相場展望10月28日 NYダウ、ダブルトップとなるか?注目 日経平均、『超短期でドテンの繰り返し』に警戒

2021年10月28日 09:01

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■I.米国株式市場

●1.NYダウの推移

 1)10/25、NYダウ+64ドル高、35,741ドル(日経新聞より抜粋
  ・市場予想を上回る米主要企業の決算が続くとの期待が、投資家心理を支えた。
  ・ただ、短期的な過熱感から利益確定の売りも出たため、上値は重かった。
  ・調査会社リフィニティブの10/25集計によると、米主要500社の7~9月期決算発表を終えた企業の83%で1株当たり利益が市場予想を上回った。売上高が市場予想を上回った企業も79%に達した。この先も、好決算が続くとの楽観が買いを誘った。
  ・米バイデン政権の看板政策の1つである、子育てや教育支援・気候変動対策の関連法案について、与党の民主党内での協議進展を好感した買いも入った。当初案の3.5兆ドルから大幅縮小する方向で調整が進む模様。合意できれば、膠着している1兆ドル規模のインフラ投資計画も進むと見られる。

【前回は】相場展望10月25日 中国、不動産税導入で景気後退・世界経済悪影響 日本株は、衆議院総選挙結果次第で揺らぐ可能性

 2)10/26、NYダウ+15ドル高、35,756ドル(日経新聞より抜粋
  ・市場予想を上回る米主要企業の7~9月期決算が相次ぎ、好感した買いが入った。
  ・良好な米経済指標が発表されたのも、株式相場を支えた。米10月消費者信頼感指数は113.8と、前月109.8から低下すると見込んでいた市場予想に反して上昇した。個人消費の改善期待が強まった。
  ・もっとも、短期的な過熱感で利益確定売りも出て、NYダウの上値は重かった。

 3)10/27、NYダウ▲266ドル安、35,490ドル(日経新聞より抜粋
  ・クレジットカードのビザが10/26発表した決算内容は市場予想を上回ったものの、物足りないと嫌気され、▲7%安となり、ビザ1銘柄でNYダウを▲105ドルあまり押し下げた。
  ・米債券市場で米長期金利が一時1.51%まで低下したため、長短金利差が縮小し、利ザヤ悪化懸念から金融株が売られた。
  ・NYダウは連日過去最高値を更新しており、利益を確定する売りが景気敏感株を中心に出た。
  ・一方、好決算を発表した銘柄には買いが入り、相場を下支えした。ソフトウェアのマイクロソフト、飲料のコカ・コーラ、外食のマクドナルドも高い。

●2.米国株式相場は、連日、過去最高値更新も、上げ幅が縮小傾向にあり「勢いが減少」方向

 1)NYダウの上げ幅の推移
  10/12 +534ドル ⇒ 10/26 +15ドル ⇒ 10/27 ▲266ドル

 2)株式相場にとって「天敵」の『インフレ懸念⇒金利上昇』への恐れを市場は感じている可能性がある。

 3)いずれにせよ、終値ベースで9/30安値33,803ドル⇒10/26高値35,756ドルと、+1,953ドル高・+5.78%上昇しているだけに、「調整」が必要な位置に到達したと思われる。

 4)商品指数の上昇が、インフレ圧力となる可能性
  ・WTI原油先物価格は10/26に84.65ドル(終値)と高値更新した。
  ・国際商品のCRB指数も、10/26に240にまで高騰した。

 5)長短金利差の縮小で、銀行の利ザヤ減少で金融株変調の恐れ(NYダウにマイナス)
  ・10年vs2年物金利差  10/20 1.272% ⇒ 10/27 1.04%
  ・10年国債利回り    10/21 1.701% ⇒ 10/27 1.545%

 6)その他、新興国株式市場の下落は、世界の資金の流れ変調を示唆しているかに留意
  ・ブラジル・ボベスパ指数 10/15 114,647 ⇒ 10/27 106,363 ▲7.2%安
  ・アルゼンチン・メルバル指数は、10/27に▲4.0%安

 7)NYダウはチャート上、ダブルトップを付ける可能性に注目したい
  ・ダブルトップは、相場が下落するサインとなり得る。
  ・10/27のビザの決算は好調ながらも、「物足りない」と▲7%も売り込まれた。今までは買われる材料であっただけに、相場転換を示唆しているか否かに注視したい。

