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相場展望11月4日 米FOMC結果発表で買い安心感、最高値更新 自民党の絶対多数維持で、好決算個別銘柄物色が続く
■I.米国株式市場
●1.NYダウの推移
1)11/01、NYダウ+94ドル高、35,913ドル(日経新聞より抜粋)
・NYダウを含む主要3株価指数が連日で過去最高値を更新した。市場予想を上回る米企業決算の発表が相次ぎ、米景気や企業業績に対する楽観が広がり、NYダウは一時+190ドルまで買われた。
・7~9月期決算で米主要500社の56%が発表したが、その内82%が1株利益で市場予想を上回った。
・10月ISM製造業景況感指数は60.3と、好不況の境目50を大幅に上回った。
・景気敏感株を中心に買われ、航空機ボーイング、建機キャタピラーが買われた。
・ただ、11/3の米連邦公開市場委員会(FOMC)の結果発表を控えて、様子見ムードも強く、短期的な過熱感から売りも出て、朝方の買い一巡後は伸び悩んだ。
【前回は】相場展望11月1日 衆院選挙イベント「お祝儀」⇒決算発表に注目 米バイデン政権は看板の財政支出と増税案を変更
2)11/02、NYダウ+138ドル高、36,052ドル(日経新聞より抜粋)
・市場予想を上回る米企業決算の発表が相次ぎ、米景気の底堅さを意識した買いが入り、NYダウは4日続伸した。
・11/3に米連邦公開市場委員会(FOMC)の結果発表を控えて様子見ムードも強く相場は積極的な売買が手控えられ上値が重くなる場面もあった。
・米主要500社の11/1時点での7~9月期予想増益率は40%と、10月初めの29%から切り上がった。これまで発表した323社の内、83%で1株利益が市場予想を上回った。
・景気敏感株が買われ、化学のダウ、事務用品のスリーエム、金融のゴールドマンサックスが続伸した。
3)11/03、NYダウ+104ドル高、36,157ドル(日経新聞より抜粋)
・米国の中央銀行にあたる連邦準備制度理事会(FRB)が11/3、米連邦公開市場委員会(FOMC)で、市場の予想通りにテーパリング(量的緩和の縮小)開始を決めた。また、利上げに慎重な姿勢を維持したことで、米株に買い安心感が広がった。
・FRBは現在の月額1,200億ドル規模の資産購入額を11月から毎月150億ドル減らす方針を示した。来年6月には新規購入がゼロになる計算だ。
・パウエル議長は記者会見で、「今は利上げする時ではない」と繰り返した。そのため、事前に強まっていた利上げ早期化の観測が和らいだ。株式市場への資金流入が続くとの見方が相場を支えた。
・NYダウは一時▲160ドル安まで下げたが、議長の会見中に上昇に転じた。
・IT関連銘柄の多いナスダック総合指数も上昇し、5営業日連続で最高値を更新した。
・NY原油市場では、米国の在庫量が市場予想を上回ったことからWTI原油先物価格が下落し、一時80ドル/1バレルを下回った。
●2.米連邦公開市場委員会(FOMC)の結果発表と、パウエルFRB議長発言 (フィスコ)
1)FOMC発表内容
・FRBによる量的緩和の縮小開始は11月から
⇒ 購入額を毎月150億ドル削減
⇒ 米10年国債利回りは1.55⇒1.59%へ上昇
・政策金利据え置きを決定
フェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を0.00~0.25%に据え置き
⇒ 市場の予想通りだった
・インフレは一過性に要因で高い
⇒ FRBはインフレが一時的との見方を維持
⇒ 供給混乱が緩和すれば、インフレは弱まると予想
・金融緩和姿勢は維持すると予想
・全会一致で決定
2)パウエル議長の記者会見の発言要旨
・供給と需要の不均衡が物価に反映
・会合の焦点は、資産の購入の縮小であって、利上げではない
・利上げに関し、FRBは辛抱強くなれる
・インフレへの対応は躊躇しない
・今は利上げの時期ではない
・来年の4~6月期、7~9月期にはインフレは弱まるだろう
・物価と賃金のスパイラル的上昇は確認していない
・一過性とは、恒久的な物価上昇ではないことを意味する
・見通し次第で、資産購入ペースを加速、または鈍化する準備をする
3)パウル議長発言の受け止め方
・パウエル議長は、今は利上げの時期でないと言及した
・FRBは警戒されたほどタカ派色を強めず
・NYダウはマイナスから上昇に転じ史上最高値を更新した
●3.米ADP民間雇用者数57.1万人増、予想を上回り4カ月で最大の伸び(ブルームバーグ)
