Jトラストは年初来高値に接近、ポートフォリオ再編で収益拡大基調

2021年9月22日 08:59

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記事提供元:日本インタビュ新聞社

 Jトラスト<8508>(東2)は日本、韓国・モンゴル、およびインドネシアを中心とする東南アジアで金融事業を展開し、成長加速に向けて事業ポートフォリオ再編を推進している。21年12月期は黒字転換予想としている。東南アジア金融事業の収益改善やGL社に対する訴訟の勝訴判決に伴う投資回収進展などで、通期予想は再上振れの可能性が高いだろう。ポートフォリオ再編で収益拡大基調を期待したい。株価は水準を切り上げて6月の年初来高値に接近している。上値を試す展開を期待したい。

■日本、韓国・モンゴル、インドネシア中心に金融事業を展開

 日本、韓国・モンゴル、およびインドネシアを中心とする東南アジアで、金融事業(銀行、信用保証、債権回収、その他の金融)を展開している。

 グループビジョンに「既成概念にとらわれないファイナンシャルサービスを提供する企業体を目指す」を掲げ、国内外におけるM&Aも積極活用して、銀行業および債権買取回収事業を中核とする総合金融サービスの提供を目指している。

■成長加速に向けて事業ポートフォリオ再編

 成長加速に向けて事業ポートフォリオ再編を推進している。子会社売却に伴って増加する換価性の高い資産は、積極的なポートフォリオ再編に活用する。

 日本金融事業では、20年11月にNexus Bank<4764>(旧SAMURAI&J PARTNERS)と、株式交換によってJトラストカード、およびJトラストカードの子会社である韓国・JT親愛貯蓄銀行を連結除外とした。またNexus BankのA種優先株式を引き受けた。Jトラストカードの連結除外によって、日本国内でのカード事業から撤退した。

 今後の日本金融事業は、日本保証の保証業務、パルティール債権回収の債権回収業務を両輪として展開する。日本保証は保証商品拡充に向けて、寄付型クラウドファンディング大手のCAMPFIREと融資型クラウドファンディングにおいて業務提携している。20年12月には日本保証が財全グループと業務提携した。パルティール債権回収は信販系大手カード会社等からの債権買取回収を推進する。また21年8月には子会社Frontier Capitalを設立してファクタリング事業を開始した。

 韓国およびモンゴル金融事業では、韓国・JT親愛貯蓄銀行を直接親会社のJトラストカードと一緒に売却した。また、韓国・JTキャピタルの全株式を韓国・VI金融投資に譲渡(CK株式譲渡)、および韓国・JT貯蓄銀行の全株式を韓国・VI金融投資もしくは許容された譲受人に譲渡(SB株式譲渡)する基本合意書を締結している。このうち韓国・JTキャピタルについて、21年8月31日付で全株式の譲渡を完了した。これによって韓国・JTキャピタルおよびその子会社が連結子会社から除外となる。韓国・JT貯蓄銀行の株式譲渡についても手続きを進めている。

 今後の韓国およびモンゴル金融事業は、韓国のTA Assetが債権回収業務、モンゴルのJトラストクレジットNBFIが割賦業務を展開する。

 東南アジア金融事業は、Jトラスト銀行インドネシア(BJI)が銀行業務、Jトラストオリンピンドマルチファイナンス(JTO)がマルチファイナンス業務、Jトラストインベストメンツインドネシア(JTII)が債権回収業務、カンボジアのJトラストロイヤル銀行(JTRB、19年8月に商業銀行ANZRoyalBankを子会社化して商号変更)が銀行業務を展開している。

 JTRBはカンボジアの大手資金移動業者であるWing社との連携を強化し、金融インフラが十分に行き渡っていないカンボジアにおいて金融サービスの裾野拡大に貢献している。21年1月には、人事評価機関であるHR Asiaが選出する2020HR ASIA AWARDにおいて、JTRBが「2020 Best Companies to work for in ASIA(アジアを代表する働き方のベストカンパニー)」を受賞した。

 投資事業はJトラストアジアが展開している。なおJトラストアジアは販売金融事業のタイGL社に出資したが、17年10月にタイGL社CEO此下益司氏がタイSECから偽計および不正行為で刑事告発された。このため現在はタイGL社、此下益司氏、およびGLの関連取締役に対して、刑事告発手続き、会社更生法申し立て・補償請求・賠償請求などの訴訟を提起している。

 課題となっていたGL社に対する訴訟も、勝訴判決に基づいて履行を受けるなど解消に向けた動きが進展している。シンガポールにおいては控訴裁判所の判決(20年10月)に基づいて債権回収が進展している。タイにおける控訴審判決では21年3月にJトラストアジアによる権利行使は適法であるとしてGLの請求を棄却するとともに、GLに対して訴訟費用および弁護士費用の支払いを命じている。

