廃熱を従来の2倍の効率でエネルギーに変換する材料を開発 大阪府立大

2021年8月13日 17:22

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 SDGsの中でもクリーンなエネルギーの利用は重要な項目の1つであるが、そのためには効率的なエネルギー資源の利用が必須である。だが発電に使われるエネルギー源のうち、約70%は廃熱として捨てられており、廃熱の有効活用が望まれてきた。

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 大阪府立大学は、特に総量が多い室温付近の廃熱を電気に変換する技術について研究を行ってきたが、12日、従来の材料と比べて最大で2倍の性能を持つ材料の開発に成功したと発表した。

 室温付近の廃熱を回収するためには、その熱を電気に変換する熱電発電技術が有効であるとされてきた。だがそのためには、室温で熱から電気への高い変換効率を有する材料を開発する必要がある。

 室温で高い変換効率を有する材料として約半世紀前にBi2Te3が発見されたが、それを超える材料は開発されてこなかった。一般に熱電発電に用いられる材料は、数百度の高温で高い変換効率を有するものが多く、室温で機能する材料は僅かであった。

 そこで大阪府立大のグループは、高温で高い変換効率を有するGeTeを改良することで室温で機能させるアプローチを採用。より具体的には、GeTeにSb2Te3を完全に混合させた固溶体化することで電子構造を変化させ、熱電特性を変化させた。従来のGeTeでは熱電変換に関与する電子はごく一部であったが、電子構造の変化によって多くの電子が関与するようになり変換効率が向上。

 一般に固溶体の電子構造は正確な測定が難しいが、理化学研究所が所有する大型放射光施設「Spring-8」を活用することで正確な情報が得られた。その結果、試料の作製条件や温度などを最適化し室温での高い熱電変換効率を実現することが出来たという。

 今回の研究で得られた高性能化のアプローチは、GeTe系の材料以外にも応用できる可能性がある。そのため、これまで注目されてこなかった材料を改良してより高効率な熱電変換が実現されることも考えられる。熱電変換技術の進歩によって、SDGsでも掲げられている省エネルギー社会に大きく貢献することが期待される。

 今回の研究成果は12日付の「Materials Today Physics」誌のオンライン版に掲載されている。

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