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新型コロナが社会の不安を掻き立てる中で、停電の危機が俄かにクローズアップ!
日本社会を不安に陥れている新型コロナの陰で、新たに浮上してきたのは「電力不足」への懸念だ。
電力の供給は、社会生活を支えるインフラとして欠かせないため、需要の増加が続く場合には発電所の稼働率を上げて供給を増やすことが鉄則だ。だが何故か、12月から1月にかけて発電所の稼働率が低下していることが確認されている。
従来発電所の稼働状況が低下した場合には、「計画停止」や「計画外停止」と公表されていたが、昨年10月からは「出力低下」という停止区分が追加された。発電情報公開システム(HJKS)が公表している発電所の稼働状態に、その「出力低下」という停止区分表示が多用されている。
石炭火力発電や原子力発電で「出力低下」と表示される場合には、理由が簡記され1週間程度の時間的余裕がある中で公表されるケースが多いのに対して、ガス火力発電の場合は原因を明示しないで直前に公表されるケースが多いという。この謎を各方面から伝えられる情報を総合して解明すると、ガス火力発電の「出力低下」は燃料不足に起因すると言えそうだ。
ガス火力発電の燃料はLNG(液化天然ガス)だが、LNGの世界最大の供給国であるカタールでは設備メンテナンスが実施されたことにより供給が停止となった。新型コロナのパンデミックが人手不足となってパナマ運河では運河機能の低下を招き、米国産LNGを積載した船舶が渋滞していることで、日本に対するLNG供給パイプが極端に細くなっている。
LNGが気化し易くて日本の備蓄基地に長期間保存できない、という特性もマイナスに働いた。2カ月程度しか保存できないため小刻みに絶え間なく輸入することが欠かせないから、輸入の遅れが在庫の枯渇に直結してしまうのだ。
購入契約にも隘路があった。最近1年ほどは市況の低迷が続いたため、長期契約で調達する価格よりも、ごく短期のスポット契約が75%程のオフとなる圧倒的な安値だった。経済原則で電力会社がスポット契約の比重を上げていたのは当然だ。短期契約のネックは市況の急激な変動に対応できないことだ。
年末年始には市場が急速に騰勢へと向かい、従来10円/kwh前後を上下していたLNGのスポット価格は、1月6日には全国24時間の平均で80円/kwhまで上昇してしまった。LNG価格の上昇は卸電力のスポット価格にストレートに反映されるのは止むを得まい。12月初旬まで10円/kwh以下だったものが、1月初めには100円を越えて14日には221円の最高値を付けるところまで値上がりした。
反面、今冬の12月から年明けまでは寒波の到来を受けて、平年を下回る気温を記録する日が多かったから、需要が増加したことは想像に難くない。加えて、コロナ過で「不要不急の外出」を控える傾向が強まったり、在宅勤務が増加したことも需要を嵩上げした要因と見られている。
電力を売れば売るだけ赤字になるような時期に、需要のピークが重なったのだから電力会社はたまらない。
原子力発電所の稼働がままならず、「脱炭素」という理念先行で石炭火力が削減されて、太陽光発電の効率が低下する冬季間を迎えたところに、LNGの供給減少と価格の高騰が重なった。電力広域的運営推進機関も1月6日に、初めて「最大出力運転」の指示を出して発電所を最大出力で運転すると共に、余剰電力を卸電力市場に回させようとしている。
電力会社の窮状は、原子力発電への依存度が最も大きい関西電力に際立っている。昨年末から電力不足が懸念されていた関西電力では、窮余の一策で「宿敵」の大阪ガスに役員が頭を下げて、LNGの融通を要請するところまで追い詰められた。
コロナ過で「巣ごもり」中の社会で停電が発生したら、高齢者等の社会的弱者はいよいよ追い詰められてしまう。新型コロナウイルスの影響はこんなところにも出て来た。(記事:矢牧滋夫・記事一覧を見る)
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