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今年は例外? 勝率100%「総選挙の株高アノマリー」と水を差すチャイナリスク 後編
過去50年間における「総選挙の株高アノマリー」については、ほぼ100%の勝率であることは間違いないが、過去50年間において1度だけ、それが通用しない「総選挙」があった。それが1976年の総選挙である。
【前回は】今年は例外? 勝率100%「総選挙の株高アノマリー」と水を差すチャイナリスク 前編
この選挙は「ロッキード選挙」として知られており、ロッキード事件への関与を追及しようとする三木武夫首相の退陣を狙った、自民党内の倒閣運動を経ての総選挙であった。そしてこの総選挙は、「解散総選挙」ではなく、戦後の日本国憲法の下において唯一の、「任期満了による総選挙」なのである。
当時の三木首相は、解散総選挙のカードをちらつかせながらも、結果的には閣僚の反対を受けて「解散総選挙が叶わず、任期満了選挙を選択した」という状況であった。まさに現在の菅首相と重なってみえる。
いずれにしても、2021年の総選挙については「解散ではない任期満了による選挙」となる可能性が高くなっている。同様の選挙となった1976年の日経平均株価騰落率については、「直前の会期終了前営業日から投開票日前営業日までの間」で約1.5%下落していることには注意したい。
もっとも、コロナバブルで行き場を失った資産が世界中から日本市場に集まってきていることは間違いなく、その買い余力は十分に残されているとも考えられる。これまでの「解散総選挙の株高アノマリー」と同等に、選挙期間中、アベノミクスの再来を期待したもう一段の株高となる可能性も十分に考えられた。
しかしながら、そんな状況下に水を差したのが、金融市場がもっとも恐れるべき「チャイナリスク」の急浮上である。不動産開発大手の中国恒大集団 (エバーグランデグループ)が、デフォルト(債務不履行)となる可能性が出てきたのだ。
今回のデフォルトリスクについては、中国の不動産バブル崩壊や政府による不動産投資の抑制によって引き起こされたものではなく、幅広い事業に手を出しすぎた経営の結果が引き起こした1企業のデフォルトであり、その影響は限定的とみる向きも多い。とはいえ、世界の金融市場がリスクオフの態度をとったことは明らかである。
バブルの崩壊は「不安のパンデミック」でしかない。中国恒大集団 はデフォルトから経営破綻となる可能性が高くなってきたが、その影響が世界の金融市場や関連企業、そして、投資家心理にどこまで影響を与えるかについては、今のところ定かではない。
当面は、総選挙によって注目が集まる日本の株式市場の行方に注目しながらも、中国恒大集団のデフォルトリスクを見極めるという、不均衡な状況が続くといえるだろう。(記事:小林弘卓・記事一覧を見る)
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