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湿度変化でプラスチックのように硬化するシリコーン素材を開発 名大
湿潤状態と乾燥状態の引張せん断接着強さ(左)と、スライドガラスの間にシリコーンを挟み、6kgのおもりを持ち上げている瞬間(右)。(画像: 名古屋大学の発表資料より)[写真拡大]
直鎖状の分子構造を持つシリコーンは、常温で流動性のある状態で存在することが一般に知られている。そのため、例えばシリコーンオイルなどのように潤滑剤として用いられることが多かった。だが名古屋大学の研究グループは8日、湿度変化によってプラスチックのように硬くなるシリコーン素材を開発したと発表した。このシリコーン素材は、湿度変化で弾性率が1億倍も変化することが明らかになっている。
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直鎖状シリコーンは柔軟な分子構造を有するため、室温では液体に近い流動性を持つ状態で存在する。研究グループは、シリコーンに極性の高いアミン塩酸塩を導入することで、合成樹脂と同等の硬さが発現することを見出した。合成の方法は、直鎖状シリコーンのもととなるモノマーを塩酸と混ぜるだけと非常に簡便である。
今回開発したシリコーンは、湿度80%では流動性があるが、湿度5%ではピンセットで掴めるほど硬くなる。粘弾性測定を行ったところ、弾性率は1億倍も変化することが明らかになっている。また湿潤状態のシリコーンをスライドガラスに挟んで乾燥させると、28mmの接着面積で6kgの重りを持ち上げることができた。この結果は今回のシリコーン材料が強力な接着剤としての機能を有することを示している。
このメカニズムとして、アミン塩酸塩に由来するポリマー側鎖が、乾燥状態では凝集して架橋構造となり硬化することが分かっている。また、架橋によりポリマーがナノ周期構造を形成しているという解析結果も出ている。ただし、類似の側鎖を有するポリマーではナノ周期構造が見られないことから、シリコーンの主鎖自体も重要な役割を持つ可能性が示唆されている。
今回のシリコーンのように湿度変化で硬化するという特性は、高分子材料全般でも珍しい性質である。また、合成方法が簡便で材料も一般的なものであることから、今後の新しい機能材料の開発に繋がることが期待される。
今回の研究成果は3日付の「Scientific Reports」誌のオンライン版に掲載されている。
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