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相場展望9月23日 中国恒大集団の影響は限定的、日本「住専」似か 米国テーパリングは想定内で11月実施の可能性
■I.米国株式市場
●1.NYダウの推移
1)9/20、NYダウ▲614ドル安、33,970ドル(NHKより抜粋)
・中国の不動産大手・恒大集団の経営悪化による影響が、中国経済や金融市場に広がることへの懸念が強まって、中国売上が大きいキャタピラーやテスラなど含め運用リスク回避の売りが膨らんで、NYダウは一時▲971ドル値下がりした。取引時間中では今年最大の下落幅となった。その後、買い戻しの動きが出て、NYダウ終値は▲614ドル安の33,970ドルになった。
・市場関係者は、「中国恒大グループの経営悪化の影響が、ドル建て社債を通じてどこまで広がるのか、不透明だという懸念が強まった。さらに、中国の不動産業界や中国経済全体に広がると、世界経済が減速しかねないという警戒感も強まっている」と話している。
・また、市場では、米国の中央銀行にあたるFRB(米連邦準備制度理事会)の金融政策を決めるFOMC(米公開市場委員会)の会合が9/21から開催されるため、昨年3月から続けられてきた量的緩和の段階的な縮小の進め方が示されることへの警戒感も、売り注文につながったと見られている。
【前回は】相場展望9月20日 米国株に懸念材料、経験則通り9月後半は軟調 日本株、急ピッチ上昇の反動と米株連動で一服
2)9/21、NYダウ▲50ドル安、33,919ドル(日経新聞)
・香港、欧州株式市場の反発を受けて、米株も買いが先行し、一時+340ドル強上げた。
・ただ、中国の不動産大手・中国恒大集団の経営問題への懸念がくすぶったままで、買いの勢いが続かなかった。中国政府は市場の混乱を防ぐために何らかの手を打つとの期待はあるが、不透明感を嫌気し、引け際に売りが強まり、下げて終えた。
・また、米連邦公開市場委員会(FOMC)の結果公表を9/22に控え、様子見ムードも広がった。
3)9/22、NYダウ+338ドル高、34,258ドル(日経新聞より抜粋)
・中国の不動産大手・中国恒大集団の経営不安が後退し、買いが先行した。
・FOMCの声明では、景気回復が予想通りに進めば、『資産購入ペースの縮小が近く正当化される』と明示し、次回11月のFOMCでのテーパリング開始決定、を示唆した。なお、『利上げ』は慎重に望む姿勢を改めて強調した。
・FOMCの決定結果が想定内だったうえ、パウエル議長のハト派寄りの姿勢変わらずとの見方が、『金融政策の先行き不透明感が払しょく』と売り方の買い戻し。
・中国売上高が大きい航空機のボーイングや化学のダウが上昇、原油先物が上昇し石油のシェブロン、金融のGサックス、金利低下で主力ハイテク株も買われた。
●2.中国恒大集団の米国株へショックは短命で済みそう
1)米オプション市場では、一段の株価急落に備える動きは見られず。
2)米株価9/20~21の下落状況は、パニック的な売りではない。
3)米国への影響は限定的でリスクは小さい模様。
●3.FOMCの結果公表9/22、米国テーパリング実施は11月の可能性高まる (フィスコ)
1)決定事項
(1)金利の据え置き
(2)量的緩和の維持
2)決定の要旨
(1)経済は、資産購入ペース減速の条件達成に向けて進展。
(2)データによると、経済は引き続き強まっている。
(3)インフレは一過性の要因により上昇。
(4)新型コロナデルタ株流行が経済回復を抑制。
3)パウエルFRB議長の記者会見内容
(1)雇用統計など経済指標が適切であれば、11月にテーパリング開始の可能性を示唆。
(2)中国恒大の経営危機は、「中国特有の問題であり、米国は直接の大きなリスクは無い」との認識を示した。
4)FOMC決定の影響
(1)NYダウは上昇:一時+520ドル高 ⇒パウエル会見後、9/22終値は+338ドル高
(2)金利低下 :一時1.3%割れまで低下
(3)ドル高 :一時109.82円まで上昇
5)利上げ開始は、物価上昇を踏まえ2022年からと、前倒し(朝日新聞より抜粋)
(1)『ゼロ金利の解除(利上げ)』の開始は、2022年に前倒して、2023年までに少なくとも計3回利上げする可能性を明らかにした。
(2)量的緩和の縮小が来年半ばぐらいに終えるとし、利上げ時期はその後になるとの方針も示した。
●4.米・9月NAHB住宅市場指数は76と、予想74・8月75を上回る(フィスコ)
