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【映画で学ぶ英語】『アオラレ』:I’m sorryとI apologizeのニュアンスの違い
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5月28日に公開された映画『アオラレ』は、日本でも東名高速夫婦死亡事故で社会問題になった「あおり運転」の恐怖を描いたアクション・サスペンス映画だ。
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今回はこの映画であおり運転の原因となった運転手間のやりとりから、I’m sorryとI apologizeのニュアンスの違いを学習しよう。
■映画『アオラレ』とは
『アオラレ』は、『グラディエーター』や『マスター・アンド・コマンダー』などで知られるラッセル・クロウが主演。些細なことを発端に常軌を逸した殺人行為へと暴走していく物語だ。2020年、ロックダウン解除直後にアメリカで公開されて話題になったことでも知られている。
クロウが演じる男(劇中で「トム・クーパー」と名乗っている)は、離婚のストレスで精神不安定になっていた。ある夜、トムは元妻と彼女のボーイフレンドをハンマーで撲殺した後、家に火を放って逃亡する。
翌朝、シングルマザーのレイチェルは、15歳の息子を車で学校に送って行く途中、信号が青になっても発進しないトラックに道を阻まれる。その直前に自分の遅刻が原因でクライアントから解雇されてイライラしていたレイチェルは、クラクションを鳴らし続けながらこのトラックを追い越した。
だが渋滞に巻き込まれて停車していた彼女の車の横に、さっきのトラックが近づいて来る。トラックのドライバーは、前夜の惨劇の返り血がついたシャツを着たままのトムだった。
彼女のクラクションの鳴らし方がマナー違反であると指摘して謝罪を求める男に、レイチェルは「何も謝ることはない」とやり返す。この一言ですでに自暴自棄になっていたトムのタガが外れて、彼はレイチェルの車に対してあおり運転をはじめる。さらに彼女のスマホを手に入れたトムは、彼女の知人や親族の命も狙うのだった。
■今回の表現
【apologize】 (自分の非を認めて)謝罪する
今回のダイアログはレイチェルがあおり運転を受ける原因となったやりとりを取り上げる。男がレイチェルに、なぜ彼女がクラクションを鳴らし続けたのか尋ねたのに対して、彼女が答えるところからだ。
Rachel: The light was green, and you weren't moving.
レイチェル:信号が青に変わったのに、あなた発進しなかったでしょ。
Man: Yeah, I admit to being a little zoned out back there. I've been kind of having a hard time lately.
男(トム):ああ、おっしゃるとおり、あのときは少しぼんやりしていた。このところ、辛いことばかりだったので。
Rachel: Yeah, well, join the club.
レイチェル:うちも同じですよ。
Man: Well, I'm sorry. I'm sorry that you are, and I'm sorry that I might've made it worse. You accept my apology?
男:それはあなたも大変なところに、さらにご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした。勘弁していただけますか。
Rachel: Sure, whatever.
レイチェル:はいはい。
Man: Perfect. If you could just do the same, we could press reset. Ma'am, I was saying, if you could just apologize...
男:では、あなたも同じようにしてくれると、リセットということになるのですが。つまり、あなたも謝ってくれれば……。
Rachel: Yeah, I heard you. I don't have anything to apologize for, sir.
レイチェル:ちゃんと聞こえていますよ。でも私は謝ることは何もしていません。
■表現解説
英語で謝る表現には、大まかに言うとI‘m sorryとI apologizeの2つの可能性がある。
Apology/apologizeは個人的な感情に関係なく自分の非を認めて謝罪する場合に使う、より正式な表現だ。相手に何の感情を抱いていなくてもとりあえず謝罪する政治家や大企業トップの謝罪もapologyである。
これに対してI‘m sorryは相手に対する親しみや同情の気持ちが込められた、a heartfelt/sincere apology(心の込められた謝罪)である。したがってI‘m sorryと言っておきながら、相手にまったく同情していなければ、それは嘘だったということになる。
さらにI‘m sorryは、自分に責任がなくても相手に同情の意を示すときに使う場合がある。親族などを亡くして悲しみにくれる人に対してI‘m sorry for your lossと言う表現がその例である。ここでI apologize for your lossと言ってしまうと、自分が死ぬ原因を作ったことになってしまうのでくれぐれも注意されたい。
上にあげた男のセリフで、I‘m sorry that you are (having a hard time)はレイチェルが辛い時間を過ごしていることに対する同情を表している。
その後のI‘ m sorry that I might've made it worseは、青信号なのに発進しなかったことでレイチェルがさらに不愉快になる原因を作ったことを謝罪している。
そう謝った上で男は、レイチェルにも彼女がクラクションを鳴らし続けたマナー違反を、形だけでいいから謝ってほしい(just apologize)と頼んでいるのである。彼女の車に同乗している息子も、その場の雰囲気を和らげるため「just apologize」と彼女に促している。
この場合、彼女が表向き非を認めて謝ればよいだけのことなので、say sorryではなくjust apologizeが使われているのである。(記事:ベルリン・リポート・記事一覧を見る)
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