●3.米8月ケース・シラー住宅価格、前年比+19.7%上昇、前月+20%からは鈍化(ロイター)

●4.米9月新築住宅販売は年率換算で+14%増の80万戸、半年ぶりの高水準 (ロイター)

●5.米10月信頼感指数113.8と、前月109.8からは予想に反し上昇、4カ月ぶり(ロイター)

 1)高インフレを巡る懸念が、労働市場の見通し改善によって相殺され、10~12月期初めの経済成長回復を示唆した。
 2)10月予想は108.3だった。

●6.NY原油10/25、一時85ドル台、需給逼迫を警戒し、7年ぶりの高値(時事通信)

●7.ドイツの輸出見通し悪化(ロイター)

 1)ドイツIFO研究所10/26発表。
  原材料の供給制約により、製造業が打撃を受けている。

■II.中国株式市場

●1.上海総合指数の推移

 1)10/25、+27高、3,609(亜州リサーチ)
  ・中国の経済対策への期待感が相場を押し上げる流れ。
  ・政府の財政部は地方債発行枠を前倒しで消化する方針を明らかにし、中国人民銀行の資金供給もさらに増額プラスとなった。
  ・懸念された電力不足も、政府の対策強化で改善しつつある。
  ・石炭先物価格も10/19高値1,970人民元から、1,330人民元と▲32.5%低下。
  ・業種別では、ゼネコンや発電設備などインフラ投資関連の上げが目立った。反面、不動産株が安く、空運・食品飲料・銀行保険株が売られた。

  2)10/26、上海総合▲12安、3,597(亜州リサーチより抜粋
  ・中国不動産業の不透明感が強まる流れとなった。
  ・不動産開発会社の当代置業が10/26、10/25に期限を迎えた米ドル建て社債の元利払いが不能に陥ったことを明らかにした。
  ・また、不動産税(個人向け固定資産税)が一部都市で試験導入されることも引き続き懸念された。
  ・中国経済対策の期待感などで買い先行したものの、上値は重く、マイナスに転じた。

  3)10/27、上海総合▲27安、3,562(亜州リサーチより抜粋
  ・中国経済の回復鈍化が警戒される流れとなった。
  ・中国国内で新型コロナ感染が再拡大しつつあり、行動規制が一部で強化された。なかでも、モンゴルでは、都市封鎖により観光客約9,700人が足止めされた模様。
  ・米中関係の悪化も再燃した。中国共産党系メディアの環球時報は10/27、「台湾問題を巡り、米国が新たな攻撃を始めた」と批難している。
  ・また、米連邦捜査局(FBI)が10/26、サイバー攻撃に関した捜査で、電子決済端末機器メーカー・百富環球科技のフロリダ事務所に入ったことも分かった。
  ・業種別では、消費関連の下げが目立ち、石炭・金融・不動産・素材株が売られた。反面、発電株は急伸した。

●2.中国経済の成長率予想、また引下げ、電力不足と不動産市況の悪化で(ブルームバーグより抜粋

 1)ブルーバーグ調査ではエコノミストらが、中国国内総生産(GDP)を再び引下げた。
         2021年  2022年
    従前    +8.4%  +5.5%
    新     +8.1   +5.3

 2)今年10~12月期のGDP成長率見通しは+3.5%と、▲1ポイント近く引下げた。

 3)理由は、電力不足と不動産市況のさらなる悪化が影響。

●3.中国不動産業界、苛烈な「値引き合戦」に突入へ、市況冷え込みで年間達成が困難に(東洋経済)

●4.米S&Pは、中国不動産開発業者が最悪のシナリオの下で3分の1が流動性逼迫の恐れ

 1)米格付け会社スタンダード&プアーズ(S&P)は、中国の不動産会社で住宅販売が▲20%を下回る最悪のシナリオに陥った場合、「3分の1は流動性が急に逼迫の恐れがある」と警告した。(フィスコ)

●5.アムネスティ香港は10/25、閉鎖すると発表(共同通信)