■II.中国株式市場
●1.上海総合指数の推移
1)9/20、上海総合は、祝日「中秋節」で休場(ブルームバーグ)
・シンガポール証券取引所で、FTSE中国株指数は▲3.22%安となった。
2)9/21、上海総合は、祝日「中秋節」で休場
3)9/22、上海総合+14高、3,628ドル(亜州リサーチ)
・中国恒大集団が9/22、一部社債の利払いを9/23に実施すると発表したことを、ひとまず好感し上昇した。
・業種別では、電力・船舶製造の上げが目立ち、石炭も高い。反面、ホテル・観光・醸造・農林漁業・プラスチックが安かった。
●2.中国恒大集団は『破綻』させ、解決策は日本の『住専』方式か【一考察】
~中国共産党・政府の基本的な考え「住宅は住むもので、投機するものではない」~
1)習近平国家主席は緊縮経済の思考の持ち主
2012年11月 共産党総書記に就任
2012年12月 主要政策「八項規定」(贅沢禁止令)
2015年12月 「供給側構造改革」(5つの緊縮政策)中央経済工作会議
2016年12月 「家は住むためのもので、投機するためではない」中央経済工作会議
・中国は経済格差がますます拡大し、カネ余り現象が大都市圏の不動産価格の高騰を生んでいた。
・このことから、『政府に対する不満』が貧しい階層の国民に醸成されていった。
・この時以降から、中国共産党・政府は不動産価格の抑制策を強く取る必要性が生じた。
2020年08月 「3つのレッドライン」政策を打ち出し、不動産業界に規制強化
2021年01月 銀行に対して、住宅ローンや不動産企業への融資の総量規制
2021年08月 「共同富裕」(中国共産党中央財経員会第10回、8/17開催)
2)中国国内総生産(GDP)の2割が不動産業界、中国恒大は2%(業界の10%)を占める。中国恒大は、住宅バブルを防ごうとする中国当局の引き締め政策や、コロナの影響による景気低迷で経営が悪化し、6月末時点の負債総額は約33兆円相当。
3)中国恒大は資金繰りが「自転車操業」だったところに、コロナ禍、加えて
(1)販売用土地取得の困難 (2)住宅ローン資金の実行遅れ (3)地価・販売価格の下落 (4)資金調達の困難 (5)多角化による異業種進出で資金負担
の問題が重なり、資金繰り悪化、デフォルトが流布され、今回の事象を引き起こした。
4)習指導部の施策の積み重ねの結果が、今回の中国恒大集団の問題発生となっている。
5)恒大集団の処理シナリオ
(1)救済
(2)破綻
の2つのシナリオがあるが、
(1)「救済」は、習指導部のこれまでの方針とは相容れない。救済は、格差拡大で苦しむ低所得層からの批判に曝されるリスクがある。また、許家印・創業者は不動産業界に関し、当局批判をしている面から、また「共同富裕」策の対策も無く、政治的にも救済されないだろう。
(2)「破綻」は、当然の帰結と思われる。よって、中国経済への影響を一定限度内に抑え込みながら『破綻』を模索する可能性が高いと思われる。
6)「中国恒大」問題は、日本の「住専」問題と似ており、「住専解決策に準じる」可能性
(1)恒大中国は、「中国版リーマン・ショック」になるとも言われているが、世界的な金融の流動性危機につながる事件に発展するとは思えない。中国恒大集団が発行する社債の多くは中国国内が引き受けており、米ブラックロック、英HSBC、UBS等が社債を購入しているが、企業財務を揺るがすほどの保有額ではない模様。したがって、現時点では中国国内の金融問題と捉えるべきと思っている。
(2)ただし、不動産業界には恒大と同様な状況の企業もあり、波及効果の見極めが必要。
(3)日本の住宅ローン専門のノンバンク、住専(住宅金融専門会社)は1990年代初めにバブル経済崩壊後の地価下落とともに不良資産が増大、回収不能の不良債権が住専全体で約6.5兆円にものぼり、1995年には8社中7社が行き詰まった。住専は銀行系列のノンバンクであり、日本政府は銀行の破綻危機防止策として「政府による公的支援」を軸に救済策を講じて、『住専を解散』させて問題を解消した。
(4)中国政府は、日本の経済・金融危機を調査し、活用している。したがって、「日本の住専問題の解決策」に準じた対策をとって、
・『中国恒大を破綻』させ、
・中国が金融危機に陥らないため『中国政府・中国人民銀行の支援で銀行救済』
する政策を採ると予想する。
・この方策が、経済格差に怒る人民からの批判から、中国共産党・政府が免れる策でもあると思われる。習近平・国家主席が異例の3期続投を狙うためにも、中国恒大集団の「直接的な救済措置」より『破綻』させることが、庶民の支持が得られる解決策となるだろう。
