『漁港の肉子ちゃん』ファンタジア国際映画祭で審査員特別賞を受賞

2021年8月28日 09:13

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©2021「漁港の肉子ちゃん」製作委員会

©2021「漁港の肉子ちゃん」製作委員会 [写真拡大]

 現在公開中のアニメーション映画『漁港の肉子ちゃん』が、第25回ファンタジア国際映画祭でAXIS部門・今敏アワード(審査員特別賞)を受賞した。

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 長編・短編あわせて55作品が集まったAXIS部門において、日本からは唯一となる受賞。心温まる世界観と日常描写が、現地でも高く評価された模様だ。

●日本との結びつきも強い映画祭

 ファンタジア国際映画祭といえば、カナダのモントリオールで1996年から続く映画の祭典。創設当初よりアジアに熱いまなざしを注いでおり、現在でも日本映画との結びつきは強い。『リング』の中田秀夫や『極道戦国志 不動』の三池崇史も、この映画祭を通して世界に名をとどろかせた監督である。

 ことアニメーションにおいては、1997年に今敏監督の『パーフェクトブルー』がワールドプレミア上映されている。その後、夭逝した今監督の功績をたたえ、アニメーション部門に「今敏アワード」の名が冠されることになった。25回目を数える今年の映画祭でも、今監督の特集プログラムが大々的に組まれている。

●国民的アニメを手がけてきた渡辺歩監督

 そんな栄誉ある「今敏アワード」に、日本のアニメーション作品が輝いた。『漁港の肉子ちゃん』を手がけた渡辺歩監督は、長きにわたり『ドラえもん』シリーズに携わってきた人物。シンエイ動画を2011年に退社後は、フリーとして数々のアニメーションに参加している。

 2019年の監督作品『海獣の子供』は、海の生物をめぐる幻想譚を、優れた映像美によって描き出した作品だ。同作は文化庁メディア芸術祭アニメーション部門に輝くなど、国内で高い評価を得ている。

 本作『漁港の肉子ちゃん』では、引き続きアニメ制作会社のSTUDIO4℃が参加。より磨きがかかった映像によって、登場人物たちの何気ない日常がコミカルに表現された。

●かつての同僚・原恵一監督

 渡辺監督と同じシンエイ動画出身の監督に、『クレヨンしんちゃん』シリーズを手がけた原恵一がいる。原監督もフリーに転身した後、『カラフル』(2010年)や『バースデー・ワンダーランド』(2019年)で独自の作家性を発揮してきた人物だ。

 渡辺歩と原恵一。二人の監督に共通しているのは、ファンタジックな世界観にのぞく豊かな日常描写といえるだろう。ともにアニメーションを原点としているが、人間味あふれる世界観は古典的な日本映画をも思わせる。

 ファンタジア国際映画祭の受賞に至った『漁港の肉子ちゃん』には、日本映画が脈々と受け継いできた「日常の風景」があるのかもしれない。(記事:村松泰聖・記事一覧を見る

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