 1)香港国家安全維持法による統制強化で「活動が不可能」と声明。
 
 2)当局が全ての反対意見を一掃しようとしている、と批判した。

●6.米連邦通信委員会(FCC)は10/26、中国電信の米事業免許を安全保障で取消 (ロイター)

 1)FTCは、中国電信(チャイナテレコム)が中国政府の支配下にあるため、中国政府の要求に応じることを強制される可能性が高いと判断した。

■III.日本株式市場

●1.日経平均の推移

 1)10/25、日経平均▲204円安、28,600円(日経新聞より抜粋
  ・前週末の米株式市場でハイテクの多いナスダックや半導体株指数が下落した流れを受け、東京市場でもハイテク株を中心に売り優勢となった。日経平均は一時▲300円超下げた。
  ・国内の政治情勢の不透明感も相場の重荷だった。参院静岡選挙区の補欠選挙で自民党が敗北。総選挙で自民党の議席数が伸び悩み、岸田政権の求心力の低下につながるとの懸念が強まった。
  ・米株価指数が堅調に推移し、日経平均の下値を支えた。
  ・日経平均の心理的節目の28,500円に近づくと、主力銘柄に押し目買いも入った。

 2)10/26、日経平均+505円高、29,106円(日経新聞より抜粋
  ・米株式が上昇し、投資家心理が改善したことから、東京市場でも主力銘柄を中心に買い優勢となった。
  ・衆議院選挙を巡り、一部の報道メディアが自民党単独過半数の見込みと報じた。国内政局の不透明感がやや後退したと見た海外投資家が主力銘柄に買いを入れ、日経平均を押し上げた。
  ・個人投資家も買いを入れた可能性もある。
  ・一方、今週から本格化する主要企業の決算発表を控え、原材料などのコスト高などが業績にどのように影響を見極めたいとする投資家も多く、売買を手控える動きも見られた。

 3)10/27、日経平均▲7円安、29,098円(日経新聞より抜粋
  ・前日+500円超上げた反動で、主力株の一角に目先の利益を確定する売りが出た。
  ・好決算を発表した日東電・日立建機の値上がりが目立つなど、国内企業の業績の良さを意識した買いが入った。
  ・もっとも決算発表が本格化するうえ、10/31には衆議院選挙の投開票を控え、中長期の投資家の動きは鈍く、短期投資家の売買に日経平均が振らされているとの見方があった。

●2.日本株は、「個別物色」と『超短期取引でドテンの繰り返し』になっており注意が必要

 1)決算本格化で個別株物色に傾斜
  ・10/27は朝方▲200円超の値下がりをしたが、企業の好決算で買戻しの動き。

 2)内外の短期筋とアルゴシステム売買による『超短期取引』
  ・この流れについていくと、結局、「安値で売り・高値で買う」ことになり得る。高値で買った場合、資金が寝てしまって、利益確定どころか損失を抱えるリスクがあり慎重さが求められる。
  ・28,500~29,300円のレンジでの動きなので、レンジ内での取引と徹した方が賢明28,500円近辺まで下がったら「買い」、29,300円近くまで上昇したら「売り」。

 3)企業の決算発表は好業績が期待できるが、原油高などコスト高を踏まえると、企業の通期見通しは慎重な数値発表となると思われる。衆議院選挙で自民党の議席数の減少幅に注目が集まっている。したがって、日経平均の上昇は「限定的」となる可能性がある点に着目したい。

●3.企業動向

 1)アドバンテスト 半導体試験装置関連の米「R&D Altanova」社を買収(時事通信)
 2)川崎重工    スマート病院へ実証実験(時事通信)
           藤田医科大学と連携し、2種のロボット使い、検体・書類運搬・薬品の取り出し作業などを行う
 3)豊田自動織機  米伊の高所荷役機器企業2社を買収(時事通信)

●4.企業業績

 1)日本電産  2022年3月期最終利益1,400⇒1,490億円に上方修正(産経新聞)
        電気自動車(EV)用モーターが好調。
        9月中間期最終利益676億円と前年同期比+38.6%増
 2)JR東海   利用者減で2年連続の最終赤字、2022年3月期▲300億円(NHK)

■IV.注目銘柄(投資は自己責任でお願いします)

 ・7731 ニコン  黒字転換。
 ・7952 河合楽器 業績堅調。
 ・7956 ピジョン 業績堅調。

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