1)雇用主による採用状況が改善しつつあることを示唆。
2)予想は40万人増だった。
●4.米10月ISM製造業景況指数66.7、予想62.0・9月61.9を上回る(フィスコ)
●5.バイデン氏、大型歳出法案成立に向け民主党上院議員を説得へ(日テレ)
1)気候変動対策・子育て支援などを盛り込んだ1兆7,500億ドル(約200兆円)の大型歳出法案に、民主党上院議員が不支持を表明したことで、一転、不透明な状況となる。
2)バイデン大統領は、民主党内で規模の縮小を求める穏健派の意見を踏まえ、当初案3.5兆ドル⇒1.75兆ドル規模に大幅譲歩した枠組みを発表していた。
3)法案成立には、議会上院で過半数の賛成が必要で、民主党内で1人でも反対すれば、成立は困難な状況にある。
●6.バイデン氏に逆風、大接戦のバージニア州知事選、負ければトランプ氏の影響拡大(FNN)
1)当初は、民主党候補が優勢と見られていたが、バイデン政権の(1)アフガン撤収を巡る混乱、(2)物価の高騰、などに有権者の不満が高まってきている。
2)共和党の候補者が勝利すれば、2022年の中間選挙に向けて、トランプ氏の影響が拡大するのが確実で、バイデン政権にとって大きな打撃となる。
⇒ 米主要メディアによると、11/2開票の南部バージニア州知事選で、共和党候補のヤンキン氏が当選確実になった。同知事選は来年11月の中間選挙の前哨戦と位置づけられており、民主党のバイデン大統領にとって打撃となる。民主党は戦略見直しを迫られそうだ。(共同通信)
●7.米ファイザー、今年のワクチン売上が4.1兆円となり、全体売上の4割超(朝日新聞)
■II.中国株式市場
●1.上海総合指数の推移
1)11/01、上海総合▲2安、3,544(亜州リサーチ)
・中国の景気回復ペース鈍化が警戒される流れとなった。
・10/31公表の10月中国製造業PMIは49.2となり、市場予想49.7に反して前月の49.6から低下した。景況判断の分かれ目50を、前月に続き割り込んでいる。
・業種別では、消費関連の下げが目立ち、景気動向に敏感な素材株も冴えない。反面、金融株はしっかり、業績改善が意識されたハイテク・公益が買われた。
2)11/02、上海総合▲38安、3,505(亜州リサーチ)
・景気の先行きを不安視した売りが続く流れとなった。
・新型コロナ感染が中国で再拡大しつつあるなか、各地で行動規制が強化された。北京冬季オリンピックの開催を来年に控え、中国政府は「ゼロコロナ政策」を推進している。経済活動の停滞が懸念される状況にある。
・中国経済対策への期待感で、上海株式市場は小高く始まったが、勢いは続かず、下げ幅を徐々に広げた。
・業種別では、景気動向に敏感な資源・素材が安く、金融株も冴えない。反面、自動車株はしっかり、半導体・酒造・食品・空運も買われた。
3)11/03、上海総合▲7安、3,498(亜州リサーチ)
・米FOMCの発表を控え、当面の利益確保の売りが優勢となった。
・業種別は、酒造・太陽光発電・資源・銀行など幅広い業種の銘柄が下落した。反面、免税品販売株が買われた。
●2.李克強首相の発言「中国経済は、新たな下押し圧力に直面」(ロイターより抜粋)
1)中国の李克強首相は11/2、中国経済が新たな下押し圧力に直面している、と述べた。国営メディアが報じた。
2)李首相は、経済活動を合理的な範囲内にとどめ、産業部門に対する支援措置を講じるとした。
●3.中国10月財新サービス業PMIは53.8、市場予想53.1を上回る(フィスコ)
●4.米ヤフー、中国本土から撤退、中国の規制強化で事業継続が困難に(時事通信)
●5.バイトダンスの張一鳴氏が会長辞任、中国IT企業創業者退任相次ぐ(ブルームバーグ)
1)動画投稿アプリ「Tik Tok」を運営する中国の北京字節跳動科技(バイトダンス)の創業者の張一鳴氏が会長を辞任した。張氏は5月に最高経営責任者(CEO)職を辞している。
2)中国政府によるハイテク業界への締付けが約1年前に始まってから、中国ではハイテク企業の経営陣交代が相次いでいる。
■III.日本株式市場
●1.日経平均の推移
1)11/01、日経平均+754円高、29,647円
・9/28以来、約1カ月ぶりの高値となった。
・自民党が衆院選で市場予想を上回る261議席を獲得し、絶対安定多数を単独で確保できたことで、政治不安が後退し安心感が広がった。
・岸田首相は、大型経済対策を11月中旬に策定する方針を表明した。
・政治の安定で、積極的な財政出動への期待も高まり、景気敏感株を始めと幅広い銘柄に買い資金が向かった。