7)中国恒大集団の問題は、『中国国内の問題に収斂する』
(1)中国では、大手銀行は国営であり、恒大集団の破綻に伴う影響が銀行に及んだ場合は、中国政府・中国人民銀行が銀行を支えるため、『金融リスクは限定的』となる。中国の国内問題に収斂すると理解している。
(2)よって、中国恒大集団の経営危機が、世界の金融リスクに波及するとは考えにくい。
●3.中国恒大、社債利払い9/23実行へ、デフォルト懸念打ち消す(共同通信)
1)9/23の利払い規模は2.32億元(約39億円)。
2)9/23以降も、他の社債の利払いが相次ぎ、不安感が完全になくなるかは不透明。
●4.香港ハンセン指数9/20、▲821安、24,099、▲3.295%安⇒9/21 +122高、+0.51%高
1)中国恒大を巡る懸念が波及し不動産株に売り、平安保険も安い(ブルームバーグより抜粋)
・中国恒大集団は深刻な資金難に陥っており、同社の破綻回避に中国政府が動くかどうか、中国高官は沈黙を保っている。
・中国恒大は融資や社債の利払い期限を今週に迎えるが、ほとんどの専門家は支払いを履行できるとは考えていない。
・中国恒大の株価は、9/20の香港市場で一時▲19%安まで下げた。終値は▲10.2%安。
2)香港株式市場は9/20、中国の不動産大手「恒大グループ」が経営難に陥っていることから、不動産業界や中国経済全体に影響が及ぶことへの警戒感が強まったことで、大幅な値下がりとなった。
3)香港株式市場9/21、前日の下落幅の+14.9%反発した
●5.中国メディアは、中国版リーマン・ショックの可能性を警告(DZHフィナンシャル)
1)中国恒大集団のデフォルト(債務不履行)リスクに関し、
(1)悲観的シナリオとして、中国版リーマン・ショックとなる可能性
(2)楽観的シナリオとして、政府による救済の可能性
を報じている。
2)シナリオ別の影響(現代ビジネスより抜粋)
(1)悲観シナリオは、救済が見送られ、不動産セクターを中心に、中国の他の企業・金融機関・個人などに大規模デフォルトが連鎖し、信用収縮が発生する恐れがある
(2)楽観シナリオの恒大集団の救済は、弱者の負担で富裕層を助けるとみなされ、格差是正を強める共産党指導部に対して、世論の批判や社会心理の悪化を招く恐れがある。
●6.「中国版リーマン・ショック」で、日本も国家破綻に巻き込まれる(View point)
■III.日本株式市場
●1.日経平均の推移
1)9/20、祝日「敬老の日」で休場
2)9/21、日経平均▲660円安、29,839円(日経新聞)
・中国の不動産大手・中国恒大集団の資金繰り懸念が投資家心理を冷やし、売り優勢となり、下げ幅は6/21以来の3カ月ぶり大きさとなり、節目の3万円を割った。
・中国景気に左右されやすい海運や鉄鋼株、中国のスタートアップ企業に投資するソフトバンクGの下落が目立った。
・中国恒大の問題に先行き不透明感が強いとはいえ、中国政府の救済策を見込む声も出た。
3)9/22、日経平均▲200円安、29,639円(日経新聞)
・中国不動産大手・中国恒大集団の債務問題を巡る不透明感を背景に運用リスクを回避する売りが続き、日経平均は3週間ぶりの安値となった。
・円高が進み、輸出関連を中心に売りも出た。
・中国恒大集団が利払い実施と発表したが、「9/23に利払いが到来するドル建て債務への言及が無かった」との見方もあり再び売り優勢となった。
・米連邦公開市場委員会(FOMC)を控え、様子見ムードが強まった。
●2.日本の年金積立金独立行政法人(GPIF)は2021年3月末時点で株式と社債を合わせて96億円を保有している。(時事通信)
●3.日銀は9/22、政策決定会合で「大規模な金融緩和の維持」を決定(NHK)
●4.企業動向
1)三菱UFJフィナンシャル 米国の傘下銀行個人部門8,800億円で売却(共同通信)
MUFGユニオンバンクの総資産1,330億ドル、全米27位
2)日本オラクル 第1四半期決算営業利益169億円、前年同期+16.6%増(フィスコ)
■IV.注目銘柄(投資は自己責任でお願いします)
・1332 日水 業績好調。
・9045 京阪 ワクチン接種進展で業績回復期待。
・6473 ジェイテクト 業績回復期待。
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