保有株を一気に売り出すことは、禁じ手のようなものだ。市場には取引動向に対する疑心暗鬼と揣摩臆測が渦巻いているから、大量の売り注文が出たとなると動揺して追随する輩が出ることは避けられない。下手をすると当該特定銘柄に対する売り注文が連鎖して暴落する可能性すらあるから、大口投資家は利益確定する場合にも細心の注意を払う。
収穫する筈の利益をみすみす失う情けなさは当然だが、売却銘柄の企業の看板にキズを付けるようなヘタは打てない。かと言ってちまちまと時間をかけて処分する煩わしさを、甘受することも嫌う大口投資家が打つ手は、営業時間終了後の立会外に当日の終値で懇意の証券会社に引き取らせることだ。証券会社はビジネスチャンスを前にして、引き取ってくれそうな投資家の顔と人数を思い描いて、商売になると思えば取引に応じる。
取引時間終了後に、間を置かず引き受けた株式を見込み先の投資家にはめ込むことが出来れば理想的だが、口銭を稼ぐのはそんなに甘くない。様々な事情で捌ききれずに、日付が変わることもある。
翌営業日に、当該株式の価格が上昇する幸運に恵まれると一連の取引は無事終了するが、折悪しく想定外の事態が発生して、株価が下落することも珍しくない。証券会社が大口投資家の売却をその日の終値で引け受けると言っても、価格が確定している訳ではない。下落した株式を前営業日の終値で買い取ってくれる、お人好しの投資家は存在しない。かと言って、はめ込み先の投資家を納得させるために、前営業日終値を下回るような取引価格に応じると、売却を希望する大口投資家がへそを曲げて了解を得ることは難しい。
そんなことを繰り返していると、「営業力のない証券会社」というレッテルを貼られて、双方から相手にされなくなる恐れがあるから、当該取引の責任者も担当者も取引成立のために必死になる。
従来、証券会社の営業を背負っていたのは歩合の外務員だった。歩合だから売買金額と回数が多い方が給料は増える。お人好しの投資家の資金で勝手に売買を繰り返す不届き者が存在したから、気が付いた時には投資資金が手数料に食い潰されて、泣きを見る投資家が珍しくないと思われていた。
外務員が身も蓋もなく「株屋」と呼ばれたのは、そうした背景があったからだ。日本で庶民の大半が銀行預金以外の運用をしてこなかった原因の1つが、「株屋に丸裸にされた」という嘘か本当かわからない話を伝え聞いた庶民の防衛本能にあった訳だ。(記事:矢牧滋夫・記事一覧を見る)
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