・国内企業の決算発表が本格化し、大幅増益や通期見通しの上方修正が相次いでいることも追い風となった。
2)11/02、日経平均▲126円安、29,520円(日経新聞より抜粋)
・米連邦公開市場委員会(FOMC)の結果公表を日本時間11/4に控え、3営業日ぶりに反落した。公表後の株価変動リスクを避けるために持ち高を調整する売りが出た。前日に、日経平均が+754円高となったことも、売りを促した。
・もっとも、好決算銘柄に買いが入り、日経平均は下げ渋った
・岸田政権が今後打ち出す経済対策や、コロナ禍からの経済正常化への期待感が根強く、売り急ぐ動きは乏しかった。
・今期業績見通しを上方修正したTDK・京セラが大幅高となり、2銘柄で日経平均を+63円押し上げた。反面、三井物産・双日、最終利益が減益の協和キリンが下げた。
3)11/03、祝日「文化の日」のため、休場
●2.日本株は、衆議院選挙で自民党勝利、好決算銘柄への個別物色が続くと予想
1)予想外の自民党の絶対安定多数の261議席数獲得を材料に、11/1は日経平均+754円高となった。
2)衆議院選挙イベント結果を受け、一部外資系の超短期筋による買い仕掛けと、外資系ヘッジファンドのアルゴ取引による株価上昇の増幅効果もあり、大幅上昇をもたらしたと見ている。したがって、現在はまだ、腰の入った買い主役のある株価上昇とは見られないため、慎重姿勢が望まれる。
3)テクニカル的には、
・5日移動平均線が上向きに転換し、強気基調に転換した。
・しかし、一目均衡表では売り圧力の強まりが見てとれる。
・つまり、上にも下にもぶれやすいと言える。
4)11月は、過去10年間を見ると、9勝1敗と月間上昇率が非常に高く、上げ潮基調の月間である点に注目したい。
5)7~9月期決算発表が相次ぐ期間中の相場は、好業績発表の個別物色が続くと思われる。
●3.政府経済対策原案:コロナ無利子・無担保融資を3月まで延長など(毎日新聞)
1)新型コロナ対策を中心に、これまでの政策の継続が目立つ内容となっている。
2)政府経済対策案の骨子
(1)新型コロナウイルス感染症の拡大防止
・非正規・子育て世帯などへのプッシュ型給付金
・地域や業種を限定せず事業規模に応じた給付金
・政府系金融機関による実質無利子・無担保融資を来年3月まで延長
(2)「ウイズコロナ」下での社会経済活動の再開と危機管理の徹底
・旅行需要喚起策「Go Toトラベル」再開
・新型コロナ治療薬の確保、経口薬の年内実用化
(3)未来社会を切り開く「新しい資本主義」
・賃上げを行う企業への税制支援の抜本強化
・最低賃金引上げに向けた中小企業、小規模事業者への支援
・先端半導体の国内生産拠点の確保
(4)防災・減災、国土強靭化の推進など安全・安心の確保
・情報・通信、エネルギー、上下水道等のライフラインの対災害性の強化
●4.企業業績
1)野村 2021年9月中間最終利益+517億円黒字、前年同期比▲75.4%減(時事通信)
海外事業で損失計上(米アルケゴス▲654、2007・2008年米取引▲390億円)
2)TDK 2022年3月通期利益+1,570億円、前年比+40.8%増に上方修正(ロイター)
自動車やノートPC向け需要が堅調
3)丸紅 2022年3月期最終利益+2,300⇒+3,500億円と1.5倍上方修正(時事通信)
鉄鉱石・原料炭など商品市況高止まり、北海油田・ガス事業を売却へ
4)日立造船 上半期営業利益▲14.2億円赤字、前年同期比▲1.1億円悪化(フィスコ)
5)日新 2022年3月期営業利益+40⇒64億円に上方修正(フィスコ)
6)ポーラオル 7~9月期営業利益+31億円で、前年同期比▲5.8%減益(フィスコ)
7)協和キリン 7~9月期営業利益+467億円、前年同期比▲7.6%減益(フィスコ)
8)日本航空 2022年3月期最終赤字▲1,460億円、前期▲2,867億円赤字(東京商工)
●5.企業動向
1)三菱電機 液晶テレビ事業の縮小を発表、2024年に製造終了 (時事通信)
2)ホンダ 10月米新車販売は前年同月比▲23.5%減の9.7万台(時事通信)
半導体不足・部品供給網の混乱で生産が需要に追い付かず
3)トヨタ 10月米新車販売は前年同月比▲28.6%減、3カ月連続減少(時事通信)
■IV.注目銘柄(投資は自己責任でお願いします)
・3861 王子 業績好調。
・4912 ライオン 業績堅調。
・7564 ワークマン 業績堅調。
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