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新型コロナへのヒステリーが、オリンピックへ向かう理不尽
東京オリンピックの開幕直前の12日、東京には4度目になる新型コロナ緊急事態宣言が発令された。いくら有難い宣言でも、こうも度々発令されては効き目が弱くなるのは当然だろう。
【こちらも】大半を無観客にした東京五輪と、野球やサッカーの試合に沸く欧米 彼我の隔絶した対応は何故?
緊急事態宣言は発令されるだけでは何の意味もない。発令を聞いた人々が、宣言を深刻に受け止めて、日々の行動や生活に反映させてようやく、宣言発令の意味がある。
政府が期待するのは感染の沈静化だから、専門家の助言を受けて人の流れが減少することを勧奨している。ステイホームや在宅勤務を奨励するのも、旅行を抑制して飲食店の営業時間や酒類の提供にまで口を挟むのも、専門家の助言を受けてのことだ。
言ってみてば多少タイミングがズレているにしても、政府の対応は分科会の専門家諸氏の助言通りに行われている。人々の動きを沈静化する思惑が外れているため、酒類問屋に対して飲食店への指導を求める等の勇み足もあるが、概ね専門家の意見は政策に反映されていると言える。
問題は、緊急事態宣言が空念仏になっていることだ。
せめて、「飲酒が感染を拡大する」ことに説得力のあるエビデンスが専門家から示されれば、人々を納得させられるだろうが、専門家が根拠も示さず「間違いない」と断言したり、「感染はこれから拡大する」と”予言”する程度だから、ご託宣の効果は減退の一途である。
こうした専門家の意見を聞かされている人々は、高齢者や基礎疾患がなければ重篤な症状に陥ると思っていないから、平常の生活パターンを敢えて変更する必要を感じない。
病床逼迫が懸念されるにしても、コロナ対応に消極的な日本医師会への怒りを思い出す程度で、自分とは関係のないことだと思っているから、行動抑制の動機になる訳でもない。
社会が、警鐘に従順な高齢者グループと、無視するグループと反発するグループの3つに分断されているようだ。
飲酒や旅行が感染拡大の元凶であることを示すエビデンスがないのと同様に、オリンピックを目の敵にするようなエビデンスもまた存在しない。感染対策を講じて野球やサッカーが行われ、全国津々浦々で高校野球の予選大会が実施されている現状を考えると、大半の競技が無観客になったオリンピックとのバランスの欠如は目を覆う。
オリンピックに携わる人々の不行跡が再三伝えられているが、そんなことは当人に固有のものであり、オリンピック自体とは何の関係もないことだと考える余裕が社会から失われているところに、危機感すら感じられるこの頃である。(記事:矢牧滋夫・記事一覧を見る)
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