NASAの火星岩石サンプル収集、着々と進行中 NASAジェット推進研究所

2021年9月16日 07:24

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ローバーとNASAが初めて岩石サンプル収集に成功した場所 (c) NASA / JPL-Caltech

ローバーとNASAが初めて岩石サンプル収集に成功した場所 (c) NASA / JPL-Caltech[写真拡大]

 NASAのマーズ2020ミッションは、2020年7月30日に打ち上げられ、2021年2月18日に火星に無事着陸したことが確認されている。火星着陸の約半年後の8月には火星探査車パーサヴィアランスによる岩石収集が試みられたが、この時は失敗に終わっていた。だが、9月に入りNASAジェット推進研究所は、岩石サンプル収集が着々と進行していることを伝えている。

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 パーサヴィアランスは、9月6日にMontdenierと名付けられた最初のサンプル収集に成功し、9月8日には2番目のサンプルMontagnacを収集している。これらは、かつて湖が存在していたのではないかと考えられている、ジェゼロクレーターと呼ばれる場所で収集されたものだ。この地域には生命誕生に必要な水が存在していた可能性があり、岩石サンプルから生命が存在していた痕跡を探るのが、マーズ2020ミッションの大きな目的の1つでもあった。

 これらの岩石サンプルは気密チタンサンプルチューブに封入され、いったん火星にとどめ置かれ、欧州宇宙機関(ESA)が2026年に開発するローバーで回収される予定だ。NASA開発の帰還用のロケットに積まれ、火星軌道上で待機する地球への帰還機へとリレーされ、2030年代には地球にもたらされる予定となっている。

 したがって岩石サンプルの詳細な分析は2030年代まで待たなければならないが、現時点でこれらのサンプルは組成が玄武岩質であり、溶岩流の産物である可能性を持つことが判明している。火山岩中の結晶質鉱物の存在は、放射年代測定に役立つ。これからも様々な地点で複数のサンプル回収ができれば、それぞれの場所における地質の形成年代を時系列的に並べていくことで、かつて火星で起きていた火山活動の具体的な姿を解明できるかもしれない。

 このミッションの成果として火星に生命が存在していたことの痕跡が確認されるようなことがあれば、宇宙における生命は地球にしか誕生しなかったわけではなく、どこにでも誕生しうることになり、地球外の知的生命体による地球侵略の脅威にも備える必要が出てくると考えるのは杞憂だろうか。(記事:cedar3・記事一覧を見る

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