 英領バージン諸島においては21年5月、控訴裁判所が昭和ホールディングスによる上訴を棄却した。日本では21年6月、A.P.F.GROUP、昭和ホールディングス、ウェッジホールディングスに対して、24.3百万米ドルの支払いを求める損害賠償請求訴訟を東京地裁に提起した。キプロスにおいては21年8月、此下益司氏ならびにキプロス所在4社に対して約130百万米ドルの賠償を求める訴訟を提起し、裁判所が被告らに対する全世界的資産凍結命令を発令した。

 投資事業の最近の動きとしては、子会社の日本ファンディング(20年11月子会社化したプロスペクト・エナジー・マネジメントが20年12月商号変更)が、20年12月にグローム・ホールディングス<8938>の子会社LCレンディング(LCL社)の株式を100%取得した。投資関連事業の拡大に向けてLCL社のクラウドファンディング事業とのシナジーを創出する。

 非金融のその他事業ではJトラストシステムがITシステム事業を展開している。

 総合エンターテインメント事業のKeyHolder<4712>については、保有する同社株式の一部を、ミクシィ<2121>が設立したミクシィエンターテインメントファンド1号投資事業有限責任組合など5社に譲渡(20年12月)した。引き続き当社が筆頭株主となるが、KeyHolderおよび同社の連結子会社は持分法適用関連会社に異動した。

 この結果、20年12月期のセグメント別営業利益は、日本金融事業が48億60百万円(決算期変更で9カ月決算の19年12月期は30億82百万円)、韓国・モンゴル金融事業が3億30百万円の赤字(同21億60百万円の黒字)、東南アジア金融事業が55億41百万円の赤字(同46億67百万円の赤字)、投資事業が16億51百万円の赤字(同17億68百万円の赤字)、その他事業が1億61百万円の赤字(同4億07百万円の赤字)となった。なお収益はM&A・事業再編・不良債権処理などで大幅に変動する可能性がある。

■21年12月期黒字転換予想、さらに再上振れの可能性

 21年12月期連結業績(IFRS)予想(5月13日に上方修正)は、営業収益が20年12月期比5.0%減の421億01百万円、営業利益が55億03百万円の黒字(20年12月期は19億53百万円の赤字)、税引前利益が82億55百万円の黒字(同1億84百万円の赤字)、親会社所有者帰属当期利益が20億円の黒字(同53億42百万円の赤字)としている。配当予想は復配の1円(期末一括)である。

 第2四半期累計は、営業収益が前年同期比3.3%増の223億40百万円、営業利益が71億60百万円の黒字(前年同期は10億40百万円の赤字)、税引前利益が75億65百万円の黒字(同10億45百万円の赤字)、親会社所有者帰属四半期純利益が8.8倍の38億94百万円だった。

 日本金融事業が安定的に推移したことに加えて、韓国およびモンゴル金融事業の伸長、東南アジア金融事業の収益改善、投資事業におけるGL社に対する訴訟の勝訴判決に伴う投資回収進展などで黒字転換した。なお韓国およびモンゴル金融事業では、株式譲渡を延期したJTキャピタルおよびJT貯蓄銀行を継続事業として取り扱っている。

 セグメント別営業利益は日本金融事業が8.6%増の24億30百万円、韓国およびモンゴル金融事業が61.5%増の21億89百万円、東南アジア金融事業が20億84百万円の赤字(前年同期は28億94百万円の赤字)、投資事業が53億90百万円の黒字(同8億22百万円の赤字)、その他事業が41百万円の赤字(同2億74百万円の赤字)だった。

 四半期別に見ると第1四半期は売上収益108億67百万円で営業利益44億円、第2四半期は売上収益114億73百万円で営業利益27億60百万円だった。

 通期のセグメント別営業利益の計画は、日本金融事業が36億円、韓国およびモンゴル金融事業が26億円、東南アジア金融事業が43億円の赤字、投資事業が53億円、その他が2億円の赤字としている。通期予想に対する第2四半期累計の進捗率は営業収益53%、営業利益130%、税引前利益92%、当期純利益195%と高水準だった。通期予想は再上振れの可能性が高いだろう。ポートフォリオ再編で収益拡大基調を期待したい。

■株価は年初来高値に接近

 株価は水準を切り上げて6月の年初来高値に接近している。上値を試す展開を期待したい。9月21日の終値は400円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS18円89銭で算出)は約21倍、今期予想配当利回り(会社予想の1円で算出)は約0.3%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS865円20銭で算出)は約0.5倍、時価総額は約462億円である。(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)

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