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障がい者雇用に新しい可能性 老舗養蜂業者「みつろうラップ」が示す、未来の在り方
厚生労働省も、障がい者が働ける新たな仕事の創出が必要だと述べている。[写真拡大]
政府は9月8日、21都道府県に発令中している緊急事態宣言を30日まで延長する方針を固めた。長引くコロナ禍で、働き方や仕事の内容に大きな変化が余儀なくされているが、障がいのある人たちの暮らしや働き方にも大きな影響が出はじめている。
厚生労働省の調査によると、企業などを解雇された障がい者の数は2020年4月から2020年9月までの半年間で、全国で1213人に上り、前年の同じ時期に比べて40%も増えているという。コロナ禍による勤務体系の変更や、休業、時短勤務、さらにはリモートワークになったことで出社が必要な仕事が減ってしまったことが大きな原因のようだ。厚生労働省も、障がい者が働ける新たな仕事の創出が必要だと述べている。
そんな中、期待が寄せられているのが、ある企業の取り組みだ。
70年以上にわたってミツバチ産品の製造販売を行っている山田養蜂場は、同社が9月6日に新発売した「みつろうラップ」の製造工程で、障がい者の新しい雇用を創出している。
「みつろうラップ」とは、天然のミツロウを染み込ませた、繰り返し使用できる食品保存用のキッチンラップで、
自宅でできるエコアクションの一つとして関心が高まっており、テレビや雑誌などでも取り上げられる機会が増え、世界的にも注目されている話題のキッチンアイテムなのだ。
実は、新型コロナウイルスの影響で、海洋汚染などの原因となるプラスチック製品の利用を減らす取り組みも後退しつつある。環境省の調査によると、毎年海に流出するプラスチックごみのうち2?6万トンが日本から発生したものだと推計されており、このままでは2050年の海は、魚よりもごみの量が多くなると言われるほど問題は深刻化している。にもかかわらず、総務省調べによると、在宅時間が増えた2020年は、一般家庭のポリ袋・ラップ類の購入額が前年比で8.3%も増加しているという。
山田養蜂場では、海洋汚染問題に対応する持続可能な商品の一つとして、オーガニックコットンとミツロウのみでつくった「みつろうラップ」を開発。使用後はぬるま湯で洗って乾かせば繰り返し使えるうえ、最後は土に還る、自然素材のみのエコなラップはSDGsの観点からも注目度が高い。これを2日に1回使用した場合、1年間で15mのビニル製ラップ3本分が削減できるという。そしてこの商品は、障がい者の自立支援を目的に設立した、同社の特例子会社「ビーハッピー」で一枚一枚、丁寧に手作りしているのだ。コロナ禍で仕事が激減する中、スタッフの働く喜びや幸せにもつながっているという。
ただ単に、障がい者が働ける場所や機会を増やすというのではなく、SDGsと組み合わせることで新たな価値を生み出し、生活スタイルの変化を促す。このような取り組みが、これから先のポストコロナの時代には求められているのでははないだろうか。(編集担当:藤原伊織)
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※この記事はエコノミックニュースから提供を受けて配信しています。
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