相次ぐシステム障害で、金融庁の管理下に置かれたみずほのシステムとは? (下)

2021年10月8日 18:10

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 システム障害が収まらないみずほ銀行の前身は、第一勧業銀行、日本興業銀行、富士銀行の3行だ。2000年に経営統合する直前、第一勧業銀行では富士通の『STEPS』、日本興業銀行では日立の『C-base』、富士銀行では日本IBMの『TOP』が、それぞれ固有のシステムとして採用されていた。

【前回は】相次ぐシステム障害で、金融庁の管理下に置かれたみずほのシステムとは? (上)

 通常、銀行が合併してシステムを共通化する必要が生じた場合には、発言力の強い存続銀行のシステムに「片寄せ」される。システムが変更される銀行の職員は、相手銀行のマニュアルを学習するという大きな負担を強いられるが、システム障害という不測の事態に遭遇することは回避される。

 みずほ銀行の場合は、一勧・興銀・富士それぞれが強いプライドを持ったままの経営統合であったため、特定の1行のシステムに片寄せすることは断念され、「ゲートウエイ」という中継システムで3行のシステムを繋ぎ合わせた。ところが、02年にシステムの大規模な障害を引き起こし、11年にも障害を再発させたことが契機となって、「MINORI」という新システムの開発に追い込まれた。

 11年の大規模障害は、東日本大震災が発生した直後の3月15日に起こった。殺到する災害義援金がシステムの処理能力を超えたために、未送信データを処理することが出来ず、ATMの全面停止も続発したための止むに止まれぬ選択だった。

 ところがMINORIの開発に統合前から関わりのあるベンダーが継続して参加したために、システムがますます複雑になったようだ。あるいは、ゲートウエイの中継システムに関わったベンダーが、手を引くことの出来ない状況にあったのかも知れない。

 結局、MINORIは統合前に存在した部分を継承しながらも、富士通のソフトで日本IBMの機器を稼働させる、他行との接続機器を日立と富士通が製造し、NTTデータのソフトで動かすという、複雑怪奇で肥大化したシステムになってしまったという。

 システムに関わる銀行の担当者は日々のオペレーションが担当業務であり、基幹システムに精通した担当者は存在しない。ベンダーも自社の守備範囲には精通していても、他社を刺激してまで統合システム全体を把握するモチベーションは湧いてこない。そのため、MINORIのシステム全体を把握している人物が、みずほ銀行にもベンダーにも存在しないというミステリーが生まれた。

 今やみずほ銀行のシステムは、金融庁が実質的に管理しているというのが社会の認識だ。

 2月に発生したシステム障害の原因を、6カ月経過後の8月になっても「不明」とする恐ろしさを抱えるみずほ銀行と監督する立場の金融庁は、この次に起こるかも知れないシステム障害の責任を、共に問われかねない奇妙な関係に陥ってしまった。(記事:矢牧滋夫・記事一覧を見る

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